👤 この記事を書いた人
理学療法士として回復期リハビリテーション病院に18年勤務。脳卒中認定理学療法士、3学会合同呼吸療法認定士の資格を持ち、学会発表・論文投稿の経験もあります。日々、首や腰の痛みを抱える患者さんと向き合いながら、エビデンスに基づいたリハビリ知識をブログ「リハビリと身体のケアラボ」で発信しています。
ちょっと聞いてみたいんですが、「首が痛い」って気づいたとき、最初に何をしましたか?
湿布を貼って様子を見た、とりあえず枕を変えてみた、マッサージに行った……たぶん多くの方がそんな感じじゃないかと思うんですよね。実は私のリハビリ病院に来る患者さんたちも、ほとんど同じパターンで、「何年も前からなんとなく痛かったけど、まあいいかと思って」という方が本当に多いんです。
でも正直に言うと、首の痛みって放置しているあいだにじわじわ悪化するタイプのトラブルでして。気づいたら腕までしびれてた、なんて話、週に何件かは聞きます。
この記事では、なぜ首の痛みが起こるのか、そして今日からできるセルフケアを、18年間リハビリの現場で見てきた経験をもとにお伝えします。難しい話は抜きにして、できるだけ現場のリアルを交えながら書きますね。
首の痛みが続く方へ|頚椎症の原因とセルフケアを理学療法士が解説
「最近、首を回すと痛い」「朝起きると首がこわばっている」「腕までしびれるような感じがする」——そんな症状が長く続いている方はいませんか?こうした症状の背景には、頚椎症(けいついしょう)が関係していることがあります。年齢を重ねるとともに増えるこの症状ですが、正しい知識とセルフケアで悪化を防ぎ、痛みと上手に付き合っていくことができます。本記事では、回復期リハビリ病院で18年間、多くの首・肩のトラブルを抱える患者さんを担当してきた理学療法士の視点から、頚椎症の原因とセルフケアについて詳しく解説します。
⚠️ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療を行うものではありません。症状が続く場合や強い痛み・しびれがある場合は、必ず医療機関を受診してください。
頚椎症とは?まず知っておきたい基礎知識

頚椎症とは、首の骨である頚椎(けいつい)とその間にある椎間板(クッションの役割をする組織)が、加齢とともに変形・変性することで起こる状態を指します。医学的には「変形性頚椎症」と呼ばれることもあります。
頚椎は7つの骨が積み重なって構成されており、その間には椎間板というクッションが存在します。年齢を重ねると、この椎間板の水分が減って弾力性が低下し、骨同士がこすれやすくなったり、骨の縁に骨棘(こつきょく)と呼ばれる小さな突起ができたりします。これが神経を圧迫すると、首の痛みだけでなく、肩や腕、手指にしびれや痛みが広がることがあります。
📊 頚椎症の主なタイプ
このうち、神経根症や脊髄症は神経そのものへの影響が大きくなるタイプで、症状が進行すると日常生活に支障が出ることもあります。両手の細かい作業(ボタンをかける、箸を使うなど)が難しくなった、歩行時に足がもつれるような感覚があるといった場合は、早めに整形外科やリハビリ科への受診をおすすめします。
💬 18年目のPTが正直に話す、ちょっとした失敗談
数年前の冬のことです。60代後半の女性の患者さんで、長年の首の痛みと右腕のしびれを抱えていた方のリハビリを担当しました。X線でもMRIでも変形性頚椎症の所見はしっかりあって、担当医からも「保存療法でいきましょう」という方針。私はいつも通り、あご引き運動と肩甲骨エクササイズのホームプログラムを指導して、2週間後にまた来てもらうことにしました。
2週間後、患者さんが顔をしかめながら来院されました。「先生に教えてもらったやつ、毎日やってるんやけど……なんか余計に痛くなった気がして」と。
冷や汗が出ました。話を聞くと、「毎日やった方がいいと思って」と、1日3セットのところを朝昼晩と念入りにやり続けていたとのこと。しかも、「首も動かした方がいいかな」と思って、よかれと思って首をぐるっと大きく回す運動も自己流で加えていたと言うんです。
説明が足りていませんでした。私は「量とやり方の注意点」をちゃんと伝えていなかった。「首の回旋は避けてください」とひとこと言えばよかったのに、それを省いていた。18年やってきて、「伝えたつもり」と「相手に伝わった」の間には、まだまだギャップがあると痛感した出来事でした。
それ以来、ホームプログラムを渡すときは必ず「やりすぎない」「やってはいけない動き」を具体的に紙に書いて渡すようにしています。自己流で頑張りすぎる方ほど、症状が悪化しやすい——これは頚椎症のセルフケアで特に気をつけてほしいことです。
なぜ頚椎症は起こるのか?主な原因
① 加齢による椎間板・関節の変化
最も大きな要因は加齢です。椎間板の水分量は年齢とともに減少し、クッション機能が低下します。これにより椎間板の高さが減り、頚椎にかかる負担が増加します。多くの方が40代以降からこうした変化を経験し始めますが、症状として自覚するかどうかは個人差が大きいのが特徴です。
② 姿勢の影響(スマホ首・ストレートネック)
近年特に増えているのが、長時間のスマートフォンやパソコン作業による姿勢の崩れです。本来、頚椎は緩やかなカーブ(前弯)を描いていますが、画面を見続けることで首が前に突き出た姿勢が続くと、このカーブが失われ、いわゆる「ストレートネック」と呼ばれる状態になります。頭部の重さは体重の約10%、約4〜6kgほどあるとされており、首が前方に傾くほど頚椎にかかる負担は大きくなります。この負担の積み重ねが、頚椎症の進行を早める一因になると考えられています。
③ 筋力低下と筋緊張のアンバランス
首を支える深層の筋肉(頚部深層屈筋群など)の機能が低下すると、表層の筋肉(僧帽筋など)が代わりに首を支えようと過剰に緊張します。これが慢性的な首・肩のこりや痛みにつながり、頚椎周辺の組織にさらに負担をかける悪循環を生みます。
④ 過去の外傷や繰り返しの負荷
むち打ち症などの過去の外傷、あるいは長年のスポーツや作業による頚椎への繰り返しの負荷も、椎間板や関節の変性を進める要因となることがあります。
💬 臨床現場でのエピソード
骨折で入院した患者さんを評価していると、「実は気になっていた症状」が見つかることがあります。
以前担当した70代の男性も、その一人でした。
整形外科疾患の術後で回復期リハビリ病棟へ転院され、歩行練習を進めていたある日、
「そういえば、何年も前から首もしびれるんですよ。」
と何気なく話してくださいました。
詳しく伺うと、会社員時代は長時間パソコンに向かう仕事が続き、整形外科では以前から頚椎症と言われていたものの、「年齢のせいだから」と特に治療は受けずに過ごしてきたそうです。
評価では、頚椎を後ろへ反らすと右上肢のしびれが誘発され、首の回旋も左右ともに制限されていました。
そこで歩行練習と並行して、姿勢改善エクササイズや胸椎の可動性練習、長時間座るときの姿勢や休憩の取り方についても一緒に確認しました。
約1か月後には、
「パソコンを使った後のしびれが前ほど気にならなくなりました。」
と笑顔で話してくださいました。
もちろん、頚椎症の症状や経過には個人差があり、すべての方が運動療法だけで改善するわけではありません。
それでも、この患者さんを通して改めて感じたことがあります。
患者さんが困っていることは、カルテにすべて書かれているわけではないということです。
入院のきっかけになった病気とは別に、何年も我慢してきた痛みやしびれを抱えている方は少なくありません。
だから私は評価のとき、
「他に困っていることはありませんか?」
と必ずお聞きするようにしています。
その何気ない一言が、患者さんの生活をより良くするヒントになることを、18年間の臨床で何度も経験してきました。
※プライバシー保護のため、症例内容は一部変更・再構成しています。
理学療法士が教える頚椎症のセルフケア
頚椎症そのものを完全に元に戻すことは難しいものの、症状の緩和や進行のペースを緩やかにするためのセルフケアは数多くあります。包括的なレビューでは、筋力トレーニングや姿勢調整、機能的なトレーニングを取り入れた理学療法的アプローチが、頚部の機能改善や症状の軽減に役立つことが報告されています[1]。以下では、自宅で取り組みやすい代表的な方法を紹介します。
① 姿勢を整える「あご引き運動」
🔸 やり方
-
- 椅子に座り、背筋を軽く伸ばす
- 顔を正面に向けたまま、あごを後ろに引く(二重あごを作るイメージ)
- 後頭部が後方にスライドする感覚を意識する
- 5秒間キープし、ゆっくり戻す
- これを10回×3セット、1日数回行う

※首の後ろの深層筋を働かせ、ストレートネック姿勢の改善をサポートします。
② 首・肩周りのストレッチ
🔸 やり方
- 頭をゆっくり横に傾け、反対側の首筋が伸びる感覚を15〜20秒キープ
- 左右それぞれ2〜3回繰り返す
- 痛みを感じる範囲までは行わず、心地よい伸び感の範囲で行う

※特に注意すべき点として、首を強く後ろに反らす動きや、勢いをつけて首をぐるぐる回す運動は、頚椎症がある方では症状を悪化させる可能性があるため避けましょう[2]。
③ 肩甲骨を動かすエクササイズ
🔸 やり方
-
- 両肩をすくめるように真上に持ち上げる
- そのまま後ろに大きく回しながら、肩甲骨を寄せるように下げる
- これを10回程度、ゆっくりと繰り返す

※肩甲骨周りの筋肉を動かすことで、首にかかる負担を分散させる効果が期待できます。
④ 日常生活での工夫
| シーン | 工夫のポイント |
|---|---|
| スマホ操作時 | 画面を目の高さまで持ち上げ、うつむき姿勢を減らす |
| デスクワーク | モニターの高さを目線と同じかやや下に調整する |
| 就寝時 | 高すぎる枕は避け、首のカーブに合った高さのものを選ぶ |
| 長時間作業時 | 30分〜1時間に1回、軽く首・肩を動かす休憩を入れる |
Q&A|よくある質問
Q1. 首を回す「ボキボキ」という音は大丈夫ですか?
A. 関節を動かした際に音が鳴ること自体は、必ずしも問題があるわけではありません。ただし、頚椎症がある方が自分で無理に首をひねって音を鳴らす行為(セルフマニピュレーション)は、関節や神経に予期せぬ負担をかける可能性があるため、習慣的に行うことはおすすめできません。気になる場合は医療機関で評価を受けることをおすすめします。
Q2. しびれが出てきたら、どのタイミングで受診すべきですか?
A. 腕や手指にしびれが続く、力が入りにくい、両手の細かい作業がしづらくなった、歩行時にふらつきを感じるといった症状がある場合は、できるだけ早めに整形外科やリハビリテーション科を受診してください。神経根症や脊髄症のタイプでは、早期の評価と対応が重要になることがあります。
まとめ
- 頚椎症は加齢に伴う頚椎・椎間板の変化が主な原因で、姿勢の影響も大きい
- スマホやパソコン作業による「うつむき姿勢」が首への負担を増やす
- あご引き運動やストレッチ、肩甲骨エクササイズで負担軽減が期待できる
- 首を強く反らす・勢いよく回す動作は避ける
- しびれや手の動かしにくさが出てきたら、早めに医療機関へ相談する
首の痛みや不快感は、つい「年のせい」「疲れのせい」と見過ごされがちですが、日々の小さなセルフケアの積み重ねが、将来の生活の質を大きく左右します。今日からできる範囲で、姿勢を意識してみてはいかがでしょうか。
📌 本記事で紹介した内容は一般的な情報提供であり、個々の症状に対する診断・治療の代替となるものではありません。症状が続く場合や悪化する場合は、必ず医師・専門の医療機関にご相談ください。
参考文献
[1] Ling J, et al. Postoperative Rehabilitation to Improve Outcomes After Cervical Spine Fusion for Degenerative Cervical Spondylosis: A Systematic Review. Cureus. 2023;15(5):e39081. doi: 10.7759/cureus.39081
[2] 日本整形外科学会/日本脊椎脊髄病学会. 頚椎症性脊髄症診療ガイドライン 2020(改訂第3版). 南江堂; 2020. Mindsガイドラインライブラリ掲載(2021年3月)
https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00606/
[3] Huo L, et al. Management of Cervical Spondylotic Radiculopathy: A Systematic Review. Global Spine J. 2022;12(6):1234–1244. doi: 10.1177/21925682221075290
[4] Gallego Izquierdo T, et al. Is Cervical Stabilization Exercise Immediately Effective in Patients with Chronic Neck Pain and Upper Cervical Spine Dysfunction? Randomized Controlled Trial. Int J Environ Res Public Health. 2022;19(10):5966. doi: 10.3390/ijerph19105966
あわせて読みたい






コメント