この記事を書いた人:とっち
回復期リハビリテーション病院に勤務する理学療法士(18年目)。
脳卒中認定理学療法士・3学会合同呼吸療法認定士の資格を持ち、学会発表・論文投稿の経験もあります。
現場での経験をもとに、根拠(エビデンス)に基づいたリハビリ・健康情報をわかりやすくお届けします。
回復期リハビリで実際に使う筋トレメニュー|集団起立訓練の効果を理学療法士が解説
「リハビリ病院って、患者さんみんなで何をしているの?」と聞かれることがあります。回復期リハビリテーション病棟では、個別の理学療法(マンツーマン訓練)だけでなく、集団で行う「起立訓練(立ち上がり訓練)」が、多くの病院で日常的に取り入れられています。
今回は、私が現場で実際に行っている集団起立訓練について、その目的・やり方・科学的な効果のエビデンスを、できるだけわかりやすく解説していきます。
📋 この記事でわかること
- 集団起立訓練とは何か、現場でどう行われているか
- 起立・着席運動が筋肉にもたらす効果(エビデンス)
- 自宅でできる起立訓練のやり方と注意点
- よくある質問(Q&A)
1|集団起立訓練とは?回復期病棟でのリアル
集団起立訓練とは、複数の入院患者さんが食堂やリハビリ室などに集まり、職員の声かけと見守りのもとで椅子からの立ち上がり・着席(Sit-to-Stand:以下STS)を一定回数繰り返す訓練のことです。
多くの回復期リハビリ病棟では、午後のあるいは夕方の時間帯に、看護師やリハビリスタッフが中心となって実施しています。1回30分程度、見守りのもとで安全に繰り返し動作を行うことで、個別リハビリだけでは確保しきれない「運動量」を補うことができます。
💬 現場でのエピソード
以前担当した70代後半の大腿骨近位部骨折の患者さんは、入院当初、5回立ち上がりテストに28秒を要し、立ち上がりの際には必ず手すりを使用していました。
個別リハビリに加えて、毎日の集団起立訓練に参加し、自主トレ表へ実施回数を記録する形で継続していただきました。最初は1日20回程度だった立ち上がり練習も、退院前には50回近く実施できるようになりました。
その結果、約1か月後には5回立ち上がりテストが18秒まで改善し、見守りなしでの立ち上がりが安定しました。病棟内歩行も杖なしで可能となり、「立つのが楽になった」「記録が増えるのを見るのが楽しみだった」と話してくださったことを覚えています。
この患者さん以来、私は筋力向上そのものだけでなく、「できた回数を見える化すること」もリハビリ継続の重要な要素だと考えるようになりました。本人が「今日はここまでできた」と数字で実感できることが、モチベーション維持につながる場面を何度も経験しています。
実際に、日本の回復期リハビリ病棟での取り組み報告では、午後の時間帯に病棟全体で集団立ち上がり訓練を実施する取り組みが紹介されており[1]、運動量確保の手段として活用されています。
2|起立・着席運動の科学的な効果(エビデンス)
脳卒中治療ガイドラインでも推奨グレードA
「起立-着席訓練(起立訓練)」は、脳卒中治療ガイドラインにおいて、歩行訓練などとあわせて下肢の訓練量を増やすことが、歩行能力の改善のために強く勧められており、その推奨グレードはA(最も高いレベル)とされています[2]。
実際に、脳卒中の回復期患者さんを対象に、通常訓練に加えて積極的に起立訓練を行った群と、通常訓練のみの群を比較した報告では、起立訓練を行った群で良好な経過が示されています[2]。
高齢者の筋量・筋力の改善効果
椅子からの立ち上がり動作(Sit-to-Stand)を週3回・8週間継続したランダム化比較試験(RCT)では、回数を変えた複数の条件で、いずれも下肢の筋構造・筋機能の改善が確認されています[3]。また、12週間のチェアスタンド(椅子からの立ち上がり)トレーニングが、高齢女性の大腿部の筋肉の太さ(断面積)と筋力を増加させたとの報告もあります[4]。
| 起立訓練でねらう主な効果 | 関連する筋肉 |
|---|---|
| 立ち上がり・歩行・移乗の安定性向上 | 大腿四頭筋(太ももの前) |
| 転倒予防・バランス能力の向上 | 大殿筋・中殿筋(お尻) |
| 下肢全体の持久力・運動耐性の向上 | ハムストリングス・下腿三頭筋 |
「軽い負荷」でも効果が出る理由
自分の体重だけを使う起立訓練は、ダンベルなどに比べて「負荷が軽い」と感じる方もいるかもしれません。しかし、筋肉が大きくなる(筋肥大する)ために重要なのは、重さそのものよりも「筋肉にどれだけしっかり負荷がかかったか(機械的張力)」「どれだけ努力して動いたか」であるとされています。立ち上がりや階段の上り下り、スクワットといった動作は、太ももやお尻の筋肉に十分な負荷を与えることができる動作です[5]。
実際に、高齢者が自宅で12週間の自重スクワットを行った研究では、下肢の筋量・筋力、立ち上がりテストや歩行速度といった身体機能が改善したことが報告されています[6]。
3|自宅でできる起立訓練のやり方
🏠 基本のやり方
-
- 安定した椅子(ぐらつかないもの)を用意する
- 足を肩幅程度に開き、足の裏全体を床につける
- 背筋を伸ばし、おへそを前に出すようにして、ゆっくり立ち上がる
- 立ち上がったら膝をしっかり伸ばし、姿勢を確認する
- ゆっくり腰を下ろし、再び座る

長野県の医療生協が紹介している取り組みでは、回復期リハビリ病棟で毎日午後に職員の声かけと見守りのもと、入院患者さんが集団で30分間の立ち上がり訓練を行っているほか、自主トレ表を使って空欄に回数を記入していく方法も紹介されています[7]。空欄を埋めていく達成感が、継続のモチベーションにつながるという視点は、自宅で取り組む際にも参考になります。
⚠️ 注意点
- ふらつきやすい方は、必ず手すりやテーブルなど支えになるものを近くに置く
- 息を止めずに、自然な呼吸を続けながら行う
- 痛みやめまいを感じたら、すぐに中止する
- 持病がある方、転倒リスクが高い方は、必ず医師や理学療法士に相談してから行う
4|Q&A:よくある質問
Q1. 1日にどのくらいの回数をやればいいですか?
A. リハビリの現場で紹介されている例では、65歳までは1日400〜600回、それより高齢の方では200回以上を目安とする考え方が紹介されています[7]。ただし、これは目標値であり、最初から無理に行う必要はありません。少ない回数から始めて、ご自身の体力や持病の状態に合わせて、無理のないペースで増やしていくことが大切です。
Q2. 膝が痛いのですが、起立訓練はできますか?
A. 膝に痛みがある場合は、座面の高い椅子を使ったり、立ち上がる際に手すりやテーブルで支えたりすることで、膝への負担を減らしながら行うことができます。痛みが強い場合や、動作によって痛みが増す場合は、自己判断で続けず、医療機関や理学療法士に相談することをおすすめします。
まとめ
- 集団起立訓練は、回復期リハビリ病棟で運動量を確保するために広く取り入れられている訓練
- 起立・着席運動は脳卒中治療ガイドラインでも推奨グレードAとされる[2]
- 自分の体重を使った起立訓練でも、太もも・お尻の筋肉に十分な負荷を与えることができる[5][6]
- 自宅で行う場合は、安全な環境づくりと無理のない回数設定が大切
🛒 自宅での起立訓練におすすめのアイテム
自宅で起立訓練を安全に行うために、足元の安定と、ふらついたときに支えになるものを準備しておくことはとても重要です。滑りにくい室内シューズを使うことで足裏のグリップが安定し、立ち上がり時のふらつきを軽減しやすくなります。また、手すりや支持物を要所要所に置くことで、より安心して訓練に取り組めます[8]。
👟 【DREI】介護シューズ 高齢者 軽量 滑り止め 転倒防止(介護士監修)
介護士監修のもとで作られた高齢者向け介護シューズです。軽量設計で足への負担を抑えつつ、滑り止め加工により室内での転倒防止に配慮されています。マジックテープ式で着脱がしやすく、起立訓練やリハビリの場面でも扱いやすい一足です。
🤲 【TORIKORE】立ち上がり補助 置き型手すり(理学療法士監修)高さ調節4段階
理学療法士監修の置き型手すりで、高さを4段階に調節できます。超軽量1.39kgと持ち運びがしやすく、玄関・トイレ・ベッドサイド・椅子の横など、起立動作が必要な場所に置いて使えます。耐荷重136kgで、起立訓練時のふらつき防止や転倒予防のサポートとして活用しやすいアイテムです。
参考文献
- おぐらリハビリテーション病院.病棟リハとしての集団立ち上がり訓練の取り組み.
- 脳卒中治療ガイドライン2009/脳卒中患者に対する起立-着席訓練の効果に関する報告(理学療法科学).
- Sit-to-Stand Training RCT(8週間・週3回).PeerJ 2023.
- Lizama-Perez et al. Chair stand training increases thigh muscle CSA in older women. 2023.
- Roberts MD et al. Mechanisms of Mechanical Overload-Induced Skeletal Muscle Hypertrophy. Physiol Rev 2023;103:2679-2757.
- 高齢者の自宅スクワットトレーニングに関する研究.Scientific Reports 2021.
- 立ち上がり訓練の重要性.長野医療生活協同組合.
- リハビリシューズ(介護用靴)の特徴と選び方.kutsu.com.
【免責事項】
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の症状の診断や治療を保証するものではありません。持病がある方、痛みやしびれなどの症状がある方は、自己判断でトレーニングを行わず、必ず医師・理学療法士などの専門家にご相談ください。本記事の内容を実践した結果について、当ブログは責任を負いかねます。



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