✍️ この記事を書いた人
とっち|理学療法士(PT)/回復期リハビリテーション病院勤務18年目
脳卒中認定理学療法士 / 3学会合同呼吸療法認定士
学会発表・論文投稿経験あり|ブログ「リハビリと身体のケアラボ」運営
退院後の在宅リハビリ支援・退院前カンファレンスに日々携わっています。
「退院後もリハビリを続けたいけど、病院に通うのが大変…」
「自宅でリハビリってできるの?」
そんな疑問を持つ方やご家族に向けて、この記事では訪問リハビリテーション(訪問リハ)について、理学療法士の立場からわかりやすく解説します。
対象者・サービス内容・費用・利用の流れはもちろん、通所リハ(デイケア)との違いや、知っておきたい医療保険との併用ルールまで、現場経験をもとに丁寧にお伝えします。
📋 目次
- 訪問リハビリテーションとは?
- 対象者と利用条件
- 訪問リハビリでできること・サービス内容
- 利用の流れ(申請〜開始まで)
- 費用・料金の目安
- 訪問リハと通所リハ(デイケア)の違い
- 医療保険のリハビリとの併用問題【重要】
- 訪問看護のリハビリとの違い
- 現場エピソード:退院後に在宅リハを始めたAさんの例
- 訪問リハビリのメリット・注意点
- よくある質問(Q&A)
- 自宅でのリハビリに役立つグッズ紹介
- まとめ
1. 訪問リハビリテーションとは?

訪問リハビリテーションとは、病院・診療所・介護老人保健施設(老健)などに所属するリハビリ専門職(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)が自宅を訪問して行うリハビリサービスです。
介護保険法で定められた「居宅サービス」のひとつであり、要介護・要支援認定を受けた方が自宅でリハビリを受けることができます。
💡 訪問リハビリの基本
- 対象:要介護1〜5、要支援1〜2の方
- 派遣元:病院・診療所・老健など
- 訪問者:PT(理学療法士)・OT(作業療法士)・ST(言語聴覚士)
- 目的:心身機能の維持・回復と日常生活の自立支援
2. 対象者と利用条件
介護保険で利用できる方
- 要介護1〜5の認定を受けた方 → 「訪問リハビリテーション」
- 要支援1〜2の認定を受けた方 → 「介護予防訪問リハビリテーション」
- 40〜64歳で16の特定疾病(脳卒中・関節リウマチ・パーキンソン病など)により要介護認定された方
- 主治医がリハビリを必要と判断した方
医療保険で利用できる方
介護保険が使えない場合(要介護認定を受けていない方など)は、医療保険での訪問リハビリが利用できる場合があります。
- 40歳未満の方
- 40〜64歳で特定疾病に該当しない方
- 65歳以上で要介護認定を受けていない方
- 要介護者でも急性増悪(状態が急に悪化した場合)は医療保険対応になる場合あり
⚠️ ポイント
介護保険と医療保険は原則として同一の目的で併用することができません。要介護認定を受けている方は介護保険が優先されます。詳しくは後述します。
3. 訪問リハビリでできること・サービス内容
訪問リハビリのサービス内容は、利用者の状態や生活目標に合わせて個別に設定されます。主な内容を以下に示します。
🏃 運動・機能訓練
- 筋力トレーニング(立ち上がり・歩行・階段昇降など)
- 関節可動域訓練(拘縮予防・改善)
- バランス訓練・転倒予防
- 歩行訓練(自宅内〜屋外)
- 呼吸訓練・体力向上
🍽️ 日常生活動作(ADL)訓練
- 食事・着替え・入浴・トイレなどの動作練習
- 起き上がり・立ち上がり動作の改善
- 調理・掃除などの家事動作訓練(OTが担うことが多い)
- 自宅の環境に合わせた動作指導
🗣️ 言語・嚥下訓練(STが担う)
- 言語障害(失語症・構音障害)のリハビリ
- 嚥下(飲み込み)訓練・食形態の指導
- 認知機能へのアプローチ
🏠 住環境・自主トレ指導
- 自宅の危険箇所の確認・手すり設置などの提案
- 福祉用具(杖・歩行器・車椅子など)の選定・使用指導
- 家族への介助方法の指導
- 訪問と訪問の間にできる自主トレーニングの指導
✅ 訪問リハの強み
訪問リハの最大の強みは「実際の生活空間でリハビリができること」です。自宅の段差・廊下の幅・トイレの位置など、その方の生活環境に合わせたリハビリが提供できます。施設では再現できない「生活に直結したリハビリ」が可能です。
4. 利用の流れ(申請〜開始まで)
要介護認定の申請(市区町村窓口またはケアマネに相談)
まだ要介護認定を受けていない場合は、市区町村の窓口またはかかりつけの病院の相談窓口で申請します。
ケアマネジャーへの相談
担当のケアマネジャーに「訪問リハビリを使いたい」と伝えます。ケアマネがケアプランに組み込みます。
主治医の指示書を取得
訪問リハビリには主治医による「訪問リハビリ指示書」が必要です。かかりつけ医に依頼します。
訪問リハビリ事業所との契約・初回評価
担当のリハビリ職員が自宅を訪問し、身体機能・生活状況を評価してリハビリ計画(リハビリテーション計画書)を作成します。
訪問リハビリ開始
週のスケジュールに沿って訪問が開始されます。定期的に状態を評価しながら、計画を見直していきます。
📌 入院中の方へ:退院前カンファレンスで訪問リハ事業所と連携することで、退院直後からスムーズにリハビリを継続できます。入院中から担当ケアマネや退院支援担当者に相談しておくと良いでしょう。
5. 費用・料金の目安
利用回数の上限
訪問リハビリは1回20分を1単位として、週6単位(週3回×40分、または週6回×20分)まで利用できます。
- 1回20分 → 週6回まで
- 1回40分 → 週3回まで
- 末期がんの方など特例を除き、上記が上限です
費用の目安(2024年6月改定後・自己負担1割の場合)
| 1回あたりの時間 | 基本単位数(1回) | 自己負担目安(1割) |
|---|---|---|
| 20分 | 307単位 | 約307円 |
| 40分 | 614単位 | 約614円 |
| 60分 | 921単位 | 約921円 |
※ 1単位=約10円(地域により異なる)。上記は基本報酬の目安です。リハビリマネジメント加算・退院時共同指導加算など各種加算により実際の費用は変わります。自己負担2割・3割の方は2〜3倍になります。必ず担当ケアマネに確認してください。
💰 ケアプランの支給限度額に注意
訪問リハビリの費用は要介護度ごとの区分支給限度基準額(月額上限)の中から使います。他のサービス(ヘルパーや通所など)との兼ね合いもあるため、ケアマネジャーと相談しながら計画を立てましょう。
6. 訪問リハと通所リハ(デイケア)の違い
「訪問リハ」と「通所リハ(デイケア)」は、どちらもリハビリ専門職が関わるサービスですが、場所・目的・内容・費用などが大きく異なります。
| 比較項目 | 訪問リハビリ | 通所リハ(デイケア) |
|---|---|---|
| 実施場所 | 利用者の自宅 | 施設・病院などの通所先 |
| 担当者 | PT・OT・ST(1対1) | PT・OT・ST(集団+個別) |
| リハビリの特徴 | 生活環境に合わせた個別訓練 | 機器を使った訓練・集団体操 |
| 社会参加・交流 | 少ない(個別対応) | 豊富(他利用者との交流あり) |
| 外出困難な方 | ◎ 外出不要 | △ 施設への移動が必要 |
| 入浴・食事サービス | なし | あり(施設による) |
| 向いている方 | 外出が難しい方、自宅環境での訓練が必要な方 | 社会参加・外出機会を確保したい方 |
どちらが良いかは利用者の身体状況・生活目標・介護者の状況によって異なります。「外出が体力的に難しい」「自宅の中での動作を改善したい」という場合は訪問リハが向いており、「外の空気を吸わせたい」「社会参加の機会を増やしたい」という場合は通所リハが適していることが多いです。
また、訪問リハと通所リハを組み合わせて利用することも可能です(ケアプランの支給限度額の範囲内で)。ケアマネジャーに相談しながら、最適なプランを検討しましょう。
7. 医療保険のリハビリとの併用問題【重要】
これは多くの方が混乱しやすいポイントなので、ここで丁寧に解説します。
原則:同一疾患では医療・介護のリハは併用できない
🚫 重要ルール(厚生労働省通知)
要介護・要支援の認定を受けている方が、同一の疾患(例:脳梗塞の後遺症)について、医療保険の疾患別リハビリテーション(脳血管疾患等リハ、運動器リハなど)と介護保険の訪問リハ・通所リハを同時に受けることは原則としてできません。
介護保険のリハビリ利用を開始した翌月以降は、原則として同一疾患の医療保険リハ(外来リハ)は算定できなくなります。
例外:医療・介護のリハが併用できるケース
- 急性増悪(状態が急激に悪化して入院・手術が必要になった場合)
- 介護保険リハとは別の疾患・目的でのリハビリ
- 移行期の一定期間(実施施設が異なる場合に限り、暫定的な同時算定が認められることがある)
なぜこのルールができたのか
2019年4月より、維持期・生活期リハビリの医療保険給付から介護保険給付への完全移行が実施されました。それ以前は要介護者でも医療保険で外来リハを長期受けることができましたが、「リハビリ難民」問題や保険財政の観点から、生活期リハビリは介護保険で一本化されることになりました。
📌 実務上のポイント
「病院の外来リハを続けながら、介護保険の訪問リハも受けたい」というご要望をよく聞きますが、同一疾患では原則として不可です。ただし、ケアマネ・主治医・リハビリ担当者で連携すれば移行をスムーズに行うことは可能です。状況に応じて専門家に相談してください。
8. 訪問看護のリハビリとの違い
「訪問看護ステーションからのリハビリ」と「訪問リハビリ」は、似ていますが制度上の位置づけが異なります。
| 項目 | 訪問リハビリテーション | 訪問看護(PT・OT・ST派遣) |
|---|---|---|
| 根拠サービス | 訪問リハビリテーション費 | 訪問看護費(PT等派遣) |
| 派遣元 | 病院・診療所・老健 | 訪問看護ステーション |
| リハ時間の上限 | 週6単位(20分×6) | 週3回まで(2024年改定で制限あり) |
| 指示書 | 訪問リハビリ指示書 | 訪問看護指示書 |
| 2024年改定の変化 | 基本報酬が微増(+1単位) | 週3回超のリハビリ訪問に減算新設 |
2024年度の介護報酬改定では、訪問看護ステーションからのリハビリ訪問(PT等派遣)について、週3回を超える場合の減算が新設されました。訪問リハと訪問看護のリハをどう組み合わせるかは、専門家に相談するのが安心です。
9. 現場エピソード:退院後に訪問リハを始めたAさんの例
🏥 実際の現場から
「家では、病院とは全然違う課題がありました。」
退院からしばらくして、訪問リハビリを担当した理学療法士からいただいた言葉です。
回復期病棟で担当した70代の男性患者さん。脳梗塞による左片麻痺があり、リハビリを重ねて自宅退院が決まりました。
病棟内では歩行器を使って移動できるようになっていましたが、屋外歩行にはまだ不安が残り、ご本人もご家族も「家で本当に生活できるだろうか」と心配されていました。
退院前カンファレンスでは、訪問リハビリを担当する理学療法士にも参加していただき、身体機能だけでなく、「どんなことに不安を感じているか」「退院後に目指したい生活は何か」といった情報まで共有しました。
退院後すぐに週2回の訪問リハビリが始まり、実際の自宅を確認すると、玄関の段差や廊下の狭さなど、病院では気づけなかった課題がいくつも見つかったそうです。
訪問理学療法士は生活動線を確認しながら手すりの位置や動作方法を提案し、ご本人と一緒に「家でできる動き」を繰り返し練習してくださいました。
数か月後には、自宅内を伝い歩きに頼らず移動できる場面が増え、ご本人からは、
「病院で練習したことが、家でやっと生活につながりました。」
という言葉を伺いました。
その話を聞いたとき、私は改めて感じました。
回復期病棟でのリハビリは、退院で終わるものではありません。
病院で身につけた力を、自宅での生活へつなげてくれる人がいるからこそ、本当の意味での「退院」が完成するのだと思います。
私は退院支援をするとき、「どこまで回復したか」だけではなく、「退院後に誰へ、何を引き継ぐか」を以前より意識するようになりました。
回復期病棟と訪問リハビリは、別々のサービスではありません。
患者さんの生活を支える、一つのリハビリのバトンなのだと、この患者さんを通して改めて実感しました。
※プライバシー保護のため、症例内容は一部変更・再構成しています。
10. 訪問リハビリのメリット・注意点
✅ メリット
- 外出しなくてよい(体力消耗が少ない)
- 実際の生活環境でリハビリできる
- 家族も同席・指導を受けられる
- 自宅の環境整備・住宅改修の提案もできる
- マンツーマンで個別性が高い
- 天候に左右されない
⚠️ 注意点
- 週の回数上限がある(週6単位まで)
- 訓練機器などの設備がない
- 社会交流の機会が少ない
- ケアプランの限度額を消費する
- 医療保険の外来リハと原則併用不可
- 主治医の指示書が必要(月1回更新が必要な場合も)
11. よくある質問(Q&A)
❓ Q1. 訪問リハビリは何歳から使えますか?
A. 介護保険を使う場合、原則として65歳以上(要介護・要支援認定を受けた方)が対象です。40〜64歳の方でも、脳梗塞・パーキンソン病などの特定疾病による要介護認定を受けていれば利用できます。それ以外の方は医療保険での訪問リハビリが適用されることがあります。
❓ Q2. 整形外科に通いながら訪問リハビリは受けられますか?
A. 整形外科への「通院」は問題ありません。ただし、整形外科で医療保険の疾患別リハビリテーション(外来リハビリ)を同時に受けることは、同一疾患であれば原則として不可です。外来リハを行う整形外科と訪問リハビリは、同一疾患に対しては原則として一方を選ぶ必要があります。診察だけであれば問題ありません。必ず主治医・ケアマネジャーに確認してください。
13. まとめ
📌 この記事のまとめ
- 訪問リハビリはPT・OT・STが自宅を訪問して行う介護保険サービス
- 対象は要介護1〜5・要支援1〜2の方(条件により医療保険も可)
- 内容は筋力訓練・ADL訓練・住環境整備・自主トレ指導など多岐にわたる
- 利用回数の上限は1回20分・週6単位
- 通所リハ(デイケア)との最大の違いは「自宅で行う点」と「生活環境に合わせた訓練」
- 同一疾患での医療保険リハと介護保険リハの併用は原則不可(重要!)
- 利用開始にはケアマネジャーへの相談+主治医の指示書が必要
訪問リハビリは「家で生活するための力を取り戻す」ための、とても有効なサービスです。退院後や体力低下が続いている方、「外出が難しくてリハビリが途絶えている」という方は、ぜひ一度ケアマネジャーや主治医に相談してみてください。
📚 参考文献・情報源
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」(2024年)
- 厚生労働省「老老発0327第1号 保医発0327第8号」(令和6年3月27日)要介護被保険者等に対するリハビリテーションに関する通知
- 厚生労働省「介護報酬の算定構造(R6.6.1)」第239回社会保障審議会介護給付費分科会資料
- 公益社団法人 日本理学療法士協会「訪問リハビリテーションの現状と課題」(2023年)
- 厚生労働省「介護保険サービス情報公表システム」訪問リハビリテーションのサービス内容
- 介護健康福祉のお役立ち通信「訪問リハビリテーション費 単位数一覧(2024年6月改定後)」
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の医療行為・診断・治療を推奨するものではありません。訪問リハビリの利用条件・費用・サービス内容は、お住まいの地域・要介護度・事業所によって異なります。具体的な利用については、主治医・担当ケアマネジャー・訪問リハビリ事業所に必ずご相談ください。本記事の情報は2024年6月時点の制度に基づいています。最新の情報は厚生労働省や各自治体の窓口でご確認ください。
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