貧血と体力低下の関係|リハビリに与える影響と食事での対策を理学療法士が解説

セルフケア・リハビリ

✍️ この記事を書いた人

とっち|理学療法士

回復期リハビリテーション病院 勤務18年目 / 🧠 脳卒中認定理学療法士 / 🫁 3学会合同呼吸療法認定士
学会発表5回・論文投稿2回の経験を持つ。多くの高齢入院患者の血液データを確認しながら、日々のリハビリ計画を立案している。
ブログ:リハビリと身体のケアラボ(tocchi-fm-1111.com)

📝 はじめに——現場で気づいたこと

正直に言うと、若い頃の自分は「リハビリが進まない=まだ運動量が足りない」と思いがちでした。

転機になったのは、確か冬の入院シーズンが重なる1月の頃だったと思います。人工股関節の術後で転院してきた72歳の女性患者さんが、毎回リハビリ開始から10分もしないうちに「先生、なんか気持ち悪くて……」とうつむいてしまうんです。顔色は蒼白で、脈拍は安静時でも90台後半。歩行練習どころか、立っているだけで精一杯という感じ。

「もしかして」と思ってカルテの血液データを確認したら、Hbが7.8 g/dLでした。術後出血と食欲不振が重なって、気づかないうちに重度の貧血になっていたんです。その日のリハビリは即座に中止。主治医に報告して鉄剤投与と栄養管理を優先してもらいました。

3週間後、Hbが10.2 g/dLまで回復したとき、患者さんは「先生、今日なんか体が違う気がする」と笑顔で言ってくれました。あの言葉、18年たった今でも覚えています。血液データを毎回確認する習慣は、あの冬の経験から始まった気がします。

「リハビリを頑張っているのに、すぐ息切れして続けられない」「少し歩いただけでめまいがする」「体力が全然戻らない気がする」——こんなお悩みを抱えている方や、ご家族の回復を心配している方はいませんか?

その原因のひとつとして見落とされがちなのが、「貧血」です。貧血は”なんとなくだるい”という曖昧な症状から始まることが多く、リハビリへの影響が非常に大きいにもかかわらず、見過ごされてしまうケースが少なくありません。

この記事では、回復期リハ病院で18年間、毎日患者さんの血液データを確認しながらリハビリを続けてきた理学療法士の視点から、貧血が体力とリハビリにどう影響するのか、そして日常生活で実践できる対策をわかりやすく解説します。

📋 この記事の目次

  1. 貧血とは何か?——基本的なメカニズムをわかりやすく解説
  2. 貧血の種類と原因——高齢者・入院患者に多いタイプは?
  3. 貧血が体力とリハビリに与える影響——なぜ「疲れやすい」のか
  4. 理学療法士が見る「貧血とリハビリのリスク管理」
  5. 現場エピソード——貧血を見落としていたことで回復が遅れた患者さん
  6. 貧血対策の基本——食事からできること
  7. 日常生活で取り入れやすい!鉄分摂取の具体的工夫
  8. よくある質問(Q&A)
  9. まとめ

1. 貧血とは何か?——基本的なメカニズムをわかりやすく解説

貧血とは、血液中のヘモグロビン(Hb)濃度が基準値より低下した状態を指します。ヘモグロビンは赤血球に含まれる赤い色素のタンパク質で、肺から酸素を受け取り、全身の細胞・筋肉・臓器へ届けるはたらきを担っています[1]。

🩺 WHO・日本の貧血診断基準(成人)

・成人男性:ヘモグロビン(Hb)13 g/dL 未満
・成人女性:ヘモグロビン(Hb)12 g/dL 未満
・高齢者の実用的目安:男女を問わずHb 11 g/dL 未満[2]

ヘモグロビンが減ると、筋肉・脳・心臓など全身の組織への酸素供給量が不足します。酸素が十分に届かない状態では、エネルギーを効率よく作り出せなくなるため、少し動いただけでも息切れや疲労感が生じるのです。これがリハビリへの影響の根本的なメカニズムです。

重要なのは、貧血は「病名」ではなく「状態」である点です。必ず背景に何らかの原因があり、その原因によって治療法も変わります。自己判断で鉄分サプリを飲めば治るとは限らないため、気になる症状がある場合は必ず医療機関で血液検査を受けることが重要です。

2. 貧血の種類と原因——高齢者・入院患者に多いタイプは?

貧血にはいくつかの種類があり、原因によって対応が異なります。リハビリ現場でよく遭遇するタイプを中心に整理します。

種類 主な原因 特徴・対象
鉄欠乏性貧血 鉄の摂取不足・消化管出血・月経 最も多い。全貧血の約70%[3]
慢性疾患に伴う貧血
(炎症性貧血)
慢性炎症・感染症・がん・関節リウマチ 入院中・回復期患者に多い。鉄分補充だけでは改善しない
腎性貧血 慢性腎臓病によるエリスロポエチン産生低下 透析患者・慢性腎不全の方
巨赤芽球性貧血 葉酸・ビタミンB12の不足 高齢者・胃切除後・菜食主義者
術後・出血後の貧血 手術(人工関節・消化器など)・外傷による出血 急性期・回復期の入院患者に多い
老年性(原因不明)貧血 加齢・骨髄機能低下・炎症などが複合 80歳以上の高齢者。フレイル・筋力低下との合併が多い[2]

回復期リハビリ病棟では、脳卒中・骨折・心疾患などで入院してきた患者さんが多く、脳卒中入院患者の約40%に何らかの貧血が認められると報告されています[4]。また、慢性疾患や術後の影響が重なっているケースも多く、単純な「鉄分補充」では改善しない複合的な貧血が混在しています。

3. 貧血が体力とリハビリに与える影響——なぜ「疲れやすい」のか

貧血がリハビリに悪影響を与えるメカニズムを、具体的に見ていきましょう。

① 運動耐容能の低下——少し動くだけで疲れる

筋肉を動かすには大量の酸素が必要です。ヘモグロビンが低下すると酸素供給能力が落ちるため、運動耐容能(どれだけ体を動かせるか)が著しく低下します。貧血が持続すると運動耐容能の低下が顕著になり、リハビリの継続時間・強度が制限されることが複数の研究で示されています[5]。

神戸大学らの研究では、重度の腎臓病を合併する心臓疾患患者において、有酸素運動能力の低下は骨格筋よりも貧血や心機能低下の影響が大きく、運動療法よりも貧血治療を優先すべきケースがあることが明らかになっています[6]。つまり、どれほど一生懸命リハビリをしても、貧血が放置されていては効果が半減してしまう場合があるのです。

② 筋肉の合成と修復が滞る

鉄は筋肉の中にもミオグロビン(筋肉内の酸素貯蔵タンパク)として存在しており、筋肉への酸素貯蔵・エネルギー産生に関わっています。鉄が不足すると、筋肉での酸素利用効率が下がり、リハビリで負荷をかけても筋肉の合成・修復が十分に行われにくくなります。

また、前回の記事(#86)でご紹介した「リハ栄養」の観点からも、タンパク質が筋肉の材料なら、鉄はその材料を運ぶ「輸送システム」といえます。いくら良い食事を摂っていても、鉄が不足して酸素が届かなければ、筋肉の修復工場が止まってしまうようなものです。

③ 脳への影響——集中力・意欲・認知機能の低下

脳は全身で最も多くの酸素を消費する臓器です。貧血による酸素不足は集中力・思考力・意欲の低下を引き起こします。特に高齢の患者さんでは、貧血がせん妄(意識の混濁・興奮)の一因になることも現場では経験します。リハビリには患者さん自身の積極的な参加が不可欠であり、意欲の低下は回復の妨げになります。

④ 転倒・ふらつきのリスク増大

貧血による立ちくらみ(起立性低血圧の悪化)やめまいは転倒リスクを著しく高めます。特に「骨粗しょう症」や「筋力低下(サルコペニア)」を合併している高齢者では、転倒・骨折が重篤な結果につながるため、貧血管理は転倒予防の観点からも重要です。ヘモグロビンが7.5 g/dL未満の状態では、立位や歩行練習は危険を伴うリスクがあるとも指摘されています[7]。

🚨 貧血が疑われるサイン(こんな症状はありませんか?)

  • 少し動いただけで息切れ・動悸がする
  • 立ち上がったときにめまい・立ちくらみがある
  • 慢性的な倦怠感・疲労感が抜けない
  • 顔色が青白い・粘膜(まぶた裏・口の中)が白っぽい
  • 爪が割れやすい・スプーン状に変形している(重症の鉄欠乏)
  • 氷を無性に食べたくなる(異食症:鉄欠乏性貧血の特徴的な症状)
  • リハビリ後の疲労がいつまでも回復しない
  • 集中力が続かない・ぼんやりする

※これらの症状がある場合は、自己判断せず医療機関で血液検査を受けることをおすすめします。

4. 理学療法士が見る「貧血とリハビリのリスク管理」

実際の臨床現場では、理学療法士はリハビリを開始する前に患者さんの血液データを確認し、安全に運動が行える状態かどうかを評価しています。ヘモグロビン値はその中でも特に重要な指標のひとつです。

ヘモグロビン値(Hb) 現場での対応の目安
10 g/dL以上 通常のリハビリ継続が可能(症状に応じて強度を調整)
8〜10 g/dL 酸素供給能力が不十分。運動強度を軽度〜中等度に抑える。医師と相談しながら進める[8]
7.5〜8 g/dL 立位・歩行練習は転倒リスクが高まる。座位での関節可動域訓練や呼吸練習を優先
8 g/dL以下 積極的な運動は原則避ける。体位変換・呼吸訓練・ポジショニングに限定し、原疾患の治療を優先[8]

※上記の数値はあくまで臨床現場での目安であり、個別の病態・全身状態・担当医の判断により異なります。

重要なのは「貧血があってもリハビリをまったくしない」のではなく、「貧血の程度に合わせて内容・強度を調整しながらリハビリを継続する」ことです。激しい有酸素運動を避けつつ、座位での関節可動域練習・ストレッチ・呼吸訓練・軽度の筋収縮運動などは貧血がある患者さんでも比較的安全に行えます。リハビリと医療管理が車の両輪として機能することが、最大の回復につながります。

5. 現場エピソード——貧血を見落としていたことで回復が遅れた患者さん

🏥 現場エピソード(とっちの実体験)

「先生、こんなに頑張っているのに、どうして歩けるようにならないんでしょう。」

退院前、ご家族からかけられたこの言葉が、今でも印象に残っています。

回復期病棟で担当した70代の女性です。大腿骨頸部骨折の手術後、リハビリ目的で転院されました。

ご本人は毎日まじめにリハビリへ取り組み、ご家族も「早く歩けるようになってほしい」と熱心に応援されていました。

しかし、歩行練習を始めると5〜10分ほどで強い息切れが出現し、顔色もみるみる悪くなります。

最初は「体力が落ちているからだろう」と考えていました。

でも、その様子を何度も見ているうちに、

「歩けない原因は、本当に筋力だけなのだろうか。」

という疑問が湧いてきました。

カルテを確認すると、ヘモグロビン値は8.2g/dL。

術後の出血に加え、もともとの偏食や食欲低下も重なり、貧血の影響が大きいことが分かりました。

食事量も毎食半分以下で、「食欲がなくて食べられない」と話されていました。

そこで医師・看護師・管理栄養士と相談し、鉄剤の処方、栄養補助食品の導入、食事内容や提供方法の見直しを進めました。

リハビリも無理に歩行距離を延ばすのではなく、体力に合わせて座位や臥位での運動を中心に変更しました。

約3週間後、ヘモグロビン値は10.5g/dLまで改善し、それに合わせるように歩行距離も少しずつ延び始めました。

最終的には、自宅内を安全に歩いて退院できるまでに回復されました。

もちろん、この変化は貧血の改善だけで説明できるものではありません。

栄養状態の改善やリハビリ、多職種による支援など、さまざまな要因が重なった結果だと思います。

それでも、この症例を通して私が改めて学んだのは、「歩けない患者さんには歩行練習を増やす」という発想だけでは不十分だということでした。

理学療法士が見るべきなのは、歩き方だけではありません。

血液データ、栄養状態、生活背景、疲れやすさ…。

「なぜ今、この人は歩けないのか。」

その原因を探ることこそ、回復への第一歩なのだと、この患者さんから教えていただきました。

6. 貧血対策の基本——食事からできること

鉄欠乏性貧血は食事でのアプローチが有効な貧血です。鉄分には「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の2種類があり、それぞれ吸収率が大きく異なります。

🥩 ヘム鉄(動物性食品)——吸収率15〜30%

ヘモグロビンやミオグロビンの構成成分として存在し、腸管から効率よく吸収されます[3]。鉄欠乏性貧血の改善にはヘム鉄を中心に摂ることが特に効果的です。

🐄 牛赤身肉・牛レバー|🐟 かつお・さんま・あさり・しじみ|🐷 豚レバー・豚赤身|🐔 鶏レバー・砂肝

🥬 非ヘム鉄(植物性・卵・乳製品)——吸収率2〜5%

植物性食品や卵に含まれますが、吸収率は低め。ビタミンCや動物性タンパク質と一緒に摂ることで吸収率が高まります[9]。

🥬 ほうれん草・小松菜|🫘 大豆・豆腐・納豆|🥚 卵|🌊 ひじき・青のり|🌰 ごま・カシューナッツ

📊 1日あたりの鉄の推奨摂取量(厚生労働省 日本人の食事摂取基準2020年版)

  • 成人男性(30〜74歳):7.5 mg/日
  • 成人女性・月経あり(18〜64歳):10.5〜11.0 mg/日
  • 成人女性・月経なし:6.5 mg/日
  • 妊娠中・授乳期:さらに多く必要(主治医・管理栄養士に相談)[10]

※実際の日本人の平均的な鉄摂取量は推奨量に届いていないことが多く、特に若い女性や高齢者は不足しやすいとされています。

鉄だけじゃない!ヘモグロビン合成に必要な栄養素

ヘモグロビンは鉄だけで作られるわけではありません。以下の栄養素も貧血予防・改善に欠かせない要素です。

🍊 ビタミンC——非ヘム鉄の吸収を大幅アップ

非ヘム鉄の吸収率を数倍に高める効果があります。納豆×みかん、ほうれん草のおひたし×レモン汁、豆腐×ブロッコリーなどの組み合わせが効果的です。

🥩 タンパク質——ヘモグロビンの「骨格」

ヘモグロビンはタンパク質(グロビン)と鉄(ヘム)の複合体です。タンパク質が不足するとヘモグロビン自体を作れなくなります。前回の記事(#86)で解説した通り、タンパク質の充足も貧血対策の基本です。

🥦 葉酸・ビタミンB12——赤血球の「製造ライン」

これらが不足すると赤血球が正常に作られず、「巨赤芽球性貧血」を引き起こします。葉酸は緑黄色野菜・枝豆・ブロッコリーに、B12は魚介類・肉類・乳製品に豊富です。高齢者や胃切除後の方は特に注意が必要です。

🔵 銅——鉄の利用を助ける補助ミネラル

鉄をヘモグロビンに組み込む酵素の働きに銅が必要です。牡蠣・エビ・ナッツ類・全粒穀物などに含まれます。

7. 日常生活で取り入れやすい!鉄分摂取の具体的工夫

「知識としてはわかったけれど、実際に何をすればいいの?」という疑問にお答えします。現場でも患者さんや家族の方にお伝えしている、今日からできる具体的な工夫を紹介します。

✅ 工夫1|「レバーが苦手」でも大丈夫——代替食材を使う

ヘム鉄の代表格であるレバーが苦手な方も多いですが、あさり・しじみ・かつお・牛赤身肉でも十分に鉄を摂取できます。例えば「あさりの味噌汁を週3回」「かつおのたたきを週1〜2回」といった形で無理なく取り入れましょう。冷凍のあさりを常備しておくと便利です。

✅ 工夫2|食べ合わせで吸収率を上げる「鉄×ビタミンC作戦」

非ヘム鉄はビタミンCと組み合わせることで吸収率が大幅にアップします。具体的には…

  • ほうれん草のおひたし → 仕上げにレモン汁をひとしぼり
  • 納豆ご飯 → 小ねぎ+かぼすやポン酢少量
  • 小松菜の炒め物 → 最後にパプリカ(ビタミンC豊富)を加える
  • 豆腐 → ミニトマトと一緒に盛り合わせる

✅ 工夫3|鉄の吸収を邪魔するものを把握する

せっかく鉄分を摂っても、同時に摂取すると吸収を阻害するものがあります。

  • タンニン(緑茶・コーヒー・紅茶):食事中・食後すぐの大量摂取は避けるか、食後1時間後以降に
  • フィチン酸(玄米・全粒穀物に多い):ビタミンCとの組み合わせでカバーを
  • カルシウム(牛乳・チーズ):同時大量摂取で鉄の吸収を一部阻害。極端に重ならないよう工夫を
  • 薬との相互作用:逆流性食道炎の薬(プロトンポンプ阻害薬)などは胃酸分泌を抑えるため、鉄の吸収を妨げる場合があります

✅ 工夫4|鉄分たっぷり!かんたん1週間の食事のヒント

毎日完璧な食事は難しいですが、以下のような「鉄分デー」を週に数回設けるだけでも違います。

  • 月・木:あさりの味噌汁(非ヘム鉄+ヘム鉄の両方を摂れる)+小松菜のごま和え
  • 火・金:焼き鮭(ヘム鉄)+ほうれん草のおひたし(レモン汁がけ)
  • 水・土:牛丼・牛肉の炒め物(ヘム鉄)+トマトサラダ(ビタミンC)
  • 日:豚レバー炒め or パスタにあさりのボンゴレ

✅ 工夫5|食が細い方・高齢者は鉄分補助食品やサプリも選択肢に

食欲低下・嚥下機能の低下・調理が難しい場合は、食事だけで必要な鉄を摂ることが困難なことがあります。そのような場合は、鉄分強化飲料・ヘム鉄サプリメントの補助的活用が有効な場合があります。ただし、サプリメントの過剰摂取や、貧血の種類によっては鉄の補充が不適切なケース(炎症性貧血など)もあるため、必ず医師・管理栄養士に相談の上で使用することが重要です。

8. よくある質問(Q&A)

Q1. 健康診断で「貧血気味」と言われたのに症状がありません。放置してもいいですか?

貧血はゆっくり進行することが多く、慣れてしまって自覚症状がない「隠れ貧血」の状態になっている場合があります。症状がないからといって放置するのはリスクがあります。特に高齢者では貧血がフレイル(虚弱)・筋力低下・転倒リスクと密接に関わっているため、軽度であっても原因の精査と対処が重要です。まずはかかりつけ医に相談し、貧血の種類と原因を確認しましょう。

Q2. 鉄分のサプリを飲んでいますが、なかなか貧血が改善しません。なぜですか?

貧血が改善しない理由はいくつか考えられます。①貧血の種類が「鉄欠乏性」でない可能性(炎症性・腎性・ビタミンB12欠乏など)、②消化管からの継続的な出血など鉄の喪失が続いている可能性、③タンパク質や葉酸・B12など補因子が不足している可能性、④吸収を阻害する飲食物(お茶・コーヒーなど)と一緒に摂っている可能性、などが挙げられます。3ヶ月以上改善しない場合は自己判断でのサプリ継続は避け、血液検査で原因を再評価することをおすすめします。

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9. まとめ

📝 この記事のまとめ

  • 貧血とはヘモグロビン(Hb)が低下した状態。酸素を全身へ運ぶ能力が落ちることが体力低下の根本原因
  • 貧血の約70%は鉄欠乏性貧血。ただし高齢者・入院患者は慢性疾患・術後・複合的な原因も多い
  • 貧血はリハビリの効果を妨げる。運動耐容能の低下・筋肉修復の停滞・意欲低下・転倒リスク増大などが主な影響
  • Hb値に応じてリハビリ内容を調整することが安全で効果的な回復への道
  • 鉄には「ヘム鉄(動物性・吸収率高)」と「非ヘム鉄(植物性・工夫で吸収率アップ)」がある
  • ビタミンC・タンパク質・葉酸・B12・銅もヘモグロビン合成に欠かせない
  • お茶・コーヒーの食事中過剰摂取など「鉄の吸収を妨げるもの」も把握しておくことが大切
  • 食欲がない高齢者・回復期の方は鉄分サプリ・医薬品も補助として有効。使用前は必ず専門家に相談を
  • 「なぜ回復しないのか」の答えの一つが血液データの中にある——貧血の視点を持つことが重要

リハビリを頑張っているのに体力が戻らない——そんなときは、「食事は足りているか」「血液の状態はどうか」という視点を持つことが大切です。貧血は適切な治療・栄養管理で改善できる状態です。心当たりのある方は、ぜひ一度かかりつけ医に血液検査を相談してみてください。

次回は栄養シリーズの続き、「#99 食欲不振の高齢者へ|栄養改善のための工夫」を予定しています。食べたくても食べられない方への実践的なアプローチを、現場目線でお届けします。

📚 参考文献

  1. 公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット「運動と貧血」https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/shippei-undou/undou-hinketsu.html
  2. 国立長寿医療研究センター「高齢者の貧血について~老人性貧血=”Unexplained Anemia”というのもあります~」https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/letter/047.html
  3. 彦根市立病院 血液内科「知って得する病気の話_貧血(鉄欠乏性貧血)のおはなし」https://www.municipal-hp.hikone.shiga.jp/0000000013.html
  4. STROKE LAB「【2026年版】検査値・血液データ・リハビリ必須項目は!?」https://www.stroke-lab.com/speciality/35360(2026年)
  5. STROKE LAB「貧血(ヘモグロビン低値)が持続すると、運動耐容能が低下しリハビリの継続時間・強度が制限されることが複数の研究で報告」同上
  6. Ogura A, et al. “Exercise Capacity in Patients with Cardiac and Renal Disease.” American Journal of Cardiology. 2023. doi: 10.1016/j.amjcard.2023.07.180 / 神戸大学ニュースサイト https://www.kobe-u.ac.jp/ja/news/article/2023_09_19_02/
  7. 日本造血・免疫細胞療法学会「リハビリテーション」Hb 7.5g/dL未満での対応 https://www.jstct.or.jp/modules/patient/index.php?content_id=51
  8. Syama(理学療法士)「若手へ向けた急性期リハビリにおける血液データの活用と運動負荷設定ガイド」note.com https://note.com/pt_syama/n/n0e7a0a2d41f7(2024)
  9. 神戸徳洲会病院 管理栄養士「貧血予防は食事から」https://www.kobetokushukai.org/news/detail.php?id=35
  10. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」鉄の推奨量 / 明治株式会社「貧血解消の強い味方!ビタミンCやタンパク質が鉄分の吸収率を上げる」https://www.meiji.co.jp/meiji-shokuiku/adult/column002/

【免責事項】本記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、特定の疾患の診断・治療を目的とするものではありません。貧血の種類・原因・重症度は個人により大きく異なり、自己判断での対処が適切でないケースもあります。「貧血かもしれない」と感じた場合は、必ずかかりつけ医・専門医への受診をお願いします。鉄剤・サプリメントは種類・量によっては副作用や他疾患との相互作用が生じる場合があるため、使用前は必ず医師・薬剤師にご相談ください。本記事の内容を実践される場合は自己責任のもとご判断いただき、体調に異変を感じた際は速やかに医療機関を受診してください。

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この記事を書いた人
理学療法士 18年目
とっち

回復期リハビリテーション病院勤務18年目の理学療法士。
・脳卒中認定理学療法士
・3学会合同呼吸療法認定士
査読付き論文投稿・学会発表経験を活かし、エビデンスに基づいた医療情報を一般の方にもわかりやすく発信しています。

「リハビリと身体のケアラボ」では、身体の痛み・リハビリ・介護保険・健康づくりをわかりやすく解説。より専門的な臨床・エビデンスの深掘りはnoteで発信しています。

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