✍️ この記事を書いた人
とっち|回復期リハビリテーション病院 勤務歴18年目の理学療法士
🏥 脳卒中認定理学療法士 / 3学会合同呼吸療法認定士
📝 学会発表・論文投稿経験あり|ブログ「リハビリと身体のケアラボ」運営
※本記事は医療・法律アドバイスではありません。詳細は各専門機関にご確認ください。
介護と仕事の両立|介護休業制度と職場への相談のコツ【2025年最新版】
「親が突然倒れた。でも仕事もある…どうすればいい?」
そんな状況に直面したとき、頼りになるのが介護休業制度です。しかし実際には「制度を知らなかった」「職場に言い出しにくかった」という理由で、年間約10万人もの方が介護離職しているといわれています。
この記事では、理学療法士として回復期病院で18年間、退院後の介護と仕事の両立に悩む患者さん・ご家族と向き合ってきた経験をもとに、介護休業・介護休暇の制度内容から、職場への上手な相談の仕方まで、わかりやすく解説します。
📋 目次
- 介護離職の現実|なぜ年10万人が仕事を辞めるのか
- 仕事と介護を両立するための法律(育児・介護休業法)
- 介護休業とは?93日・3回分割のしくみ
- 介護休暇とは?年5日の短期休暇制度
- 介護休業給付金|休業中の収入はどうなる?
- その他の両立支援制度一覧
- 2025年改正のポイント(最新情報)
- 職場への相談のコツ|言い出しにくいときの攻略法
- Q&A
- まとめ
🏥 現場からのエピソード
「もっと早く知っていれば、こんなに一人で抱え込まなかったのに……。」
退院後しばらくして、その言葉を聞いたとき、私は制度を伝えることも退院支援の大切な役割なのだと改めて感じました。
回復期病棟で退院支援をしていると、「介護は家族だけで何とかしなければならない」と思い込んでいる方に出会うことがあります。
以前担当したのは、脳卒中後に自宅退院が決まった70代の男性でした。
介護を担うことになったのは、仕事を続けながら実家へ通う50代の長男さんです。
退院前の面談では、
「会社に迷惑をかけたくないので、休みはできるだけ使いたくないんです。」
と話されていました。
そのため、有給休暇をやりくりしながら通院や手続き、介護の準備を一人で進めていましたが、日に日に疲れた表情になっていくのが気になっていました。
後日、改めてお話を伺うと、
「介護休業制度っていうものがあるなんて知りませんでした。」
と驚かれていました。
制度を知っていれば、仕事を辞めるか、有給休暇を使い切るかという二択ではなかったのです。
もちろん、介護休業制度を利用できるかどうかは勤務先の就業規則や雇用条件などによって異なります。
それでも、「利用できる制度があるかもしれない」と知っているだけで、選択肢は大きく広がります。
この経験以来、私は退院支援の場
1. 介護離職の現実|なぜ年10万人が仕事を辞めるのか
総務省の調査によると、介護や看護を理由に仕事を辞める人は年間約10万人にのぼります。その多くは40〜50代のビジネス経験豊富な中堅世代です。
⚠️ 介護離職が起きる主な原因
- 制度を知らずに「仕事か介護か」の二択だと思い込む
- 職場に相談できず、一人で抱え込む
- 介護の急変に有給休暇が尽きてしまう
- 職場の理解が得られないと思い込む(実際は相談すれば調整できる場合も多い)
しかし実は、法律で守られた制度がいくつも用意されています。まずは「使える制度がある」と知ることが出発点です。
2. 仕事と介護を両立するための法律(育児・介護休業法)
育児・介護休業法(正式名称:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)は、仕事と家庭生活の両立を支援するための法律です。
この法律に基づいて、以下の制度が労働者の権利として定められています。会社が拒否したり、取得を理由に解雇・減給することは違法です。
| 制度名 | 概要 | 給付金 |
|---|---|---|
| 介護休業 | 対象家族1人につき通算93日(最大3回分割) | あり(賃金の67%) |
| 介護休暇 | 年5日(家族2人以上は10日)、時間単位でもOK | 原則なし |
| 短時間勤務等 | 介護のための勤務時間短縮・フレックスなど | なし |
| 時間外労働の制限 | 請求により月24時間・年150時間まで制限 | なし |
| 深夜業の制限 | 請求により深夜勤務を制限できる | なし |
3. 介護休業とは?93日・3回分割のしくみ
✅ 介護休業の基本ルール
- 取得期間:対象家族1人につき通算93日まで
- 分割取得:最大3回に分けて取得可能
- 目的:介護体制(施設入所・ケアプラン整備など)を整えるための時間
- 対象者:雇用保険被保険者(正社員・パートなど雇用形態問わず)
- 給与:原則として無給(ただし給付金あり)
✅ 対象となる家族の範囲
配偶者(事実婚含む)・父母・子・配偶者の父母・祖父母・兄弟姉妹・孫が対象です。
✅ 「要介護状態」とは
介護保険の要介護認定とは異なります。育児・介護休業法上の「要介護状態」とは、負傷・疾病・障害により2週間以上にわたり常時介護が必要な状態をいいます。介護認定を受けていなくても対象になる場合があります。
✅ 93日を賢く使うには?
💡 3回分割の活用例
- 第1回目(30日):退院直後の付き添い・ケアプラン作成・施設見学などの「体制整備期間」
- 第2回目(30日):施設入所申請・サービス調整・家族内で役割分担を決める期間
- 第3回目(33日):容態変化・看取り期など突発的な状況への備え
※日数配分は自由に設定できます。長期を一気に使うより、分散させるほうが実用的です。
✅ 申請の方法
休業開始の2週間前までに書面(会社所定の申請書、または任意書式)で申し出ます。口頭申請も可能ですが、書面で残しておくと安心です。
4. 介護休暇とは?年5日の短期休暇制度
介護休暇は、介護休業より短い単位で使える日常的な急用対応のための休暇です。「病院への付き添い」「ケアマネとの打ち合わせ」など、数時間〜1日の用事に向いています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 取得日数 | 年5日(対象家族が2人以上の場合は年10日) |
| 取得単位 | 1日単位または時間単位(半日も可) |
| 申請タイミング | 当日の口頭申請も可(急な対応にも対応) |
| 給与 | 原則として無給(会社によっては有給扱いの場合も) |
| 給付金 | なし(介護休業と異なる点) |
⚠️ よくある誤解:「介護休暇は年3日」と思っている方がいますが、正しくは年5日(家族2人以上は10日)です。2021年改正で時間単位取得も可能になりました。
5. 介護休業給付金|休業中の収入はどうなる?
介護休業中は原則として給与が出ませんが、雇用保険から介護休業給付金が支給されます。
💰 介護休業給付金の概要
- 支給額:休業開始時の賃金の67%
- 上限額:1支給単位期間あたり約532,200円(2025年時点)
- 支給回数:同一対象家族につき最大3回・通算93日まで
- 課税:所得税・住民税は非課税
- 申請先:事業主経由でハローワークに申請
- 申請期限:休業終了日の翌日から2か月後の月末まで
- 支給タイミング:休業終了後に申請→決定後約1週間で振込(休業中は未支給)
✅ 計算例
| 月収 | 1か月あたりの受取額(概算) |
|---|---|
| 20万円 | 約134,000円 |
| 25万円 | 約167,500円 |
| 30万円 | 約201,000円 |
※実際の支給額は月の日数・日額計算により前後します。社会保険料は休業中も発生する点に注意。
⚠️ 注意:介護休業給付金は休業が終わってから申請・支給されます。休業中は収入ゼロになるため、事前に生活費の準備が必要です。社会保険料の支払いも継続するため、手持ち資金の確認を忘れずに。
6. その他の両立支援制度一覧
介護休業・介護休暇以外にも、働きながら介護を続けるための制度があります。
| 制度 | 内容 |
|---|---|
| 所定外労働の免除 | 介護期間中は残業を免除させることができる(介護が終わるまで継続可) |
| 時間外労働の制限 | 月24時間・年150時間を超える残業を制限(1回の申請で1年間有効) |
| 深夜業の制限 | 夜22時〜翌5時の深夜勤務を免除させることができる |
| 勤務時間短縮等の措置 | 短時間勤務・フレックスタイム・時差出勤・テレワークなどから選択(会社が措置義務を持つ) |
| テレワーク(努力義務) | 2025年10月改正より、介護期のテレワーク導入が会社の努力義務に |
7. 2025年改正のポイント(最新情報)
2024年5月に成立した改正育児・介護休業法のうち、介護関係は2025年4月1日より施行されています。主なポイントを整理します。
📌 2025年4月施行の改正ポイント
- 会社による個別周知・意向確認の義務化
従業員が「介護に直面した」と申し出た場合、会社は両立支援制度の情報を個別に伝え、利用意向を確認する義務が生じます。 - 40歳到達時などの早期情報提供義務化
介護に直面する前の段階(40歳等)で、会社が両立支援制度や介護保険制度について情報提供することが義務になります。 - 雇用環境整備の義務化
介護休業などの申し出が円滑に行われるよう、研修実施・相談窓口設置などのいずれかの措置を講じることが会社の義務になります。 - 介護休暇の取得要件緩和
従来は「勤続6か月未満」は労使協定により除外できましたが、この除外規定が廃止。入社直後でも介護休暇を取得できるようになります。 - 介護期テレワークの努力義務化
要介護状態の家族を介護する従業員がテレワークを選択できるよう、会社が措置を講ずることが努力義務になります。
つまり、「介護が必要になってから初めて知る」のではなく、会社が事前に制度を周知する仕組みに変わりました。これは働く方にとって大きな追い風です。
8. 職場への相談のコツ|言い出しにくいときの攻略法
「制度はわかった。でも職場に言い出せない…」という方へ、実践的なアドバイスをお伝えします。
🗣️ STEP1|まず「相談したい」と伝える
いきなり「介護休業を取ります」と宣言するより、まず「少し家族の状況についてご相談できますか」と打診する方がスムーズです。上司も受け取りやすくなります。
📋 STEP2|事実と制度を整理してから話す
相談前に整理しておくこと
- 家族の状態(要介護度・今後の見通し)
- 希望する休業の時期・期間(何日取りたいか)
- 仕事の引き継ぎ方の案(誰に何を頼むか)
- 「介護休業は育児・介護休業法で認められた権利である」という根拠
📝 STEP3|資料を印刷して持参する
厚生労働省のウェブサイト(「育児・介護休業法 特設サイト」)には、従業員向けリーフレットが無料で公開されています。A4数ページのものを印刷して面談時に持参すると、会話の前提が整い、上司も「会社として対応しなければならない」と認識しやすくなります。
🤝 STEP4|「職場への影響を最小化する提案」をセットにする
職場側が安心できる伝え方の例
「介護休業を○月○日〜○月○日の間取りたいと思っています。引き継ぎ資料は事前に作成しておきます。休業中は月に1回、状況報告の連絡を入れるようにします」
🚨 もし会社が拒否した場合は?
介護休業の取得は法律上の権利です。会社が不当に拒否したり、取得を理由に不利益な扱い(解雇・降格・減給)をすることは禁止されています。もし困った場合は以下の窓口に相談できます。
- 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室):育児・介護休業法の相談窓口
- 総合労働相談コーナー(各ハローワーク内):無料・予約不要
- 社会保険労務士:個別の交渉アドバイスを受けられる
9. よくある質問(Q&A)
❓ Q1. 介護休暇は年に何日取れますか?
介護休暇は年5日取得できます(対象家族が2人以上いる場合は年10日)。1日単位・時間単位どちらでも取得可能で、当日の口頭申請も認められています。「年3日」というのは誤りです。なお、介護休暇は給付金の対象外で原則無給ですが、会社によって有給扱いにしている場合もあります。
❓ Q2. 介護休業は転職したばかりの人でも取れますか?
介護休業については、引き続き雇用された期間が1年以上であることが原則的な取得要件です(有期雇用の場合はさらに条件あり)。一方、2025年4月の法改正により、介護休暇については「勤続6か月未満」を除外できる仕組みが廃止され、入社直後でも取得できるようになりました。詳細は会社の就業規則と合わせて確認してください。
10. まとめ
📌 この記事のポイント
- 介護休業は対象家族1人につき通算93日・最大3回分割取得できる
- 介護休暇は年5日(家族2人以上は10日)、時間単位でも取得可能
- 介護休業中は雇用保険から賃金の67%が給付金として支給される
- 給付金は休業終了後の申請で、終了から約1〜2か月で受け取れる
- 2025年4月改正で会社への個別周知・意向確認が義務化、休暇要件も緩和
- 職場への相談は「事実と制度の根拠」「引き継ぎ提案」をセットにするとスムーズ
- 会社が拒否した場合は労働局・ハローワークに相談できる
介護と仕事の両立は、一人で抱え込まないことが最大のポイントです。制度を知り、職場に相談し、ケアマネジャーや地域の支援窓口も活用しながら、「介護をしながら働き続けられる環境」を整えていきましょう。
まずは「会社に制度を確認する」「ケアマネに相談する」という小さな一歩から始めてみてください。
📖 参考文献・参考サイト
- 厚生労働省「育児・介護休業法 特設サイト」(2025年4月施行 法改正対応版)
- 厚生労働省「令和6年(2024年)育児・介護休業法改正の概要」
- ハローワーク「介護休業給付金 支給申請について」
- 総務省統計局「就業構造基本調査」(介護離職者数)
- 育児介護休業法第11条〜16条(介護休業・介護休暇に関する条文)
- 経済産業省「仕事と介護の両立支援に関する経済的損失試算」
⚠️ 免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法律相談・労務アドバイスではありません。介護休業制度の詳細・適用条件は会社の就業規則や最新の法令により異なります。個別の状況については、お勤めの会社の人事部門・都道府県労働局・社会保険労務士にご相談ください。また、制度の内容は法改正により変更されることがあります。最新情報は厚生労働省の公式サイトにてご確認ください。
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