介護保険外サービスとは?保険では賄えない部分の対策を理学療法士が解説

回復期リハビリの仕事

✍️ この記事を書いた人

とっち|回復期リハビリテーション病院勤務18年目の理学療法士。脳卒中認定理学療法士・3学会合同呼吸療法認定士。学会発表・論文投稿の経験あり。在宅復帰に向けた退院支援・家族指導を日々担当。ブログ「リハビリと身体のケアラボ」を運営。

📝 はじめに:現場での話

この仕事を18年やっていて、正直に言うと「訪問リハのすごさ」を実感したのは、わりと最近のことなんです。

3年前の秋、私が担当した70代の脳梗塞後の患者さん(左片麻痺・要介護3)が退院されました。病棟では週5回リハをやっていて、退院時の歩行はT字杖で20mほど。「まあまあいける」と思っていたんです。ところが退院から2週間後、訪問リハに引き継いだ担当PTから連絡が来て——「玄関の段差が18センチあって、練習した動作がほぼ使えない状態です」と。

頭をガツンとやられた感覚でした。病棟の廊下で20m歩けても、自宅の玄関を一人で越えられないなら意味がない。その方は後日、「退院してから一人でトイレ行けるようになって、やっと家に帰ってきた気がします」とおっしゃっていたそうで。

訪問リハって、「生活を作る」リハビリなんだと、そこで腑に落ちました。

🗣️ 現場からの一言

正直に言うと、18年この仕事をしていても「介護保険って思ったよりカバーできないんだな」と実感したのは、わりと最近のことなんです。

去年の秋、脳卒中後のリハビリを経て在宅復帰した70代の男性がいました。週3回のデイケアと、週1回の訪問リハビリを組み合わせた計画で、退院時はかなり手厚いプランのつもりでいた。でも1ヶ月後の家族面談で、奥さんが絞り出すように言ったんです。「週4日は来てもらえるんですけど、残りの3日間が……怖くて」って。

週3日間、誰のサポートもない時間がある。当然なんです、保険内では限度がある。でもその3日間に転倒したらどうする?急変したら?ご家族の不安は当然で、そしてその視点が自分には足りていなかった。「リハビリの内容」ばかり考えていて、「保険の外」を提案できていなかった。

保険外サービスを知っておくことは、患者さんだけじゃなく、家族の「3日間」を守ることでもある——そう気づいてから、退院前の説明がずいぶん変わりました。

「介護保険でカバーできないと言われた」「もっとサポートしてほしいのに、サービスの時間が足りない」——介護をしていると、こんな場面に必ずぶつかります。

実は、介護保険が対応できない生活ニーズは非常に多く、保険外のサービスをうまく組み合わせることが在宅生活を長く続けるカギになります。この記事では、介護保険外サービスの種類・費用・選び方を現場の視点から詳しく解説します。

📋 目次

  1. 介護保険外サービスとは?基本の仕組みをわかりやすく
  2. 介護保険では「できないこと」一覧
  3. 介護保険外サービスの種類と費用の目安
  4. サービスを提供している主な機関
  5. 混合介護とは?保険内外の組み合わせ方
  6. 上手に活用するための選び方のポイント
  7. 現場エピソード|保険外サービスが在宅継続を救った事例
  8. Q&A
  9. まとめ

1. 介護保険外サービスとは?基本の仕組みをわかりやすく

介護保険外サービス(自費サービス)とは、介護保険制度の給付対象ではないものの、高齢者や家族の生活ニーズに応えるために提供されるサービスの総称です。

介護保険サービスは、要支援・要介護認定を受けた方が利用できる制度です。しかし、サービスの内容・時間・対象範囲には細かなルールが定められており、すべての生活ニーズには対応しきれません。

⚠️ 介護保険外サービスの基本的な特徴

  • 誰でも利用できる(要介護認定が不要なものが多い)
  • 費用は全額自己負担(介護保険給付の適用なし)
  • 料金は事業者が自由に設定できる
  • サービス内容・時間の制限が少ない(柔軟な対応が可能)

2024年の財政制度等審議会や骨太方針でも「介護保険外サービスの利用促進」が明記されるなど、国としても保険外サービスの拡充を重要課題として位置づけています。

2. 介護保険では「できないこと」一覧

まず、介護保険の訪問介護でよく起こる「断られるケース」を整理しておきましょう。

カテゴリ 介護保険外(対応不可)の例
家事援助 同居家族の分の調理・洗濯、庭の草むしり、ペットの世話、大掃除
外出支援 冠婚葬祭への付き添い、趣味・レジャーの外出介助、入退院の付き添い・院内介助
身体介護 介護保険限度額超過後の追加介助、宿泊を伴うケア(お泊まりデイは保険外)
リハビリ 保険の時間では足りない場合の追加リハビリ、認定なし・要支援レベルでの専門リハビリ
見守り 夜間の安否確認、遠距離家族向け見守りシステム
美容・QOL 訪問理美容、ネイルケア、趣味活動・旅行支援

「こんな基本的なことも断られるの?」と思うかもしれませんが、これが現実です。在宅生活を支えるためには、保険サービスだけでは限界があるということをまず知っておくことが大切です。

3. 介護保険外サービスの種類と費用の目安

① 生活支援・家事代行サービス

介護保険の生活援助では対応できない、同居家族の洗濯・調理、庭仕事、ペットの世話、大掃除などを担うサービスです。

💴 費用の目安:1時間あたり 1,500〜4,000円程度(シルバー人材センターは比較的安価、民間業者はやや高め)

  • 掃除・洗濯・調理・買い物代行
  • 外出の付き添い(病院以外の買い物、散歩など)
  • 話し相手・見守り的な生活支援

利用できる主な機関:シルバー人材センター、社会福祉協議会、民間家事代行業者など

② 外出支援・移送サービス

介護保険では対応できない外出——冠婚葬祭、趣味・レジャー、入退院時の院内介助など——に同行・介助するサービスです。車いすでの外出や、経管栄養中の方の外出支援を専門とする事業者もあります。

💴 費用の目安:30分 2,000円〜(付き添いスタッフの職種により変動。看護師が対応する場合はさらに高額)

③ 自費リハビリサービス

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などのリハビリ専門職が自宅や施設を訪問し、施術・トレーニング・動作指導などを行うサービスです。

介護認定がなくても利用でき、保険内のリハビリでは物足りない方、もっと集中的にリハビリしたい方にも向いています。

💴 費用の目安:60分 6,000〜12,000円程度(事業者・内容により幅あり)

  • 訪問型の自費リハビリ(自宅に専門職が来てくれる)
  • 自費リハビリ施設への通所(マンツーマン指導)
  • オンラインリハビリ相談・指導

④ 見守り・安否確認サービス

一人暮らしの高齢者や、遠距離に住む家族にとって非常に需要が高いサービスです。

💴 費用の目安:月額 500〜3,000円程度(機器・プランによって異なる)

  • センサー型:室内にセンサーを設置し、動きがない場合にアプリや家族へ通知
  • GPS型:小型機器を持ち歩いてもらい、現在地をスマホで確認(認知症の方の外出見守りに有効)
  • カメラ型:室内の映像をスマホで確認できる
  • 配達型:食事・牛乳・新聞の配達に合わせて安否確認
  • 電話・訪問型:定期的に電話や訪問で安否確認をする人的サービス

⑤ 訪問理美容サービス

外出が困難な高齢者のもとに美容師・理容師が訪問し、カット・カラーなどを行うサービスです。身だしなみを整えることは、QOL(生活の質)や気力・自信の維持に直結します。現場でも「髪を切ってもらってから表情が明るくなった」という場面を何度も目にしてきました。

💴 費用の目安:施術代 3,000〜6,000円 + 交通費

⑥ 夜間・宿泊サービス(お泊まりデイ)

通所介護(デイサービス)を利用した後、そのまま施設に宿泊できる「お泊まりデイサービス」は保険外サービスです。家族の介護休暇・緊急時の対応として活用されています。

💴 費用の目安:1泊 2,000〜4,000円程度(施設により異なる)

⑦ 配食・食事宅配サービス

調理が難しくなった高齢者への食事提供サービスです。介護保険の生活援助では「一緒に食事を作る」支援が基本ですが、宅配型は完全に調理済みのものを届けてくれます。栄養管理・安否確認が同時にできる点も魅力です。

💴 費用の目安:1食 500〜800円程度

⑧ 自治体独自の保険外サービス

全国の市区町村が独自に実施している介護保険外の在宅サービスがあります。サービスの種類・料金・利用条件は各自治体によって異なるため、地域包括支援センターや市区町村の窓口に問い合わせるのが一番確実です。

🏛️ 自治体独自サービスの例

  • 緊急通報システムの設置・貸与
  • 訪問給食サービス(安否確認付き)
  • 外出支援・移動サービス
  • 地域ボランティアによる生活支援
  • 認知症家族への相談支援

4. サービスを提供している主な機関

提供機関 特徴・向いている人
介護サービス事業者 顔なじみのスタッフが担当。保険サービスと一体的に利用しやすい
シルバー人材センター 比較的安価。家事支援・外出付き添いなどが中心
社会福祉協議会 地域密着型。ボランティアを活用したサービスもあり、低コストで利用できる場合が多い
民間企業(家事代行・自費リハビリなど) サービスの幅が広く、スピーディーに利用開始できる。費用はやや高め
NPO・ボランティア団体 地域の見守り・生活支援を担う。費用が非常に安いか無料の場合も
市区町村(自治体独自) 地域によりサービス内容が大きく異なる。地域包括支援センターへの相談がスタートライン

5. 混合介護とは?保険内外の組み合わせ方

混合介護とは、介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供することを指します。

原則として、同じ時間帯に介護保険サービスと保険外サービスを並行して受けることはできません。ただし、介護保険サービスの前後に保険外サービスを利用する形であれば可能です。たとえば、午前中にデイサービス(保険内)を利用し、夕方に家事代行(保険外)を入れるといったイメージです。

📌 注目:東京都豊島区の「選択的介護」

一部の自治体では、利用者保護に配慮しながら介護保険サービスと保険外サービスを適切に組み合わせる「選択的介護」を試験的に導入しています。豊島区はその代表例で、混合介護の弾力化に取り組んでいます。今後、こうした動きが全国に広がる可能性があります。

6. 上手に活用するための選び方のポイント

① まずケアマネージャーに相談する

保険外サービスの情報は、担当のケアマネージャー(介護支援専門員)が最も詳しく把握しています。「保険でカバーできない部分を補いたい」と率直に伝えましょう。地域包括支援センターに相談するのも有効な手段です。

② 契約内容をしっかり確認する

保険外サービスには介護保険法のルールが適用されないため、事業者間で料金・サービス内容にばらつきがあります。契約前にサービス内容・料金・キャンセルポリシー・万が一のトラブル対応を必ず確認しましょう。

③ 複数の機関を比較する

同じ種類のサービスでも、提供機関によって料金・質・対応エリアが異なります。シルバー人材センターや社会福祉協議会のような公的機関は比較的安価で、民間業者はサービスの幅が広い傾向があります。

④ 経済的な負担を見積もっておく

保険外サービスは全額自己負担のため、家計への影響を事前に試算しておくことが重要です。介護保険の自己負担分と合計して、月々の介護費用の上限を家族で話し合っておきましょう。

⑤ 保険外サービスで始めて、後から保険申請という順番もある

介護保険の申請には数週間から1ヶ月以上かかる場合があります。急に介護が必要になった時は、まず保険外サービスをすぐに開始し、並行して介護認定の申請を進めるという方法も有効です。保険外サービスは事業者との直接契約のため、比較的スピーディーに利用を開始できます。

7. 現場エピソード|保険外サービスが在宅継続を救った事例

🏥 リハビリ現場から

退院して半年ほど経った頃、ご家族から一本の電話をいただきました。

「先生、母は今も家で元気に暮らしています。」

その言葉を聞いて、思わずほっとしたことを今でも覚えています。

担当していたのは、脳卒中後に回復期病棟でリハビリを行い、自宅へ退院された80代の女性でした。一人暮らしを希望されていましたが、他県に住む息子さんは「夜中に転倒したらどうしよう」「体調が悪くなっても誰も気づけないのではないか」と大きな不安を抱えていました。

訪問介護や訪問リハビリを利用する予定でしたが、介護保険だけでは夜間の見守りまでは対応できません。

そこで退院前カンファレンスでケアマネジャーと相談し、介護保険サービスに加えて、保険外のセンサー型見守りサービスを提案しました。

リビングにセンサーを設置し、生活の様子を息子さんのスマートフォンで確認できる仕組みです。

最初は「そこまで必要でしょうか」と迷われていましたが、「お母さんのためというより、ご家族が安心して見守れる環境をつくるための選択肢です」とお伝えすると、導入を決断されました。

退院後は大きなトラブルもなく生活を続けられ、ご家族も「毎日様子が分かるだけで安心できます」と話してくださいました。

結果として、ご本人は住み慣れた自宅で1年以上生活を続けることができ、施設入所も急ぐ必要はありませんでした。

もちろん、ご自宅での生活を支えたのは見守りサービスだけではありません。

訪問介護や訪問リハビリ、ケアマネジャー、ご家族の支えなど、多くの人が関わった結果です。

それでも、この経験を通して私が改めて感じたのは、「介護保険だけで解決しよう」と考えなくてもよいということでした。

制度にはできることと、できないことがあります。

その隙間を埋める選択肢として保険外サービスを知っておくことは、患者さんだけでなく、ご家族の安心にもつながります。

退院支援とは、サービスを紹介することではありません。

その人らしい暮らしを続けるために、「今ある制度をどう組み合わせるか」を一緒に考えることなのだと、この患者さんから改めて教えていただきました。

この事例のように、介護保険と保険外サービスを組み合わせることで、在宅生活の継続期間が大幅に延びることがあります。「保険外=高い」というイメージがありますが、施設入所費用と比較すれば、月数千円〜数万円の保険外サービスは十分に費用対効果が高い場合があります。

8. よくある疑問 Q&A

Q. 保険外サービスを使うには、要介護認定が必要ですか?

A. 基本的に不要です。介護保険外サービスは、要介護認定の有無に関わらず誰でも利用できるものが多いです。「まだ認定を受けていないが、家事が大変になってきた」という段階から利用を検討できます。ただしサービスの種類によって条件が異なるため、各事業者に確認しましょう。

Q. 介護保険サービスと同じ事業者の保険外サービスを使ってもいいですか?

A. 利用できます。むしろ顔なじみのスタッフにそのまま保険外の対応をしてもらえるメリットがあります。ただし、保険内・保険外の費用が明確に区別されているか、契約書で確認することが重要です。同一時間帯の「混在」はルール上認められないため、時間帯を分けた利用が基本です。

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9. まとめ

📝 この記事のポイント

  • 介護保険には対応できない範囲が多くあり、保険外サービスで補うことが在宅継続のカギ
  • 保険外サービスは要介護認定がなくても利用できるものが多く、スピーディーに開始できる
  • 費用は全額自己負担だが、シルバー人材センターや自治体独自サービスなど低コストな選択肢もある
  • 種類は家事代行・外出支援・自費リハビリ・見守り・訪問美容・配食など多岐にわたる
  • まずはケアマネージャーや地域包括支援センターへの相談がスタートライン
  • 介護保険と組み合わせる「混合介護」の考え方で、生活の質(QOL)を高めることが大切

「介護保険で全部まかなえる」というのは残念ながら現実ではありません。でも、保険外サービスを知って賢く使えば、在宅生活の選択肢はぐっと広がります。まずはご自身の地域にどんなサービスがあるか、ケアマネージャーや地域包括支援センターに気軽に相談してみてください。

📚 参考文献・参考資料

  1. 厚生労働省「介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱いについて」(老高発第928001号, 2018年9月)
  2. 財政制度等審議会「建議 令和6年度予算の編成等に関する建議」(2024年5月)
  3. 内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2024(骨太方針2024)」(2024年6月)
  4. SOMPOケア「介護保険外サービスとは?提供内容や種類、費用について解説」
  5. ニッセイ基礎研究所「介護の『保険外』サービスとは何を指すのか?」三原岳(2024年8月)
  6. 介護専門メディア「けあむすび」「介護保険外の自費サービスとは?」(2025年10月)
  7. リハブクラウド「介護保険外サービス一覧|種類と事例を徹底解説」(2025年4月)

【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療・介護サービスの選択を推奨・保証するものではありません。個々の状況によって適切なサービスは異なります。サービスの利用に際しては、担当のケアマネージャー・主治医・地域包括支援センターに必ずご相談ください。記事内の費用はあくまで目安であり、地域・事業者・内容によって異なります。

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この記事を書いた人
理学療法士 18年目
とっち

回復期リハビリテーション病院勤務18年目の理学療法士。
・脳卒中認定理学療法士
・3学会合同呼吸療法認定士
査読付き論文投稿・学会発表経験を活かし、エビデンスに基づいた医療情報を一般の方にもわかりやすく発信しています。

「リハビリと身体のケアラボ」では、身体の痛み・リハビリ・介護保険・健康づくりをわかりやすく解説。より専門的な臨床・エビデンスの深掘りはnoteで発信しています。

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