👨⚕️ この記事を書いた人
とっち|回復期リハビリテーション病院 勤務18年目の理学療法士
🏅 脳卒中認定理学療法士 / 3学会合同呼吸療法認定士
学会発表・論文投稿経験あり。在宅復帰支援に長年携わり、退院調整・多職種連携のリアルを現場から発信。
ブログ:リハビリと身体のケアラボ
📝 はじめに|現場で感じたこと
正直に言うと、18年やってきて「連携」の難しさを一番実感したのは、比較的最近のことだったりします。
去年の秋、脳梗塞後の70代の女性が退院するタイミングで、訪問看護ステーションに申し送りをしたんですね。歩行自立まであと一歩、FIM(機能的自立度評価)※の移動項目は5点、でも屋外はまだ介助が必要な状態でした。「あとは在宅チームで仕上げてもらおう」と思っていたんです。
ところが2か月後の外来フォローで来た彼女、車椅子に乗っていて。聞いたら「リハビリの先生と看護師さんが言うことが違って、どっちを信じたらいいか分からなくなって……歩くのが怖くなった」って。あの表情、今でも頭に残ってます。
悪意はどこにもない。ただ、連携の”形”がなかっただけ。そのときから、チームの役割分担と情報共有の仕組みって、退院後の生活を左右するんだと本気で考えるようになりました。
※FIM(機能的自立度評価表):日常生活動作の自立度を18項目・7段階で評価するリハビリの標準的な指標
「退院後、訪問看護さんとリハビリの先生が来てくれているけど、それぞれ何をしてくれているの?」
「看護師さんとリハビリ担当の人って、ちゃんと情報共有されているの?」
在宅療養が始まると、自宅にさまざまな専門職が出入りするようになります。訪問看護師、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)、ケアマネジャー、かかりつけ医……。それぞれの役割が見えにくくて、家族として何を頼めばよいのか迷うことも多いですよね。
この記事では、訪問看護とリハビリ(理学療法士など)がどのように連携して在宅医療チームを形成しているのかを、回復期リハ病院で18年間退院支援に関わってきた理学療法士の視点からわかりやすく解説します。
📋 もくじ
🏥 在宅医療チームとは?関わる専門職の全体像
在宅医療とは、通院が困難な方の自宅に医療や介護の専門職が出向き、生活を支える仕組みです。複数の専門職が関わるため「チーム医療」と呼ばれます。

| 専門職 | 主な役割 | 訪問頻度の目安 |
|---|---|---|
| かかりつけ医(主治医) | 診断・治療方針・指示書の発行 | 月1〜2回の訪問診療など |
| 訪問看護師 | 医療処置・バイタル管理・生活支援 | 週1〜数回 |
| 理学療法士(PT) | 歩行・基本動作のリハビリ | 週1〜3回 |
| 作業療法士(OT) | 日常生活動作・認知機能のリハビリ | 週1〜3回 |
| 言語聴覚士(ST) | 言語・嚥下(飲み込み)のリハビリ | 週1〜2回 |
| ケアマネジャー | ケアプランの作成・サービス調整 | 月1〜2回の訪問 |
| 訪問介護員(ヘルパー) | 身体介護・生活援助 | 週複数回〜毎日 |
これだけ多くの専門職が関わるからこそ、「誰が何をしているのか」「情報はきちんと共有されているのか」が気になるのは当然です。次のセクションから、各職種の役割を詳しく見ていきましょう。
🩺 訪問看護の役割|医療的ケアと生活支援の要
訪問看護とは、看護師や准看護師が自宅を訪問し、医師の指示のもとで医療的なケアを提供するサービスです。介護保険・医療保険いずれかで利用でき、在宅療養の「医療面」を担う中心的な存在です。
訪問看護師の主な業務内容
🔍 病状観察・管理
血圧・体温・SpO₂(酸素飽和度)などのバイタルチェック。状態変化の早期発見と医師への報告。
💉 医療処置
点滴・インスリン注射・褥瘡(床ずれ)処置・尿道カテーテル交換・創傷管理など。
🛁 生活支援
入浴・清拭・排泄ケアの補助。医療的視点からの安全な生活支援。
👨👩👦 家族支援
介護方法の指導・相談対応。家族が安心して在宅介護を続けられるよう支える。
🚨 緊急対応
24時間対応体制の事業所も多く、急変時に迅速に対応。医師や救急との連絡窓口にもなる。
📋 多職種連携
ケアマネ・医師・リハビリ職と情報共有し、ケアの方向性を統一する役割を担う。
訪問看護師は、医師の「訪問看護指示書」に基づいてケアを行います。介護保険対象の方なら原則として介護保険が適用され、ケアマネジャーが作成したケアプランに組み込まれます。医師が専門性の高い医療ケアが必要と判断した場合は、医療保険での利用に切り替わることもあります。
🦵 リハビリ職(PT・OT・ST)の訪問看護での役割
訪問看護ステーションには、看護師だけでなく理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)も所属しており、「訪問看護の枠組みでリハビリを提供」することができます(訪問看護リハビリ)。これは「訪問リハビリ」(病院・老健からの派遣)とは別制度ですが、実際の内容は似ています。
① 理学療法士(PT)の役割
PTは「起きる・立つ・歩く」といった基本動作の回復・維持を専門とします。在宅での主な役割は以下のとおりです。
- ベッド上での寝返り・起き上がり練習
- 立位バランス・歩行訓練(屋内外を含む)
- 転倒予防のための筋力トレーニング指導
- 住環境の評価と手すり・段差解消の提案
- 自主トレーニングプログラムの指導(家族への説明を含む)
② 作業療法士(OT)の役割
OTは食事・更衣・入浴・トイレといった日常生活動作(ADL)や、趣味・社会参加などの応用動作を専門とします。
- 手の機能(細かい動作)の訓練
- 食事・整容・更衣・入浴動作の練習
- 認知機能の維持・改善を目的とした活動
- 福祉用具(自助具など)の選定・使い方指導
- 家族への介助方法の指導
③ 言語聴覚士(ST)の役割
STは「話す・聞く・飲み込む」に関する専門家です。脳卒中後の失語や嚥下障害(飲み込みの問題)がある方の在宅生活を強力にサポートします。
- 言語訓練・構音訓練(声や言葉の練習)
- 嚥下訓練と食事形態・とろみの指導
- コミュニケーションボードや機器の活用支援
- 家族への嚥下介助方法・誤嚥予防の指導
⚠️ PT・OT・ST、どれが来るか迷ったら?
必要な職種はケアマネジャーと主治医が判断します。「歩くのが不安」ならPT、「食事や着替えが難しい」ならOT、「飲み込みが心配・言葉が出にくい」ならST、というのが大まかな目安です。複数の職種が同時に関わることも珍しくありません。
🤝 看護師とリハビリ職の「連携」はどう行われるか
「看護師さんとリハビリの先生は別々に来ているけど、本当に情報が共有されているの?」これはご家族からよく聞かれる疑問です。実際の連携には、いくつかの方法があります。
📝 連携ノート(在宅ケア連絡帳)
在宅ケアでは、利用者の自宅に「連絡ノート」を置いておき、訪問した専門職が全員同じノートに記録を残す方法がよく使われます。前回の訪問内容・状態変化・次回への申し送り事項などが共有でき、ご家族も内容を確認できます。
📞 電話・ICTツールによる情報共有
急な状態変化があった際は、看護師がリハビリ職に電話連絡してリハビリの内容や頻度を相談します。近年はICT(情報通信技術)の活用も進み、スマートフォンアプリ等でリアルタイムに情報を共有する事業所も増えています。
🗓 サービス担当者会議(カンファレンス)
ケアプランの作成・見直し時に、ケアマネジャーが主催して関わる専門職が一堂に会する「サービス担当者会議」が開かれます。ここで全職種のケア方針が統一され、それぞれの役割分担が明確になります。ご家族や本人も参加するのが基本です。
✅ 連携がうまく機能しているときのサイン
- 「看護師さんもリハビリの先生も同じことを言ってくれる」と感じる
- 連絡ノートが毎回しっかり記録されている
- 誰に聞いても「今の目標・状態」について一貫した答えが返ってくる
- 状態変化時に早めに担当者から連絡が来る
看護師がリハビリを提供することもある
訪問看護ステーションのリハビリ職が実施する訪問について、2024年度の介護報酬改定では「理学療法士等による訪問には、月1回以上は看護師による訪問を組み合わせること」という要件が強化されました。これは、看護とリハビリを切り離さず一体的に提供することで、医療的な安全と機能回復を両立させるための方針です。
🏛 ケアマネジャーと医師はチームの柱
主治医(かかりつけ医)
主治医は在宅医療チームの医療的な「指揮官」です。訪問看護やリハビリが始まるには医師の「訪問看護指示書」が必要であり、すべてのケアは医師の指示に基づきます。また、月1〜2回の訪問診療で直接利用者の状態を確認し、薬の調整や病状の評価を行います。
ケアマネジャー(介護支援専門員)
ケアマネジャーは、医療と介護のサービスを「組み合わせてコーディネートする」専門職です。利用者の状態・ニーズ・希望を把握してケアプランを作成し、訪問看護・訪問リハビリ・訪問介護などを組み合わせます。チーム全体の窓口として、専門職間の調整役も担います。
💬 ケアマネジャーへの相談は積極的に
「リハビリをもっと増やしてほしい」「看護師さんが来る曜日を変えたい」「入浴の日を増やしてほしい」——こういった要望は、ケアマネジャーに相談するのが一番の近道です。ケアマネジャーは月1〜2回の訪問モニタリングでも状況を確認しています。気軽に相談してください。
👨👩👧 在宅医療チームに家族はどう関わるか
ご家族は「チームの一員」として、在宅療養を支える重要な存在です。専門職に任せっきりではなく、以下のような関わり方をすることでケアの質が大きく向上します。
- 📖 連絡ノートを読む・書く:専門職のコメントを確認し、気になること・変化があれば記入する
- 🗣 訪問時に同席する:リハビリや看護の内容を見て、自主トレの方法を覚える
- 📊 日々の状態を記録する:食事量・水分量・排泄・体重など、専門職が知りたい情報を記録しておく
- 🏠 住環境の整備に協力する:PTやOTが指摘した危険箇所(段差・床の物など)を早めに対処する
- 🤔 疑問はためらわず伝える:「これってどういう意味ですか?」「もっとこうしてほしい」を専門職に伝える
🔑 家族が「情報の橋渡し役」になれる
看護師とリハビリ職が来る曜日・時間が違うことは多いです。「昨日のリハビリで〇〇ができるようになった」「今朝、少し熱があった」といった情報を、次の訪問者に伝えてあげることで連携がよりスムーズになります。ご家族の一言が、ケアの質を上げる大切な情報源になるのです。
📖 現場エピソード|連携がうまくいったケース・困ったケース
私がリハビリ病棟で退院支援を担当していると、退院後に在宅チームの連携がうまくいっているケースとそうでないケースがはっきり分かれることがあります。
✅ うまくいったケース
脳卒中後の70代男性が退院した際、訪問看護ステーションに看護師とPTの両方が所属しており、週2回の看護訪問と週2回のリハビリ訪問を組み合わせた事例がありました。退院前カンファレンスで病棟PTと訪問PTが直接情報共有を行い、「現在の歩行の状態・自主トレ内容・転倒リスクの高い場面」を引き継ぎました。ご家族も訪問に同席し、自主トレの方法を動画で撮影して練習を継続。退院後3か月で、独歩(一人歩き)で近所のスーパーに行けるようになりました。
うまくいった理由は「情報の一元化」と「目標の共有」でした。チーム全員が同じゴール(「スーパーに歩いて行ける」)を持ち、連絡ノートとカンファレンスで状態を共有し続けたことが大きかったです。
⚠️ 困ったケース
一方で、訪問看護とリハビリが別々の事業所から入り、情報共有の場が月1回のサービス担当者会議しかなかったケースでは、「看護師は安全重視で車椅子移動を勧めていたが、PTは歩行練習を積極的に進めていた」というズレが生じ、ご家族が混乱してしまったことがありました。
このように、事業所が異なると連携の質に差が出ることがあります。気になる場合はケアマネジャーに「チーム間の連絡をもっとこまめにしてほしい」と伝えるのが有効です。
❓ Q&A よくある疑問
📌 まとめ
訪問看護とリハビリの連携|ポイントまとめ
- 在宅医療チームは、医師・訪問看護師・リハビリ職・ケアマネジャー・介護職などで構成される
- 訪問看護師は医療処置・バイタル管理・生活支援の「医療面の要」を担う
- PT・OT・STはそれぞれの専門領域(歩行・日常生活・言語嚥下)のリハビリを担当する
- 連携ノート・電話・カンファレンスで情報共有が行われ、ケアの方向性が統一される
- 2024年度改定でリハビリ職訪問には月1回以上の看護師訪問が義務化され、連携強化が進んでいる
- ご家族も「チームの一員」として、状態変化の記録・伝達・疑問の発信が重要な役割を持つ
在宅での療養生活がうまくいくかどうかは、多職種チームの連携の質にかかっています。専門職に任せきりではなく、ご家族も「チームの一員」として積極的に関わることで、より安全で質の高い在宅生活が実現します。わからないことはどんどんケアマネジャーや各専門職に聞いてみてください。
📚 参考文献
- 厚生労働省「在宅医療・介護連携における訪問看護ステーションの効果的な連携に関するハンドブック(令和6年度老人保健事業推進費等補助金)」2024年
- 厚生労働省「2024年度介護報酬改定の概要」
- 公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット「訪問リハビリテーションとは」
- 保健師助産師看護師法(昭和23年法律第203号)
- 介護保険法「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」
- 全国訪問看護事業協会「訪問看護リハビリのルール徹底理解と協業体制の極意(2024年度改定対応)」
【免責事項】本記事は、一般的な医療・介護に関する情報提供を目的としており、個別の診断・治療・ケアプランの推奨を行うものではありません。在宅サービスの利用や医療上の判断については、必ず担当の医師・ケアマネジャー・各専門職にご相談ください。情報は記事作成時点のものであり、制度改正等により変更される場合があります。
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