筋トレの効果を最大化するタンパク質の摂り方|理学療法士が解説

セルフケア・リハビリ

👤 この記事を書いた人:とっち

回復期リハビリテーション病院に勤務する理学療法士(経験18年目)。
🏅 脳卒中専門理学療法士
🏅 3学会合同呼吸療法認定士
学会発表・論文投稿の経験もあり、現場での実体験をもとに根拠ベースの情報をお届けします。

ちょっと衝撃だったんですよ、これ。
1日に必要なタンパク質量、体重60kgの人で「約96g」なんです。卵1個に含まれるタンパク質がだいたい6〜7g。つまり卵だけで換算したら、毎日13〜14個食べないと届かない計算になります。
この数字、初めてちゃんと計算してみたとき、正直「そんなに摂れてる人、ほとんどいないのでは」って思ったんですよね。
実際、うちの病棟に入院してくる患者さんの食事記録を見ていると、1日30〜40g程度しか摂れていない方もけっこういらっしゃいます。毎日リハビリで筋トレをしていても、材料が足りていなければ筋肉はなかなかついてくれません。これは現場で何度も実感してきたことでして。
「運動さえしていれば大丈夫」と思っていた方ほど、タンパク質の摂り方を見直すと変化が出やすいんです。この記事では、その具体的なポイントをまとめています。

筋トレの効果を最大化するタンパク質の摂り方|理学療法士が解説

「筋トレを頑張っているのに、なかなか筋肉がつかない…」
そんな悩みを抱えている方、実はタンパク質の摂り方に原因があるかもしれません。

回復期リハビリテーション病院で18年間、多くの高齢者の方の筋力訓練や栄養指導に関わってきた中で、「運動はしているのに筋肉量が思うように増えない」というケースの多くに、タンパク質摂取量や摂り方の課題が隠れていると感じています。

💡 現場エピソード
「こんなに頑張っているのに、なぜ筋力がつかないんだろう。」

リハビリの現場では、そんな場面に出会うことがあります。

以前担当した80代の患者さんも、毎日下肢筋力トレーニングや歩行練習に意欲的に取り組んでいました。しかし、5回立ち上がりテストは22秒前後で停滞し、思うような改善がみられませんでした。

そこで食事内容を確認すると、摂取量は必要量の約6割程度。特に筋肉の材料となる肉や魚などのタンパク質が十分に摂れていませんでした。

管理栄養士と連携し、食間にプロテイン飲料を追加するなど、タンパク質摂取量の確保を図りました。運動は継続しながら栄養面も見直した結果、約4週間後には5回立ち上がりテストは22秒から16秒まで改善しました。

「立ち上がりが楽になった。」

「前より足に力が入る感じがする。」

そんな言葉を聞けたことが、今でも印象に残っています。

もちろん、筋力の回復には年齢や病気、活動量などさまざまな要因が影響します。今回の改善も、リハビリだけではなく栄養管理や全身状態の改善が組み合わさった結果と考えられます。

この経験以来、私は筋力向上が思うように進まない患者さんを担当した際、運動量だけでなく「食べられているか」という視点も必ず確認するようにしています。

筋トレは筋肉への刺激になります。

しかし、その刺激を筋肉へ変えるためには、材料となるタンパク質をはじめとした十分な栄養が欠かせません。

「運動しているのに成果が出ない。」

そんなときは、トレーニング方法だけでなく、毎日の食事にも目を向けてみることが大切だと、この患者さんから改めて学びました。(1)

※プライバシー保護のため、症例内容は一部変更・再構成しています。

筋肉はどうやって作られる?タンパク質の役割

筋トレをすると、筋肉の線維には微細な損傷が生じます。その後、体はその損傷を修復しながら、以前より少し強く・大きな筋肉を作り直します。このプロセスを「筋タンパク合成(MPS)」と呼びます。

この筋タンパク合成は、体内の「mTORC1(エムトール)」という経路によってコントロールされています[1]。簡単に言えば、運動という「刺激」と、タンパク質という「材料」がそろうことで、このスイッチがオンになり、筋肉の修復・増強が進むイメージです。

つまり、どれだけ質の良いトレーニングをしても、材料となるタンパク質が不足していれば、筋肉は十分に作られません。「運動」と「栄養」は、筋トレ効果を引き出すための両輪なのです。

1日にどれくらいのタンパク質が必要?

必要なタンパク質量は、年齢によって異なります。

対象 1食あたりの目安 1日の総量目安
若年〜中年成人 体重1kgあたり約0.25g 体重1kgあたり約1.6g/日が上限の目安[1]
高齢者 体重1kgあたり約0.40g

例えば体重60kgの方であれば、1日あたり約96gのタンパク質が目安となります。これは、卵・肉・魚・大豆製品・乳製品などを組み合わせて、毎食しっかり摂る必要がある量です。

⚠️ 高齢者で特に注意したい「同化抵抗性」
高齢になると、同じ量のタンパク質を摂っても、若い頃より筋肉づくりへの反応が鈍くなる「同化抵抗性」という現象が起こります[1]。そのため、高齢者は若年者より多めのタンパク質を、1回の食事でしっかり摂ることが推奨されています。

🗒️ 18年目のPTが正直に話す、ちょっと苦い経験

これは入職して10年目ごろの話です。当時担当していた70代の男性患者さん(脳梗塞後、入院から約2か月目)は、週5日のリハビリをとても真面目にこなしていて、私もその熱心さに応えたくて筋力トレーニングのメニューに力を入れていました。

でも、膝伸展の筋力測定をするたびに数値がほとんど変わらない。3週間経っても、4週間経っても。「なんでだろう」と悩んで、運動負荷を少し上げてみたり、頻度を増やしてみたり、あれこれ試しました。ところがそのうち、カルテをよくよく見直したら食事摂取量の欄に「7割程度」「肉類ほぼ残し」という記録が何週間も続いていたんです。

…完全に見落としていました。運動の量や質ばかり気にして、栄養の状態をちゃんと把握できていなかった。正直、恥ずかしかったです。

その後、管理栄養士に相談してタンパク質の補充を食事に組み込んでもらうと、5週目あたりから数値がじわじわ動き始めて、患者さん自身も「なんか足が踏ん張れる気がする」とおっしゃっていました。体重52kgの方でしたが、食事からのタンパク質がそれまで1日30〜40g程度しか摂れていなかったとのこと。目標の約80gとは大きくかけ離れていた計算になります。

それ以来、担当患者さんの食事記録は「週1回は必ず確認する」を自分のルールにしています。運動と栄養はセット、というのは知識としては知っていたはずなのに、現場で抜けてしまうことがある。18年経った今でも、あの頃のことをたまに思い出します。

摂取量だけじゃない!「タイミング」と「分配」のコツ

① 1日の中で均等に分けて摂る

1日に必要なタンパク質量を、朝食でまとめて摂るのではなく、朝・昼・夕とできるだけ均等に分配することで、筋タンパク合成の効率が高まるとされています[2]。日本人の食事は、朝食でタンパク質が不足しがちな傾向があるため、特に意識したいポイントです。

② 運動後の補給を意識する

筋トレ後は筋肉が「材料」を必要としているタイミングです。運動後にタンパク質を補給することで、筋タンパク合成がより効率的に進むと考えられています。特に、消化吸収が速いホエイプロテインは、ロイシンというアミノ酸を豊富に含み、mTORC1経路を強く活性化することが分かっています[1]

③ 就寝前の補給という選択肢も

消化吸収がゆっくりなカゼインプロテインを就寝前に摂ることで、筋肉が分解されやすい睡眠時間中も、継続的にアミノ酸を供給できる可能性があります。日中の食事だけでは目標量に届きにくい方は、補助的に活用するのも一つの方法です。

プロテイン(サプリメント)は摂った方がいい?

基本は「食事から摂る」ことが大切ですが、以下のような方にはプロテイン飲料・パウダーなどのサプリメントが助けになる場合があります。

  • 食が細くなり、1回の食事量が少ない高齢の方
  • 運動後すぐに食事の準備ができない方
  • 間食代わりに手軽にタンパク質を補いたい方

特に高齢者の場合、レジスタンストレーニング(筋力トレーニング)と栄養補充(タンパク質補給)を組み合わせることで、サルコペニア(加齢による筋肉量・筋力の低下)やフレイル(虚弱)に対してより良い効果が期待できることが報告されています[3]

よくある質問(Q&A)

Q1. プロテインを摂りすぎると腎臓に悪いですか?

健康な方が適切な範囲(前述の体重1kgあたり約1.6g/日程度まで)でタンパク質を摂取する場合、過度に心配する必要はないとされています[1]。ただし、腎機能に問題がある方や持病をお持ちの方は、自己判断で摂取量を増やす前に、必ず主治医や管理栄養士に相談してください。

Q2. プロテインを飲むだけで筋肉はつきますか?

いいえ。プロテインはあくまで「材料」であり、筋肉を増やす一番の刺激は運動(特にレジスタンストレーニング)です。運動という刺激とタンパク質という材料が両方そろうことで、効率的な筋肉づくりが期待できます[1]

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まとめ

  • 筋トレの効果を引き出すには、運動と同じくらいタンパク質の摂り方が重要
  • 1日の目安は体重1kgあたり約1.6gまで(高齢者は同化抵抗性に注意)
  • 1日の中で均等に分けて摂ることが筋タンパク合成の効率を高める
  • 運動後はホエイ、就寝前はカゼインなど、目的に応じた使い分けも有効
  • 持病がある方は必ず主治医・管理栄養士に相談を

参考文献

[1] Roberts MD, Haun CT, Vann CG, et al. Mechanisms of Mechanical Overload-Induced Skeletal Muscle Hypertrophy: Current Understanding and Future Directions. Physiol Rev. 2023;103(4):2679-2757. doi:10.1152/physrev.00039.2022
[2] Mamerow MM, Mettler JA, English KL, et al. Dietary Protein Distribution Positively Influences 24-h Muscle Protein Synthesis in Healthy Adults. J Nutr. 2014;144(6):876-880. doi:10.3945/jn.113.185280
[2a] Currier BS, D’Souza AC, Fiatarone Singh MA, et al. (ACSM Position Stand) Resistance Training Prescription for Muscle Function, Hypertrophy, and Physical Performance in Healthy Adults: An Overview of Reviews. Med Sci Sports Exerc. 2026;58(4):851-872. doi:10.1249/MSS.0000000000003897
[3] Tohyama M, Nojiri S, Katayama M, et al. Nutritional Care and Rehabilitation for Frailty, Sarcopenia, and Malnutrition: A Scoping Review. Nutrients. 2023;15(22):4908. doi:10.3390/nu15224908

※本記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、特定の疾患の診断・治療を目的としたものではありません。体調に不安がある方、持病をお持ちの方は、自己判断で摂取量を変更せず、必ず医師・管理栄養士などの専門家にご相談ください。

 

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回復期リハビリテーション病院勤務18年目の理学療法士。
・脳卒中認定理学療法士
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