足首・ふくらはぎの筋トレで転倒予防|理学療法士が教える3つの運動

セルフケア・リハビリ

👤 この記事を書いた人

とっち(理学療法士・回復期リハビリテーション病院 勤務18年目)
脳卒中認定理学療法士/3学会合同呼吸療法認定士
学会発表・論文投稿経験あり。地域のフレイル予防教室でも体操指導を行っています。

65歳以上の方が1年間に転倒する割合、ざっくりご存じですか?実は約2割、つまり5人に1人が年に1回は転んでいるというデータがあります。これ、初めてちゃんと数字で見たとき、正直けっこう衝撃でした。
で、もうひとつ驚いたのが、その転倒した方の多くが「段差でつまずいた」「ちょっとふらついた瞬間に」という話をされること。大きく転けたんじゃなくて、ほんのわずかな引っかかりや、一瞬のバランスの乱れで倒れてしまうんですよね。
18年間、回復期リハビリ病棟で働いてきて思うのは、転倒を防ぐうえで見落とされがちなのが「足首とふくらはぎ」だということ。膝や股関節に比べると地味な部位なんですけど、実はここが弱くなっていることが、つまずきや「とっさの一歩」の遅れに直結しているケースがすごく多いです。
この記事では、そのあたりをできるだけ分かりやすく、自宅でできる運動とあわせてお伝えしていきます。

足首・ふくらはぎの筋トレ|転倒予防にも効果的な理由とやり方

「最近、ちょっとした段差でつまずきやすくなった」「歩いているときに足元が不安定」――そんな経験はありませんか?実はその原因のひとつが、足首やふくらはぎの筋力低下にあることが少なくありません。

回復期リハビリ病棟で18年間、多くの高齢者の歩行練習に関わってきた中で、転倒リスクが高い方の多くに共通していたのが「足関節(足首)の筋力・可動性の低下」でした。今回は、足首・ふくらはぎの筋トレがなぜ転倒予防に重要なのか、根拠とともに、自宅で安全にできる方法をご紹介します。

📋 現場でのエピソード
「筋力はあるのに、なぜかつまずく。」

歩行を評価していると、ときどきそんな患者さんに出会います。

ある80代の方も、立ち上がり動作や膝を伸ばす筋力は比較的保たれていましたが、病棟内を歩いていると、何度もつま先が床に引っかかる場面がみられました。

初回評価では10m歩行に14秒を要し、歩行観察では右足のつま先が床を擦るような動きが確認されました。MMTでは前脛骨筋は3レベル程度で、足関節背屈可動域にも軽度の制限がありました。

ご本人も「最近よくカーペットに足が引っかかる」「転びそうになることが増えた」と話されていました。

そこで、足関節の背屈運動やチューブを用いた前脛骨筋トレーニング、下腿三頭筋のストレッチを自主練習として毎日続けていただきました。

約4週間後には10m歩行は14秒から11秒まで改善し、病棟スタッフからも「最近つまずかなくなったね」と声を掛けられるようになりました。ご本人も「足が前より上がる感じがする」と話され、実際につまずく場面は大きく減少しました。

もちろん、この改善は前脛骨筋のトレーニングだけによるものではなく、歩行練習や全身のリハビリを継続したことも影響していると考えられます。

この経験を通して改めて感じたのは、転倒予防では「太ももの筋力」ばかりに目を向けるのではなく、足首の働きにも注目することの大切さです。

私は歩行を評価するとき、大腿四頭筋やバランス能力だけでなく、前脛骨筋の筋力や足関節の可動域も必ず確認するようにしています。

足首は小さな関節ですが、一歩一歩の安全な歩行を支える重要な役割を担っています。

「最近つまずくことが増えた」と感じる方は、太ももだけでなく、足首やつま先を持ち上げる筋肉の働きにも目を向けてみると、新たな改善のヒントが見つかるかもしれません。

※プライバシー保護のため、症例内容は一部変更・再構成しています。

なぜ足首・ふくらはぎの筋力が転倒予防に重要なのか

歩行時、足首の筋肉(下腿三頭筋=ふくらはぎの筋肉や前脛骨筋など)は、体を前に進める力を生み出したり、不安定な地面でバランスを保つために非常に重要な働きをしています。下腿三頭筋(ふくらはぎの筋肉)は歩行時の踏み出しを支え、姿勢保持やバランスにも関わっていることが指摘されています[1]

また、足首には「足関節戦略」と呼ばれる、立位でバランスを崩したときに最初に働く重要な反応があります。立っているときに体が前後にわずかに揺れた際、まず足首の筋肉が微調整を行い、それで対応できない大きな揺れに対しては股関節の筋肉が働く、という順序でバランスが保たれています。つまり、足首の筋力や反応速度が低下すると、ふらついたときの「初期対応」が遅れ、転倒につながりやすくなるのです。

高齢期に足首・ふくらはぎが弱りやすい理由

加齢に伴う筋肉量の減少(サルコペニア)は、全身の筋肉で均等に起こるわけではありません。特に速い動きを担う筋線維(速筋・TypeII線維)は優先的に萎縮しやすいことが知られています。ふくらはぎの筋肉にもこのタイプの線維が含まれており、加齢とともに「とっさの一歩」を出す力が落ちやすくなります。

さらに、日中座っている時間が長くなると、ふくらはぎを積極的に使う機会自体が減ってしまい、筋力低下に拍車をかけてしまいます。

転倒予防に効果的な足首・ふくらはぎ筋トレ3選

ここでは、自宅で安全に取り組める基本的な運動を3つご紹介します。痛みが出る場合は中止し、無理のない範囲で行ってください。

①かかと上げ運動(カーフレイズ)

やり方

    1. 椅子や壁、テーブルなどに手を添えて立つ(または椅子に座ったまま)
    2. 足は肩幅程度に開く
    3. かかとをゆっくり持ち上げ、つま先立ちの状態を1〜2秒キープ
    4. ゆっくりとかかとを下ろす
    5. 10回×2〜3セットを目安に行う

かかと上げ運動は、ふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)を直接鍛えるトレーニングであり、下肢筋力やバランス機能の向上、さらに血流改善やむくみ軽減にもつながると考えられています[2]。座った状態からでも実施可能なため、立位が不安定な方でも取り組みやすい運動です。

②足首の上げ下げ運動(つま先上げ)

やり方

    1. 椅子に座り、足を床にしっかりつける
    2. かかとは床につけたまま、つま先をゆっくり上に持ち上げる
    3. 2秒ほどキープしてから、ゆっくり下ろす
    4. 10〜15回×2セットを目安に行う

この運動は、足首を持ち上げる筋肉(前脛骨筋)を鍛える運動です。歩行時につま先が下がりすぎず、地面や段差に引っかかりにくくなることが期待され、つまずき予防に直結する重要なトレーニングです。

③ふくらはぎ・アキレス腱のストレッチ

やり方

    1. 壁や椅子の背もたれなど、支えになるものの前に立つ
    2. 片足を後方に引き、姿勢をまっすぐにする
    3. 後ろ足のかかとを床につけたまま、ふくらはぎの伸びを感じる位置で20秒キープ
    4. 左右両方行う

ふくらはぎの筋肉である下腿三頭筋をストレッチすることで、足首の柔軟性を保つことができます。前方への転倒に注意しながら行いましょう[3]。柔軟性が保たれることで、歩行時の足首の動きがスムーズになり、踏み出しや着地の安定性向上につながると考えられます。

トレーニングを行う際の注意点

注意 理由
必ず支えを用意する バランスを崩した際の転倒リスクを減らすため
痛みが出たら中止 無理な負荷は炎症や損傷の原因になる
毎日継続する 継続的な刺激が筋力・機能維持につながる
持病がある場合は主治医に相談 基礎疾患により運動の適否が異なるため

❓ Q&A:よくある質問

Q1. かかと上げ運動は1日何回くらい行えばいいですか?

A. まずは10回×2〜3セットを目安に、無理のない範囲で毎日続けることをおすすめします。慣れてきたら回数やセット数を少しずつ増やしてもよいですが、痛みや疲労感が強く残る場合は無理せず量を調整してください。

Q2. ふくらはぎを鍛えるとむくみにも効果がありますか?

A. ふくらはぎの筋肉は「第二の心臓」とも呼ばれ、収縮することで血液を心臓に戻すポンプのような役割を担っています。かかと上げ運動などでこの筋肉を動かすことは、血流改善やむくみの軽減にもつながると考えられています[2]。ただし、むくみが急に強くなった場合や片側だけに強く出る場合は、別の原因が隠れている可能性もあるため、医療機関に相談することをおすすめします。

🗒️ 18年目のPTが正直に話す、ある失敗談

担当してから3週間ほど経った冬のことでした。70代後半の女性の患者さんで、脳梗塞後の麻痺はごく軽く、歩行もほぼ自立レベル。病棟スタッフの間でも「もうそろそろ退院できそうですね」という雰囲気が出始めていた方です。

わたしも正直、そう思っていました。膝の筋力は徒手筋力検査で左右ともに4以上、歩行速度も10メートル歩行で15秒台。数字だけ見れば、問題なさそうな印象でした。

ところが、退院前の自宅訪問の準備で、ご家族から「玄関の上がりかまちが15センチくらいあるんですが大丈夫でしょうか」と聞かれて、改めて段差昇降を評価してみたんです。そのときに初めて気づきました。つま先がほとんど上がっていない、と。

ゆっくりした歩行なら何とかなっていても、段差になった瞬間にクリアランスが足りない。足首を上に持ち上げる筋肉(前脛骨筋)の筋力が低下していたんです。評価票には記録がありましたが、「歩けているから大丈夫」という思い込みが正直あったと思います。

急いでつま先上げ運動を追加し、退院2週間前からほぼ毎日取り組んでもらいました。退院時には、段差昇降でのつま先の引っかかりが明らかに減っていました。でも心の中には、「もっと早く気づけた」という後悔が少し残りました。

足首・ふくらはぎの評価は、歩けているように見えても油断できない部位だと、そのときに改めて実感しました。「大丈夫そう」な方こそ、細かい動きをきちんと確認することが大事だと思っています。

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まとめ

  • 足首・ふくらはぎの筋力は、歩行時のバランス保持や「つまずき防止」に重要な役割を担っている
  • 加齢に伴い、ふくらはぎの筋肉は優先的に弱りやすい傾向がある
  • かかと上げ運動・つま先上げ運動・ふくらはぎストレッチは、自宅で安全に取り組める基本メニュー
  • 必ず支えを用意し、痛みが出る場合は中止する
  • 継続することが、転倒予防効果を実感するためのポイント

足首・ふくらはぎの筋トレは、特別な器具がなくても今日から始められるシンプルな運動です。「最近つまずきやすい」「歩くときに不安定さを感じる」という方は、ぜひ今回ご紹介した運動を日々の生活に取り入れてみてください。

免責事項
本記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、医学的な診断や治療を目的としたものではありません。体調に不安がある方、持病をお持ちの方、転倒リスクが高い方は、運動を始める前に医師や理学療法士などの専門職にご相談ください。本記事の内容を実践した結果生じたいかなる損害についても、当ブログは責任を負いかねます。

参考文献

  1. 国立長寿医療研究センター「転びやすくなる原因は?」https://www.ncgg.go.jp/hospital/navi/22.html
  2. Gee CM et al. “Structured exercise improves calf muscle pump function in chronic venous insufficiency: a randomized trial.” J Vasc Surg. 2003;38(5):1007-1013. doi:10.1016/S0741-5214(03)01423-5
  3. Sherrington C et al. “Exercise to prevent falls in older adults: an updated meta-analysis and best practice recommendations.” NSW Public Health Bull. 2011;22(3-4):78-83. doi:10.1071/NB10056. PMID: 21632004

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理学療法士 18年目
とっち

回復期リハビリテーション病院勤務18年目の理学療法士。
・脳卒中認定理学療法士
・3学会合同呼吸療法認定士
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