介護保険の仕組みをわかりやすく解説|申請から利用開始まで【理学療法士が説明】

回復期リハビリの仕事

✍️ この記事を書いた人

とっち|理学療法士(PT)/回復期リハビリテーション病院 勤務18年目
🏅 脳卒中認定理学療法士 🏅 3学会合同呼吸療法認定士
学会発表・論文投稿経験あり。地域の健康教室(フレイル予防)も担当。
ブログ「リハビリと身体のケアラボ」運営。医療現場のリアルを発信中。

📝 現場からひとこと

ちょうど去年の秋ごろのことなんですけど、退院間近の患者さんのご家族から「先生、介護保険ってもう申請してていいんですか?うちはまだ早いかと思って…」って言われて、ちょっと焦ったんですよね。

その方、脳梗塞の発症から約3ヶ月で退院予定。左に軽い麻痺が残っていて、歩けるけど段差や浴室は介助が要るくらいの状態でした。要介護2相当かなという印象で、私的にはとっくに申請済みだと思い込んでいた。

でも実際は未申請。退院まで残り2週間しかない。訪問リハビリの手配もデイケアの調整も、全部ケアプランが決まってからじゃないと動けない。結局、暫定ケアプランで乗り切ったんですけど、退院当日に「で、次はどこに電話すれば…」って奥さんが不安そうにしていた顔が今でも忘れられないです。

18年やってると「早すぎる申請」で困ったことは一度もないけど、「遅すぎた」で焦ったことは数え切れないくらいある。これ、本当に大事なことなので先に書かせてください。

「親が退院することになったけど、介護保険ってどうやって使うの?」「まだ申請してないけど、今からでも間に合う?」

こんな不安を抱えながら、職場の患者さんのご家族から相談を受けることが月に何度もあります。介護保険は非常に便利な制度なのに、仕組みが複雑で最初の一歩が踏み出しにくいのが現実です。

この記事では、理学療法士として18年間、回復期リハビリ病院で患者さんの退院支援に携わってきた経験をもとに、介護保険の基本的な仕組みから申請の流れ、利用開始までをわかりやすくまとめました。

📌 この記事でわかること

  • 介護保険制度の基本的な仕組み(誰が対象?誰が払う?)
  • 申請から認定・サービス利用開始までの具体的なステップ
  • 要介護認定の判定プロセスと区分の目安
  • ケアマネージャーの役割と付き合い方のコツ
  • 現場のPTが知っておいてほしい注意点

🏥 介護保険とは?制度の基本をおさらい

介護保険制度は2000年(平成12年)4月にスタートした公的な社会保険制度です。高齢になって介護が必要になった場合、社会全体でその費用を支え合う仕組みです。

それまでは「老人福祉法」と「老人保健法」の2つの制度が別々に介護を支えていましたが、高齢者の増加に対応するため、これらを統合・再編して誕生しました。

誰が運営しているの?財源はどこから?

介護保険の運営主体(保険者)は各市区町村です。国・都道府県・市町村の公費(税金)と、40歳以上の国民が支払う保険料を財源に運営されています。

財源の内訳 割合
公費(国・都道府県・市町村) 50%
第1号被保険者(65歳以上)の保険料 23%
第2号被保険者(40〜64歳)の保険料 27%

第1号・第2号被保険者の違い

介護保険の加入者(被保険者)は年齢によって2種類に分かれます。

区分 対象年齢 サービスを受けられる条件 保険料の納め方
第1号被保険者 65歳以上 原因を問わず、介護・支援が必要な状態であれば利用可 年金から天引き(年金が少ない場合は普通徴収)
第2号被保険者 40〜64歳 がん末期・認知症・脳卒中など
特定疾病が原因の場合のみ利用可
健康保険料と一緒に給与天引き(自営業は国民健康保険)

💡 ポイント:40歳から保険料を払い始めますが、サービスを利用できるのは原則65歳から(または特定疾病で要介護状態になった場合)です。自分は関係ないと思わず、40代・50代のうちから制度を知っておくことが重要です。

💴 介護サービスの自己負担割合は?

介護保険を使ってサービスを受ける場合、利用者が支払う費用は原則1割です。残り9割は保険(公費+保険料)でカバーされます。ただし、所得に応じて2割・3割負担になる場合があります。

負担割合 対象者の目安
1割負担 65歳以上で一般的な所得の方、65歳未満の方
2割負担 65歳以上で一定以上の所得がある方
3割負担 65歳以上でさらに高い所得がある方(現役並み所得)

自分の負担割合は、要介護認定後に送られてくる「介護保険負担割合証」で確認できます。

📋 申請から利用開始まで|7つのステップ

介護保険を利用するには、まず要介護認定の申請が必要です。認定を受けてからサービスが始まるまでの流れを、7つのステップで整理しました。

STEP 1|申請窓口に行く

住んでいる市区町村の介護保険窓口または地域包括支援センターに申請します。本人が困難な場合は、家族や代理人、ケアマネージャー、地域包括支援センターが代行できます。マイナポータルの「ぴったりサービス」からオンライン申請も可能です。

📎 持参するもの:介護保険被保険者証、マイナンバーカードまたは本人確認書類、主治医の氏名・病院名(わかれば)

STEP 2|訪問調査(認定調査)

市区町村の調査員(またはケアマネージャー)が自宅や入院先を訪問し、聞き取り調査を行います。全国共通の74項目(身体機能・認知機能・行動障害・医療行為の有無など)をチェックします。
この調査が要介護度の判定に大きく影響します。普段の状態を正確に伝えることが重要です。

STEP 3|主治医意見書の作成

市区町村が、かかりつけ医に主治医意見書の作成を依頼します(申請者が直接依頼する必要はありません)。主治医がいない場合は、市区町村の指定する医療機関を受診します。

STEP 4|一次判定(コンピューター判定)

訪問調査の結果を厚生労働省の統一ソフトで分析し、介護に必要な時間(要介護認定等基準時間)をもとにした一次判定が行われます。

STEP 5|二次判定(介護認定審査会)

医師・看護師・社会福祉士など5名程度の専門家で構成される介護認定審査会が、一次判定結果・主治医意見書・調査票をもとに最終的な要介護度を判定します。

STEP 6|認定結果の通知(申請から原則30日以内)

要介護度が記載された認定結果通知書と介護保険被保険者証が郵送で届きます。認定有効期間は通常12ヶ月(初回は6ヶ月)です。結果に不服がある場合は都道府県の介護保険審査会へ異議申し立てができます。

STEP 7|ケアプランの作成&サービス利用開始

ケアマネージャー(介護支援専門員)に依頼してケアプラン(介護サービス計画書)を作成してもらいます。ケアプランに基づいて、訪問介護・通所介護・訪問リハビリなどのサービスが開始されます。

⚠️ 申請中でもサービスは利用できる? → 認定申請後、結果が出る前でも「暫定ケアプラン」を作成してサービスを先行利用することが可能です。ただし、認定結果によっては自己負担額が変わる場合があります。入院中で早期退院が必要なときは担当スタッフに相談しましょう。

📊 要介護認定の区分と目安

判定結果は「非該当(自立)」「要支援1・2」「要介護1〜5」の8段階に分かれます。

区分 状態の目安 主なサービス
非該当(自立) 介護・支援は必要なし 介護保険サービスは利用不可(地域の総合事業を活用)
要支援1 日常生活はほぼ自分でできるが、一部支援が必要 介護予防サービス(訪問型・通所型)
要支援2 要支援1よりやや状態が悪い。立ち上がりなどに支援が必要 介護予防サービス(要支援1より幅広く)
要介護1 立ち上がり・歩行が不安定。排泄・入浴に一部介助が必要 訪問介護・通所介護・訪問リハビリなど
要介護2 歩行・排泄・入浴の多くで介助が必要 同上+短期入所(ショートステイ)など
要介護3 起き上がり・寝返りにも全介助が必要。認知症状が見られることも 同上+特別養護老人ホーム(特養)への入所申請が可能に
要介護4 日常生活全般に全介助が必要。食事も一部介助が必要なことが多い 施設サービスも含めた幅広い選択肢
要介護5 最も重い状態。日常生活全般で常時介護が必要 在宅・施設のいずれか、または組み合わせて対応

🤝 ケアマネージャー(ケアマネ)の役割

ケアマネージャーは正式には「介護支援専門員」といいます。介護保険サービスを利用するうえで、最も重要なパートナーとなる存在です。

ケアマネが担う主な役割

  • 利用者・家族の状況を把握し、ケアプラン(介護サービス計画)を作成する
  • 各種介護サービス事業者との調整・連絡を行う
  • サービスの定期的なモニタリング(状態の評価・計画の見直し)を実施する
  • 医療機関・リハビリ病院との退院調整・連携を担う
  • 利用者・家族の生活上の相談・支援に対応する

ケアマネージャーへの報酬は介護保険から支払われるため、利用者の自己負担はありません(居宅介護支援費)。

💡 上手な付き合い方のコツ:担当ケアマネには「どんな生活がしたいか」「家族の状況や不安」を率直に伝えましょう。遠慮せずに相談することが、より良いケアプランにつながります。合わないと感じたら変更することも可能です。

🛠️ 介護保険で使えるサービスの種類

介護保険サービスは大きく「在宅サービス」「施設サービス」「地域密着型サービス」の3種類に分けられます。

🏠 在宅サービス(自宅で受けられるもの)

  • 訪問介護(ホームヘルプ):ヘルパーが自宅を訪問。身体介護・生活援助
  • 訪問看護:看護師等が自宅を訪問して医療的ケアを提供
  • 訪問リハビリ:PT・OT・ST が自宅でリハビリを実施
  • 通所介護(デイサービス):日帰りで食事・入浴・レクリエーション
  • 通所リハビリ(デイケア):日帰りでリハビリ中心のサービス
  • 短期入所(ショートステイ):施設に短期間入所。家族の休息(レスパイト)にも
  • 福祉用具レンタル・購入:車椅子・歩行器・介護ベッドなど
  • 住宅改修:手すり取り付け・段差解消・滑り止め床材変更など(上限20万円)

🏢 施設サービス

  • 特別養護老人ホーム(特養):要介護3以上が対象。長期入所の主な選択肢
  • 介護老人保健施設(老健):在宅復帰を目標にしたリハビリ施設
  • 介護医療院:医療ケアが必要な長期療養者向け

🗒️ 現場のPTが見てきたこと|申請が遅れると困ること

私が働く回復期リハビリ病院では、入院中に介護保険の申請を済ませて退院準備を進めることが多いのですが、中には「まだ大丈夫だと思っていた」と申請を先送りにしていたご家族が、退院日直前になって慌てて動き出すケースがあります。

ある患者さんのご家族のケース。脳梗塞後の後遺症で左半身に麻痺が残り、退院後は訪問リハビリとデイケアを組み合わせる計画を立てていました。しかし申請が遅れてしまい、認定結果が退院日に間に合わない状況に。暫定ケアプランで対応はできたものの、担当ケアマネを探す時間が短くなり、家族の精神的な余裕がなくなってしまったのが印象的でした。

入院中に医師や看護師から「介護保険の申請を」と言われたら、できるだけ早く動くことが在宅復帰をスムーズにするコツです。申請は入院中でも代理人(家族)が行えますし、病院のソーシャルワーカーや地域の地域包括支援センターに相談するのが最も確実です。

❓ よくある質問(Q&A)

Q. 介護保険の申請に「早すぎる」ということはありますか?

A. 基本的にありません。申請自体はいつでも可能ですが、認定調査時点の状態で判定されるため、介護の必要性がまだ低い段階では「非該当(自立)」になることもあります。その場合は再度申請するか、市区町村の「総合事業」を活用する方法があります。「備えとして早めに動く」姿勢が大切です。

Q. 認定調査でどう対応すれば正確に判定されますか?

A. よくある失敗が「頑張ってしまう」こと。調査員の前で普段できないことをやり遂げてしまうと、実態より軽く評価されることがあります。「良い日・悪い日のうち、悪い日の状態」や「声かけが必要なこと」「見守りが必要なこと」も含めて正直に伝えることが重要です。家族が同席して補足説明することも有効です。

📝 まとめ

✅ 介護保険の基本まとめ

  • 介護保険は40歳以上が加入する社会保険制度。運営は市区町村
  • サービスを受けるには要介護認定の申請が必須(市区町村窓口または地域包括支援センター)
  • 申請→訪問調査→審査会判定→認定→ケアプラン→サービス開始の7ステップ
  • 認定結果は原則申請から30日以内に通知される
  • 自己負担は原則1割(所得に応じて2〜3割)
  • 認定調査では普段の困りごとを正直に伝えることが大切
  • 申請はできるだけ早めに。入院中でも家族が代理で行える
  • ケアマネージャーは無料で活用できる強力な味方

介護保険は、きちんと活用すれば在宅生活を大きく支えてくれる制度です。「まだ先の話」と思わず、少しでも心配なことがあれば地域包括支援センターへ相談することから始めてみてください。

次の記事では「要介護認定とは?判定の流れと区分別サービスの違い」をさらに詳しく解説する予定です。あわせてご覧ください。

📚 参考文献・情報源

  1. 厚生労働省「介護保険制度の概要」(2024年)
  2. 厚生労働省「介護サービスを受けるまでの流れ」(参考資料)
  3. 中央法規「プロとして知っておきたい! 介護保険のしくみと使い方 2024-2027年対応版」
  4. 中野区「介護保険料の決め方と納め方」(令和6年度版)
  5. 公益財団法人 生命保険文化センター「公的介護保険への加入はいつから?」(2024年度)
  6. LIFULL介護「要介護認定とは?認定基準や区分、申請〜通知の流れ」
  7. ALSOK介護「介護保険、2024年度の改正でどう変わる?」

⚠️ 免責事項:本記事は理学療法士の立場から介護保険制度に関する一般的な情報を提供することを目的としています。介護保険の申請・判定・利用に関する個別の状況については、お住まいの市区町村の窓口または地域包括支援センターへご相談ください。制度の詳細は法改正によって変更になる場合があります。本記事の情報は2025年時点のものをもとにしています。

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この記事を書いた人
理学療法士 18年目
とっち

回復期リハビリテーション病院勤務18年目の理学療法士。
・脳卒中認定理学療法士
・3学会合同呼吸療法認定士
査読付き論文投稿・学会発表経験を活かし、エビデンスに基づいた医療情報を一般の方にもわかりやすく発信しています。

「リハビリと身体のケアラボ」では、身体の痛み・リハビリ・介護保険・健康づくりをわかりやすく解説。より専門的な臨床・エビデンスの深掘りはnoteで発信しています。

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