👤 この記事を書いた人:とっち
回復期リハビリテーション病院に勤務する理学療法士(経験18年目)。
脳卒中専門理学療法士、3学会合同呼吸療法認定士の資格を保有。学会発表・論文投稿の経験もあり、エビデンスに基づいたリハビリ・健康情報を発信しています。
ブログ「リハビリと身体のケアラボ」運営中。
タンパク質の必要量、ちゃんと摂れていると思っている方、実は多いんですよね。でも実際に食事記録を確認してみると、「あれ、全然足りてないじゃないか」というケースがびっくりするくらい多くて。
体重60kgの高齢の方なら、1日に必要なタンパク質は約96g。これ、鶏むね肉に換算すると400g近くになるんですよ。「毎日そんなに食べてるかな?」って考えると、なかなか難しいと思いませんか。
病院で栄養士と一緒に患者さんの食事内容を確認するようになってから、「食べてるつもりだけど、タンパク質はほぼ摂れていない」という状況がいかに多いか、肌で感じるようになりました。ご飯やパンでカロリーは取れていても、おかずが少ないとタンパク質はあっという間に不足するんですよね。
そういう現場の経験をもとに、「プロテインって本当に必要なの?」という疑問に、理学療法士として正直にお答えしていきます。
プロテインは必要か?理学療法士の視点で解説
「プロテインって、筋トレしている人だけのものでしょう?」「お年寄りが飲んでも意味があるの?」
回復期リハビリ病院で働いていると、患者さんやご家族からこうした質問をよく受けます。今回は、筋トレシリーズの番外編として、プロテイン(タンパク質補給)が本当に必要なのかを、理学療法士の視点とエビデンスをもとに解説します。
💡 現場エピソード
「筋トレさえ頑張れば、筋肉はつく。」
そう思われがちですが、実際の臨床ではそれだけではうまくいかないことがあります。
以前担当した80代の女性患者さんは、大腿骨近位部骨折の手術後、食欲低下が続き、食事摂取量は必要量の半分程度にとどまっていました。リハビリには意欲的で、下肢の筋力訓練や歩行練習にも毎日しっかり取り組まれていましたが、5回立ち上がりテストは22秒前後で停滞し、思うような筋力向上がみられませんでした。
当初は「年齢の影響もあるのだろうか」と考えていましたが、管理栄養士と相談したところ、筋肉の材料となるタンパク質が十分に摂取できていないことが分かりました。
そこで食事内容を見直すとともに、リハビリ後にプロテインを補助的に摂取していただくようにしました。
すると3〜4週間後には、5回立ち上がりテストは22秒から16秒まで改善。「最近は立ち上がるのが楽になった」「前より足に力が入る感じがする」と、ご本人から前向きな言葉が聞かれるようになりました。
もちろん、この変化はプロテインだけによるものではありません。継続したリハビリや全身状態の改善、栄養管理など、さまざまな要因が重なった結果だと考えています。
この経験以来、私は筋力の改善が思うように進まない患者さんを担当したとき、運動量だけでなく、食事摂取量やタンパク質が十分に摂れているかも必ず確認するようにしています。
筋トレは筋肉を育てる「刺激」です。
しかし、その刺激を筋肉へ変えるためには、材料となる栄養が欠かせません。
「頑張っているのに成果が出ない。」
そんなときは、運動方法だけでなく、毎日の食事も一度振り返ってみることが大切だと、この患者さんから改めて教えていただきました。
※プライバシー保護のため、症例内容は一部変更・再構成しています。
🔬 なぜ筋肉づくりに「タンパク質」が重要なのか

筋トレをすると筋肉に微細な損傷が起こり、それを修復・強化する過程で筋肉は大きく・強くなります。この「筋タンパク合成」という修復プロセスには、材料となるタンパク質(アミノ酸)が不可欠です。
体内では、タンパク質の摂取と運動の刺激が組み合わさることで、筋肉を作る指令を出す経路(mTORC1経路)が活発になります(文献1)。特に、肉・魚・乳製品に含まれる必須アミノ酸の一種「ロイシン」を多く含むタンパク質は、この経路を強く刺激することが分かっています。
高齢になるほど「同化抵抗性」に注意
ここで知っておいていただきたいのが「同化抵抗性(アナボリックレジスタンス)」という現象です。これは、同じ量のタンパク質を摂っても、若い人に比べて高齢者の筋肉が反応しにくくなる状態を指します(文献1)。
そのため、高齢になるほど、若い頃と同じ食事内容では筋肉維持に必要なタンパク質が不足しやすくなる、という点に注意が必要です。
📊 どのくらいのタンパク質が必要?
研究で示されている目安量を表にまとめました。
| 対象 | 1食あたりの目安 | 1日あたりの目安(上限) |
|---|---|---|
| 若年〜中年成人 | 体重1kgあたり約0.25g | 体重1kgあたり約1.6g/日 |
| 高齢者 | 体重1kgあたり約0.40g | 体重1kgあたり約1.6g/日 |
※体重60kgの方なら、1食あたり約24g(高齢者の場合)が目安です。これは鶏むね肉約100g、もしくは卵3〜4個程度に相当します(文献1)。1日の総量として1.6g/kg/dayを超えても、それ以上の効果の上乗せは乏しいとされています。
💬 現場エピソード|「食べてるつもり」の落とし穴
数年前の冬、70代後半の男性患者さんを担当していたときのことです。脳梗塞後の回復期で、歩行訓練は順調に進んでいるのに、なぜか筋力の数値がなかなか上がらない。1ヶ月経っても膝伸展の徒手筋力検査がずっと4くらいで止まっていて、正直焦っていました。
栄養士に声をかけて食事記録を確認してもらったところ、1日のタンパク質摂取量が推定30〜40g台。体重65kgの方でしたから、必要量の半分以下でした。本人に聞くと「ちゃんと食べてますよ」とのことで、実際に病院食は7〜8割は食べていた。でも中身を見ると、ご飯とお汁が多くて、おかず(魚・肉・卵)の手がつけられていない日がちょこちょこあったんです。
「実はお魚、あんまり好きじゃなくて」と、ぽつりと言われたのはその後の雑談の中でした。もっと早く聞けばよかった、と思いました。好みを把握できていなかった自分のアセスメント不足です。栄養士・管理栄養士と連携して、好きなもの(卵料理・豆腐)を中心に組み直してもらい、さらに少量のプロテインを補助的に追加。そこから3週間で筋力の伸びが目に見えて変わりました。
運動の処方ばかり気にしていて、栄養という「材料」の確認が後回しになっていた。18年やっていても、こういう見落としはまだあります。
✅ プロテイン(サプリメント)が向いているケース
「タンパク質は食事から摂るのが基本」という大前提は変わりません。しかし、以下のような場合には、プロテイン製品が現実的な選択肢になります。
- 食欲が落ちて、肉や魚をしっかり食べられない
- 術後・入院中で食事量が普段より少ない
- 運動直後に手軽にタンパク質を補いたい
- 調理が難しく、食事内容が炭水化物中心になりやすい
特に低栄養は、術後の回復やリハビリの転帰を悪化させる「予防可能なリスク因子」とされています(文献2)。レジスタンス運動と栄養補充(特にタンパク質)を組み合わせることが、サルコペニアやフレイルへの対応として最も良好な結果につながるとされています(文献3)。
⚠️ プロテイン選び・摂取の注意点
・腎機能に問題がある方は、タンパク質摂取量について必ず主治医に相談してください
・牛乳由来のホエイ・カゼインは、乳製品アレルギーの方は避け、ソイ(大豆)プロテインなどを検討してください
・プロテインだけに頼らず、食事全体のバランスを基本に考えましょう
・持病で食事制限がある場合(糖尿病・腎疾患など)は、栄養士・医師に相談のうえで取り入れてください
❓ よくある質問(Q&A)
Q1. プロテインは運動していない人でも飲んでいいの?
A. はい、問題ありません。特に食事量が少ない方や高齢の方は、運動の有無に関わらず、タンパク質補給の手段として活用できます。ただし、摂取量が極端に多くなりすぎないよう、1日の総量には注意しましょう。
Q2. いつ飲むのが効果的?
A. 運動後はもちろんですが、食事だけでは不足しがちな朝食時に取り入れるのもおすすめです。1日のタンパク質摂取を数回の食事に分けて摂ることが、効率的な筋タンパク合成につながると考えられています。
📝 まとめ
- 筋肉の修復・強化には、運動だけでなくタンパク質という「材料」が欠かせない
- 高齢になるほど「同化抵抗性」により、より多くのタンパク質が必要になりやすい
- 基本は食事から。プロテインは食事で不足する分を補う「手段の一つ」
- 腎疾患など持病がある方は、必ず医師・栄養士に相談してから取り入れる
「プロテインが絶対に必要」というわけではありませんが、食事だけで十分な量を摂れていない方にとっては、有効な選択肢の一つです。ご自身の食事内容を振り返りながら、必要に応じて取り入れてみてください。
📚 参考文献
- Roberts MD et al. Mechanisms of Mechanical Overload-Induced Skeletal Muscle Hypertrophy. Physiol Rev 2023;103:2679-2757.
- Springer NMA et al. Malnutrition and perioperative nutritional rehabilitation. Eur Surg 2025.
- Tohyama M et al. Nutritional Care and Rehabilitation for Frailty, Sarcopenia, and Malnutrition. Nutrients 2023;15:4908.
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の症状や疾患の診断・治療を目的とするものではありません。記事内容に基づいた行動により生じた結果について、当ブログは責任を負いかねます。健康状態に不安がある方、持病をお持ちの方は、自己判断せず医療機関・専門家にご相談ください。
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