水分補給を怠ると筋力・脳・血管まで危ない|理学療法士が解説する脱水の本当のリスク

セルフケア・リハビリ

✍️ この記事を書いた人

とっち|理学療法士

回復期リハビリテーション病院 勤務18年目 / 🧠 脳卒中認定理学療法士 / 🫁 3学会合同呼吸療法認定士
学会発表5回・論文投稿2回の経験を持つ。回復期病棟で多くの患者さんの水分管理・栄養管理に関わりながら、脱水とリハビリの関係を日々実感している。
ブログ:リハビリと身体のケアラボ(tocchi-fm-1111.com)

毎年7月から8月にかけて、病棟のスタッフ間でこんな話題が出るようになります。「最近、リハビリ中にふらつく患者さんが増えてきたね」って。

正直、最初のうちは「暑いから体力が落ちてるのかな」くらいに思っていたんですよね。でも経験を重ねるうちに気づいてきました。原因のかなりの部分が、水分不足なんです。

「のどは別に渇いてないんだけど」と言いながら、実は午前中にほとんど水を飲んでいない——そういう患者さんが、夏に限らずけっこういらっしゃいます。冬も乾燥や暖房で、気づかないうちに脱水が進んでいることがあって。

水分補給って地味に見えるんですが、これがリハビリの成果にも、転倒リスクにも、脳梗塞の再発予防にも関わってくる話でして。今日は18年間の現場経験を踏まえながら、脱水が身体に与える影響を正直にお伝えしていきます。

「最近、なんだか疲れやすい」「頭がぼーっとする」「リハビリ中にふらつく」——こんな症状、心当たりはありませんか?

その原因のひとつとして見落とされがちなのが、「かくれ脱水」です。口の渇きがなくても、体の中では水分が不足しているケースは決して珍しくありません。

水は体重の約60%を占め、血液の循環・体温調節・栄養素の運搬・老廃物の排泄など、生命活動のあらゆる場面に関わっています。わずかな水分不足でも筋力・認知機能・心臓への負担に影響を及ぼすことが、現在の研究で明らかになっています。

この記事では、回復期リハ病院で18年間勤務し、多くの患者さんの水分管理と向き合ってきた理学療法士の視点から、脱水が身体にもたらす本当のリスクと、正しい水分補給の実践法をわかりやすく解説します。特にリハビリ中の方・高齢者・ご家族の方にとって、明日から役立つ内容をお届けします。

📋 この記事の目次

  1. 体の中の水分——なぜそんなに大切なのか?
  2. 脱水はどのくらいの不足で起こるのか——段階別の症状
  3. 脱水が身体に及ぼす6つの深刻な影響
  4. 高齢者が特に危ない理由——なぜ「かくれ脱水」に陥りやすいのか
  5. 現場で見た「水分不足で動けなくなった患者さん」のリアル
  6. 1日に必要な水分量——厚生労働省の目安と計算の仕方
  7. 飲み物の選び方——水・お茶・経口補水液・スポーツドリンクの使い分け
  8. 水分補給の実践ポイント——タイミングと飲み方のコツ
  9. よくある質問(Q&A)
  10. まとめ

1. 体の中の水分——なぜそんなに大切なのか?

人の体の約60%(高齢者では約50〜55%)は水分で構成されています。体液はその存在場所によって「細胞内液(約40%)」と「細胞外液(約20%:血漿・組織液など)」に分けられます。この水分が果たす役割は非常に多岐にわたります。

🩸 栄養素・酸素の運搬

血液の約55%は血漿(けっしょう)という液体成分で構成されており、酸素・ブドウ糖・アミノ酸などの栄養素を全身の細胞へ届けます。水分が不足すると血液が濃縮(ドロドロ化)し、循環が悪化します。

🌡️ 体温調節

発汗によって体熱を発散し、体温を一定に保ちます(恒温維持)。水分が不足すると発汗量が減少し、体温が上昇して熱中症のリスクが高まります。

🚿 老廃物の排泄

尿・便・汗を通じて代謝によって生じた老廃物(尿素・クレアチニン・乳酸など)を体外に排出します。水分不足は腎臓への負担を増やし、尿路結石や慢性腎臓病のリスクとも関連します。

⚡ 電解質バランスの維持

ナトリウム・カリウム・マグネシウムなどのミネラル(電解質)は水分に溶けて体液中に存在します。これらは筋肉の収縮・神経の伝達・心臓の拍動に欠かせません。水分と電解質のバランスが崩れると、筋けいれん・不整脈・意識障害が起こる可能性があります。

🦴 関節・軟骨の保護

関節液(滑液)や椎間板の核は主に水分で構成されています。水分不足は関節のクッション性を低下させ、変形性関節症の進行や腰痛・膝痛の悪化につながるとも言われています。

2. 脱水はどのくらいの不足で起こるのか——段階別の症状

脱水症は、体内の水分が正常値より減少した状態のことです。失われる水分量と電解質(特にナトリウム)の割合によって「低張性脱水(ナトリウムの不足が多い)」「等張性脱水(水分・電解質ともに不足)」「高張性脱水(水分の不足が多い)」に分類されます。一般的に高齢者は高張性脱水(水分だけが不足するタイプ)になりやすいことが知られています。

⚠️ 重要な知識:体内水分量の5%が失われると脱水症状・熱中症症状が現れ始め、20%が失われると生命の危険に至るとされています[1]

脱水の重症度 体重比での水分喪失量 主な症状・所見
軽度(かくれ脱水含む) 1〜3% 口の渇き、尿が少し濃くなる、集中力低下、軽い疲労感。この段階では口渇を感じないことも多い
中等度 3〜5% 頭痛、めまい、ふらつき、筋力・パフォーマンス低下、皮膚の弾力低下、尿量の著明な減少、倦怠感の増強
高度 5〜8%以上 意識の混濁・もうろう状態、血圧低下(ショック)、心拍数増加、痙攣(けいれん)、高体温、腎不全のリスク。救急対応が必要

※体重60kgの人では、1%の水分喪失=約600mlに相当します。夏の屋外での活動や入浴後など、短時間でもこの量の喪失が生じる可能性があります。

3. 脱水が身体に及ぼす6つの深刻な影響

① 筋力低下・パフォーマンスの低下

筋肉の約75%は水分で構成されています。水分が不足すると筋肉の収縮効率が落ち、筋力・持久力が低下することが知られています[2]。特に、リハビリ中・運動中の方にとって、脱水はパフォーマンスに直結します。

また、脱水によって立位バランスの維持が困難になることも報告されています。脱水が進むと血液量が減少し血圧が下がるため、立ち上がった際に起立性低血圧(立ちくらみ)が起こりやすくなり、転倒リスクが高まります[3]。高齢者や脳卒中後の患者さんで特に問題となりやすい現象です。

② 認知機能の低下・集中力の低下

脳は体重の約2%しかありませんが、体内水分の約75%が関与しているとも言われる水分感受性の高い臓器です。わずかな水分不足でも集中力・短期記憶・計算能力・反応速度が低下することが研究で示されています。

慢性的な水分不足が続けば、認知機能の低下・意欲の低下・倦怠感の増強など、日常生活全体に影響が出ることが指摘されています[4]。またイランで行われた3,327人を対象にした研究では、1日2杯未満の水しか飲まないグループは、5杯以上飲むグループに比べて不安症やうつ病のリスクが約2倍高くなることが示されています(2018年)[4]

③ 血液の粘度上昇——血栓・脳梗塞・心筋梗塞のリスク

脱水によって血液中の水分が減少すると、血液成分が濃縮されて血液粘稠度(ねばり)が上昇します。同時に、血栓の元となるフィブリノゲンの濃度が上昇し、血小板の凝集も促進されるため、「ドロドロ血液」による血栓が形成されやすくなります[5]

国立循環器病研究センターは「夏には就寝中に脱水が起こりやすく、夜間に脳梗塞が発症しやすくなる」と注意を促しています[6]。脳卒中後のリハビリを受けている方は、水分管理が再発予防の観点からも非常に重要です。

🚨 特に注意!:入浴後・起床直後・飲酒後・長時間の移動中は脱水が進みやすいタイミングです。これらの場面の前後には意識的に水分を補給してください。

④ 腎臓への負担増加——尿路結石・腎機能低下

腎臓は血液をろ過して老廃物を尿として排出する臓器です。水分が不足すると尿が濃縮され、尿路結石(シュウ酸カルシウム・尿酸結石など)が形成されやすくなります。また長期的な慢性脱水状態は腎機能低下・慢性腎臓病(CKD)のリスク因子としても注目されています。

尿の色が濃い黄色・オレンジがかった色の場合は脱水サインの一つです。理想的な尿の色は「薄い麦わら色(薄い黄色)」で、これが水分摂取の簡単なセルフチェック方法になります。

⑤ 便秘・消化機能の低下

腸内での便の移動には水分が必要です。脱水状態では大腸が便から水分を過剰に吸収するため、便が硬くなり便秘になりやすくなります。高齢者・入院中の方は腸の蠕動(ぜんどう)運動がもともと低下しやすく、水分不足がさらに便秘を悪化させます。

リハビリの現場でも、便秘は「腹部不快感による活動意欲の低下」「いきみによる血圧上昇」「食欲低下」など、回復の妨げになる要因として問題になります。水分補給は便秘改善においても重要なアプローチのひとつです[3]

⑥ 皮膚の乾燥・褥瘡(床ずれ)リスクの増加

水分不足は皮膚の弾力(ターゴール)を低下させ、乾燥・かゆみ・荒れを引き起こします。特に入院中・寝たきりの方では、皮膚の水分不足が褥瘡(じょくそう:床ずれ)の発生リスクを高めることが知られています。皮膚の状態は全身の栄養・水分状態のバロメーターとも言えます。

🏥 現場エピソード②(とっちの実体験)

8月の下旬、病棟のエアコンが一部フロアで故障したことがありました。修理が完了するまでの数日間、廊下の温度は朝から30度を超え、「まあ短期間だから大丈夫だろう」と、正直なところ軽く見ていたんです。

その3日目のリハビリ時間のことです。担当していた80代の男性患者さん——脳卒中後のリハビリ中で、普段は冗談を交えながら歩行練習をこなしてくださる方でした——が、その日だけはひと言も口を開かず、歩行器を持つ手に妙な力みがある。ふらつきも普段より明らかに大きい。「なんかおかしいな」と直感して、すぐにその場で椅子に座ってもらいました。

バイタルを測ると脈拍が92回/分と普段より15ほど高く、口の中もカラカラ。飲水量を確認しようと看護記録を見ると、その日の午前中で記録されていた水分摂取量がわずか80mlだったんです。朝食のお茶が少し残っていて、それ以降は何も飲んでいなかった。

理由を聞いたら、「暑くて気分が悪いから、逆に飲む気がしなかった」とのことでした。

のどが渇かない=大丈夫ではない、というのは頭ではわかっているつもりでした。でもそのとき改めて思ったのは、「気分が悪い」「だるい」が水分不足のサインだと患者さん自身が気づけていない、ということ。こちらも定時の声かけをしていれば気づけた話で、正直、反省しました。脱水って、夏の屋外だけじゃなく、病棟の中でも静かに進んでいくんです。

4. 高齢者が特に危ない理由——なぜ「かくれ脱水」に陥りやすいのか

高齢者が脱水になりやすい理由には、加齢に伴う複数の生理的変化と環境要因が絡み合っています。以下に整理します。

要因 詳細
体内水分量の減少 成人の体の約60%が水分なのに対し、高齢者は約50〜55%に低下。筋肉量の減少(サルコペニア)が主な原因で、もともと「貯水量」が少ない状態
口渇感の鈍化 加齢により視床下部の口渇中枢の感受性が低下し、脱水状態になっても「喉が渇いた」と感じにくくなる。自発的な飲水量が減少しやすい
腎臓の水分保持能力低下 腎臓の尿濃縮能力が低下するため、水分が少なくても尿として排泄されやすく、必要な水分まで失ってしまう
飲水を控える行動 頻尿や尿失禁を恐れて意図的に水分摂取を減らす高齢者は多い。夜間のトイレが増えるのが嫌で、就寝前の水分を控えるケースも
嚥下機能の低下 むせやすくなることで水分摂取そのものが困難になる。とろみ剤の使用などで対応できることもあるが、自発的な水分摂取が減りがち
薬の影響 利尿剤(高血圧・心不全の治療薬)・緩下剤・一部の精神科薬は水分・電解質を喪失させる。75歳以上の約8割が2疾患以上を抱え、多剤併用のケースも多い[7]

5. 現場で見た「水分不足で動けなくなった患者さん」のリアル

🏥 現場エピソード(とっちの実体験)

「今日は何となく身体が動かないんです。」

回復期病棟で担当していた70代女性の患者さんが、ある夏の午後のリハビリで最初に話された言葉です。

脳梗塞後のリハビリを順調に進めており、毎日意欲的に歩行練習へ取り組まれていました。しかし、その日は歩き始めてすぐに「足が重い」「ぼーっとする」と訴えられ、いつもより歩行のふらつきも目立っていました。

最初は「疲れが残っているのかな」とも思いましたが、表情や歩き方がいつもと違うことが気になり、リハビリを中断してバイタルサインを確認しました。

すると脈拍は普段より速く、収縮期血圧もやや低下していました。

さらに看護記録を確認すると、その日の午前中の水分摂取量はわずか150mLほど。

ご本人に伺うと、

「トイレが近くなるのが嫌で、水をあまり飲まないようにしていました。」

と話してくださいました。

喉の渇きは感じていないとのことでしたが、脱水を疑い、その日のリハビリは中止して経口補水液と水分補給を優先しました。

約30分後には表情も落ち着き、「さっきより楽です」と笑顔が戻りました。

その後、ご本人は少し照れながら、

「夜中にトイレへ行くのが大変だから、昼間も我慢していたんです。」

と本音を話してくださいました。

この症例を通して改めて感じたのは、高齢者の脱水は「喉が渇いた」と訴えて始まるとは限らないということです。

リハビリでは、歩けるかどうかだけに目が向きがちですが、「今日はいつもと何か違う」という小さな変化に気付くことも同じくらい大切です。

私はこの経験以来、特に暑い時期には運動前の水分摂取や排尿への不安についても必ず確認するようになりました。

リハビリは運動を頑張ることだけではありません。

安全に運動を続けられる身体の状態を整えることも、回復への大切な一歩だと考えています。

6. 1日に必要な水分量——厚生労働省の目安と計算の仕方

厚生労働省の熱中症予防ガイドラインによると、成人が1日に必要とする水分量は約2.0〜2.5Lとされています。ただし、これは「飲み水だけで2.5L」という意味ではなく、内訳は以下の通りです[8]

💧 1日の水分の摂り方(目安)

  • 食事からの水分:約1,000ml(ご飯・野菜・汁物などに含まれる水分)
  • 代謝水(体内で産生される水):約300ml
  • 飲み水からの補給約1,200〜1,500ml(コップ6〜8杯)が目安

※発汗量が増える夏・運動時・入浴後・発熱時はさらに追加が必要。運動中は15〜20分ごとに150〜250mlの補給が推奨されています。

体重から計算する方法

より個人に合わせた目安として、「体重(kg)× 30〜35ml」を飲み水の1日量として計算する方法があります。

体重 飲み水の目安量(×30ml) 飲み水の目安量(×35ml)
45kg 1,350ml 1,575ml
55kg 1,650ml 1,925ml
65kg 1,950ml 2,275ml
75kg 2,250ml 2,625ml

※心不全・腎臓病・透析中の方は水分制限が必要な場合があります。必ず主治医の指示に従ってください。

7. 飲み物の選び方——水・お茶・経口補水液・スポーツドリンクの使い分け

「何を飲むか」によって水分補給の効率は大きく変わります。シーンに合わせた飲み物の使い分けを知っておきましょう。

💧 水・麦茶——日常の基本はこれ

日常的な水分補給の主役は水・麦茶です。カロリーゼロ・糖分なし・カフェインなしで、腎臓への負担も少ない安全な選択肢です。麦茶はミネラル(カリウム・リン)を含み、夏の水分補給に適しています。食事中に汁物やお茶を合わせると自然と水分摂取量を増やせます。

☕ コーヒー・緑茶——カフェインに注意

カフェインには軽い利尿作用があるため、大量に飲むと水分補給の効率が落ちます。コーヒー・緑茶・紅茶などを「水分補給の主力」とするのは避け、あくまで嗜好品として楽しみつつ、水や麦茶を別に摂るようにしましょう。1日3〜4杯程度なら過剰な心配は不要とも言われますが、就寝前のカフェイン摂取は睡眠の質にも影響します(→ 関連記事 #91 睡眠とリハビリ回復 も参照ください)。

🏃 スポーツドリンク(ポカリスエット・アクエリアスなど)——運動時・軽度脱水時に

適度な糖分とナトリウムを含み、水だけよりも素早く水分を吸収できます。運動中・発汗が多い時・軽い脱水予防に向いています。ただし、糖分が多いため糖尿病の方や日常の水分補給には適さない場合があります。また塩分(ナトリウム)量は経口補水液の約半分以下です[9]

🩺 経口補水液(OS-1・アクアソリタなど)——脱水症状が出てから使う「飲む点滴」

経口補水液はナトリウムをはじめとする電解質とブドウ糖を最適比率(WHO推奨のORS処方に近い)で配合しており、腸からの吸収速度が非常に速いのが特徴です。医療・介護現場でも広く使用されています。ただし塩分・カリウムが多いため、腎臓病・心不全・高血圧などで制限のある方は必ず医師に相談してください。「脱水を防ぐために常時飲む」ものではなく、脱水症状が出たときや大量発汗後の回復に使うものです[9]

🍺 アルコールは水分補給にならない!:アルコールには強い利尿作用があり、飲んだ量以上の水分が尿として排出されます。お酒を飲む際は必ず同量以上の水を一緒に飲みましょう。就寝前の大量飲酒は夜間の脱水・脳梗塞リスクを高めます。

8. 水分補給の実践ポイント——タイミングと飲み方のコツ

「1日1.5L飲みましょう」と言われても、一度に大量に飲むのは胃に負担をかけますし、吸収効率も下がります。少量をこまめに、タイミングを決めて飲むことが現場でも実際に患者さんに指導しているポイントです。

⏰ 水分補給の「8つのタイミング」

  1. 起床直後:睡眠中に呼吸・発汗で約500mlの水分が失われます。コップ1杯(200ml)から始めましょう
  2. 朝食・昼食・夕食時:食事と一緒に汁物・お茶などで自然と補給
  3. リハビリ・運動の前後:運動30分前に250〜500ml、運動後も忘れずに
  4. 入浴前後:入浴中は200〜300mlの汗をかきます。前後にコップ1杯ずつ
  5. 就寝前:夜間の脱水を防ぐために寝る前にコップ1杯。夜中のトイレが心配な方はトイレのタイミングで飲むでもOK
  6. 外出前・外出後:特に夏場は外出前から意識的に補給を
  7. 冷暖房の効いた室内にいる時:エアコンで乾燥した空気は呼気からの水分喪失を増やします
  8. 「喉が渇く前」に定期的に:高齢者は口渇感が鈍い。1〜2時間ごとを目安にタイマーや声かけを活用しましょう

🔍 脱水のセルフチェック方法

尿の色チェック

薄い麦わら色 → 適切 / 濃い黄色・オレンジ色 → 脱水の可能性あり / ほぼ透明 → 飲み過ぎの可能性

皮膚ターゴールテスト(皮膚の弾力チェック)

手の甲の皮膚を2秒つまんで離し、すぐに戻らず「跡が残る」場合は脱水のサインの可能性あり(ただし高齢者は脱水なくてもたるみやすいため参考程度に)

口・舌の乾燥確認

口の中が乾いて唾液(だえき)が減っている、舌が乾燥している場合は脱水のサインのひとつ

体重の変化

朝と夜の体重差が500g〜1kg以上ある場合、その差は主に水分の摂取と排泄の差です。毎朝同じ条件(起床後、排尿後)で測定すると変化が把握しやすい

9. よくある質問(Q&A)

Q1. 「水を飲みすぎると腎臓や心臓に悪い」と聞きましたが、本当ですか?

健康な腎機能がある一般の方が日常的に水を飲みすぎて問題になることは稀です。ただし、腎臓病(特に慢性腎臓病ステージ3以上)・心不全・肝硬変・透析中の方は、水分貯留によるむくみ・血圧上昇・電解質異常のリスクがあり、水分制限が必要な場合があります。これらの疾患をお持ちの方は必ず主治医の指示量を守ってください。「何も病気がない方」であれば、1日1.5〜2Lの飲み水は適切な範囲です。

Q2. 「冬は汗をかかないから水分補給は夏ほど気にしなくていい」は正しいですか?

これは誤解です。冬も呼気からの水分喪失・暖房による室内乾燥・感染症による発熱・発汗などで脱水は起こりえます。冬は「寒いから水分を欲しいと感じにくい」という心理的要因も加わり、水分摂取量が知らず知らず減少します。特に高齢者は冬場の脱水にも注意が必要です。年間を通じて「1日1.5L程度の飲み水を確保する」意識が大切です。

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10. まとめ

📝 この記事のまとめ

  • 体の約60%を占める水分は、栄養運搬・体温調節・老廃物排泄・電解質バランスなど生命維持の要
  • 体重の1〜3%の水分喪失でも「かくれ脱水」として筋力・認知機能・バランスに影響が出る
  • 脱水は筋力低下・起立性低血圧・転倒リスク増加・血栓(脳梗塞・心筋梗塞)・腎機能低下・便秘・褥瘡の原因にもなる
  • 高齢者は口渇感が鈍い・体内水分量が少ない・薬の影響など、脱水に陥りやすい複数の要因がある
  • 1日の飲み水の目安は約1,200〜1,500ml(コップ6〜8杯)。体重×30〜35mlで計算する方法も有効
  • 飲み物は日常は水・麦茶を基本に、運動時はスポーツドリンク、脱水症状時は経口補水液を使い分ける
  • 「喉が渇く前に、こまめに、タイミングを決めて飲む」が高齢者の水分補給の鉄則
  • リハビリ効果を最大化するためにも、水分管理は栄養管理(#86)と並んで非常に重要

「水を飲む」というシンプルな行為が、リハビリの成果・転倒予防・認知機能維持・生活の質(QOL)に大きく影響することをお伝えしてきました。「喉が渇いた」と思ってからでは遅い——特に高齢の方やリハビリ中の方は、今日から「時間を決めて飲む」習慣を始めてみてください。

このシリーズでは#86「リハビリ効果を高める食事(栄養の基本)」と合わせて読むと、より包括的に回復のための生活習慣が整います。次回は「#91 睡眠とリハビリ回復|質の良い睡眠が筋肉を作る」をお届けします。

📚 参考文献

  1. 環境省「熱中症環境保健マニュアル2022」(2022年3月改訂)https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_full.pdf
  2. Gann JJ, et al. “Effects of Hypohydration on Muscular Strength, Endurance, and Power in Women.” J Strength Cond Res. 2021;35(Suppl 1):S102-S106. doi: 10.1519/JSC.0000000000003298. PMID: 31977837
  3. Bahouth MN, Gottesman RF, Szanton SL. “Primary ‘dehydration’ and acute stroke: a systematic research review.” J Neurol. 2018;265(10):2167-2181. doi: 10.1007/s00415-018-8799-6
  4. Haghighatdoost F, et al. “Drinking plain water is associated with decreased risk of depression and anxiety in adults: Results from a large cross-sectional study.” World J Psychiatry. 2018;8(3):88-96. doi: 10.5498/wjp.v8.i3.88. PMID: 30254979
  5. Okamura T, et al. “Can high fluid intake prevent cerebral and myocardial infarction?” Nihon Ronen Igakkai Zasshi. 2005;42(5):557-563. doi: 10.3143/geriatrics.42.557(J-STAGE: https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics1964/42/5/42_5_557/_article/-char/ja/)
  6. 国立循環器病研究センター「脱水や夏かぜにご注意ください〈夏の脳梗塞を防ぐために〉」プレスリリース https://www.ncvc.go.jp/pr/release/002619/
  7. 東京都健康長寿医療センター「高齢者の多疾患保有に関する実態調査」(ピジョンタヒラ引用, 2025 https://www.pigeontahira.co.jp/column/)
  8. 厚生労働省「熱中症予防ガイドライン」水分摂取の基準値(日本成人病予防協会掲載版 https://www.japa.org/tips/ , 2025)/ 環境省熱中症予防情報サイト https://www.wbgt.env.go.jp/heatillness_manual.php
  9. 倉敷平成病院 栄養科通信「経口補水液とスポーツ飲料の違い」http://www.heisei.or.jp/blog/?p=8779 / 大塚製薬工場「OS-1製品情報」https://www.otsukakj.jp/med_nutrition/os1/
  10. 日本救急医学会「熱中症診療ガイドライン2024」https://www.jaam.jp/info/2024/files/20240725_2024.pdf

【免責事項】本記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、特定の疾患の診断・治療を目的とするものではありません。腎臓病・心不全・透析中の方など水分摂取量に制限のある方は、必ず主治医の指示に従ってください。脱水症状が疑われる場合は自己判断せず、速やかに医療機関を受診してください。本記事の情報を実践される際は自己責任のもとご判断いただき、体調に異変を感じた場合は速やかに医療機関を受診してください。

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理学療法士 18年目
とっち

回復期リハビリテーション病院勤務18年目の理学療法士。
・脳卒中認定理学療法士
・3学会合同呼吸療法認定士
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