✍️ この記事を書いた人
とっち|理学療法士(PT)
回復期リハビリテーション病院 勤務18年目/脳卒中認定理学療法士/3学会合同呼吸療法認定士/学会発表・論文投稿経験あり
地域での健康教室(フレイル予防)も担当。日々、患者さんや家族からの「介護保険ってどうすればいい?」という相談に向き合っています。
📖 はじめに|現場で感じたこと
去年の冬のことです。年明けすぐ、脳梗塞で入院されてきた70代の男性患者さんがいました。発症から3週間、割と順調に回復されていて、ご家族も「早く家に帰りたがってる」と言っていた。でも、退院前カンファレンスで要介護認定の話が出たとき、奥さんが「えっ、そんな手続きが必要なんですか?まったく知らなかった」って顔をされたんですよね。正直に言うと、18年やってきて、この「まったく知らなかった」は今でもよく聞くんです。
申請から結果が出るまで原則30日。ところがその患者さんは退院まで残り2週間しかなかった。ケアマネさんに動いてもらって、暫定ケアプランで対応することになったんですが、あのバタバタは今でも覚えています。もっと早い段階で、入院中に家族へ伝えられていたら——そう思うと、情報を届けることの大切さを改めて感じた出来事でした。
「親が入院した。退院後はどんな介護サービスが使えるの?」「要介護認定って何をする手続き?」——回復期病院で働いていると、退院準備の場面でこういった声を毎日のように耳にします。
要介護認定は、介護保険サービスを利用するための入口となる最も重要な手続きです。しかし、「どうやって判定されるのか」「区分によって何が変わるのか」が分かりづらく、家族が途方に暮れるケースが少なくありません。
この記事では、理学療法士の立場から、要介護認定の仕組み・判定の流れ・区分ごとの状態像とサービスの違いを、できるだけわかりやすくお伝えします。
📋 この記事でわかること
- 要介護認定とは何か・誰が対象か
- 申請から結果通知までの具体的な流れ
- 一次判定・二次判定のしくみ
- 要支援1〜要介護5の状態像と使えるサービスの違い
- 認定に納得できないときの対処法
🔎 要介護認定とは?基本をおさえよう
要介護認定の目的
要介護認定とは、「介護保険サービスをどれくらい必要としているか」を公的に判定する制度です。市区町村が実施し、認定を受けることで介護保険の給付(サービス)を利用できるようになります。
介護保険では、要支援1・2、要介護1〜5の計7段階に分けて認定されます。どの区分に該当するかによって、使えるサービスの種類や月々の支給限度額(上限額)が変わります。
誰が申請できるの?
介護保険は、以下の方が申請できます。
| 被保険者の種類 | 対象年齢 | 申請できる条件 |
|---|---|---|
| 第1号被保険者 | 65歳以上 | 原因を問わず、介護・支援が必要な状態 |
| 第2号被保険者 | 40〜64歳 | 特定疾病(※)が原因で介護が必要な状態 |
※特定疾病:がん末期・関節リウマチ・筋萎縮性側索硬化症(ALS)・脳血管疾患・パーキンソン病関連疾患・骨折を伴う骨粗しょう症・初老期認知症など16疾病
📝 申請から結果通知までの流れ
要介護認定の手続きは、大きく4つのステップで進みます。申請から結果通知まで原則30日以内が目安です。

申請
住んでいる市区町村の介護保険担当窓口(または地域包括支援センター)に「要介護・要支援認定申請書」を提出します。本人・家族のほか、居宅介護支援事業者(ケアマネジャー)に代行を依頼することも可能です。
認定調査+主治医意見書
市区町村の職員または委託を受けたケアマネジャー(認定調査員)が自宅や入院先を訪問し、全国共通の74項目について心身の状態を確認します。同時に、市区町村は主治医(かかりつけ医)に「主治医意見書」の作成を依頼します。
一次判定→二次判定
認定調査の結果をコンピュータで処理する一次判定を行い、その後、医療・福祉の専門家で構成される「介護認定審査会」が主治医意見書や特記事項も加味して最終判定(二次判定)を下します。
結果通知・サービス開始
認定結果と介護保険被保険者証が郵送されます。要介護1以上であればケアマネジャーに連絡してケアプランを作成し、サービス利用を開始します。
🖥️ 一次判定・二次判定のしくみ
認定調査の74項目とは?
認定調査員が確認する74項目は、次の6つの領域に分かれています。
| 領域 | 調査内容の例 |
|---|---|
| ①身体機能・起居動作 | 麻痺・関節可動域・寝返り・起き上がり・歩行など |
| ②生活機能 | 移乗・移動・食事・排泄・入浴・着替えなど |
| ③認知機能 | 意思の伝達・記憶・日課の理解など |
| ④精神・行動面 | 徘徊・被害妄想・暴言・不潔行為などのBPSD |
| ⑤社会生活への適応 | 服薬管理・金銭管理・電話の使用など |
| ⑥特別な医療 | 点滴・透析・気管吸引・経管栄養など医療行為の有無 |
一次判定のしくみ
74項目の調査結果をコンピュータに入力すると、「要介護認定等基準時間(1分間タイムスタディデータに基づく統計的手法で算出)」が計算されます。これは、直接生活介助・間接生活介助・問題行動関連・機能訓練関連・医療関連の5分野にかかる介護の時間を合計したものです。認知症がある場合は「認知症加算」も上乗せされます。
| 要介護度 | 基準時間の目安 |
|---|---|
| 要支援1 | 25分以上32分未満 |
| 要支援2 / 要介護1 | 32分以上50分未満(状態安定→要支援2、悪化見込み→要介護1) |
| 要介護2 | 50分以上70分未満 |
| 要介護3 | 70分以上90分未満 |
| 要介護4 | 90分以上110分未満 |
| 要介護5 | 110分以上 |
出典:厚生労働省「要介護認定はどのように行われるか」
二次判定のしくみ
一次判定はあくまで「たたき台」であり、これだけで介護度が決まるわけではありません。保健・医療・福祉の専門家による「介護認定審査会」が、一次判定結果に加えて、主治医意見書と認定調査の特記事項を総合的に判断します。
たとえば、一次判定で要介護3と出ても、主治医意見書や特記事項から「実際の介護の手間がより大きい」と判断されれば、二次判定で要介護4に変更されることもあります。逆に軽くなるケースもあります。
🏥 現場から|とっちの経験談
「先生、本人は『何でもできます』って言ってしまうんです。」
退院前の要介護認定を控えたご家族が、不安そうに相談してくださいました。
回復期病棟で担当した80代の男性患者さんです。脳梗塞後のリハビリを続け、退院に向けて要介護認定の申請を進めることになりました。
普段は移動や更衣、トイレなどでご家族の介助が必要な場面が多くありました。しかし、ご本人は「家族に迷惑をかけたくない」という思いが強く、認定調査ではつい「できます」と答えてしまう性格でした。
実は、このような場面は回復期病棟では珍しくありません。
認定調査の日は緊張もあり、いつも以上に頑張ってしまう方も少なくないからです。
そこで私は、ご家族へ
「調査の日の様子ではなく、普段の生活を伝えることが一番大切ですよ。」
とお話ししました。
例えば、
・立ち上がる時は毎回支えていること
・トイレでは見守りや介助が必要なこと
・入浴は一人では難しいこと
など、日頃の介助内容をメモにまとめておいていただくようお願いしました。
認定調査では、ご家族がその内容を具体的に補足してくださいました。
その結果、実際の生活に合った介護度で認定され、必要な介護サービスを利用しながら安心して自宅生活を始めることができました。
この症例を通して改めて感じたのは、要介護認定は「一番頑張れた日」を評価するものではなく、「普段どのような生活を送っているか」を評価するものだということです。
私は退院支援に関わるとき、ご本人だけではなく、ご家族にも「普段の様子を教えてください」と必ずお聞きします。
患者さんを一番よく知っているのは、ご家族だからです。
退院はゴールではありません。
退院後の生活を安心して続けるためにも、ご家族の声は、要介護認定でとても大切な情報
📊 区分別の状態像と使えるサービスの違い
要介護認定の結果は7段階(非該当を含めると8区分)に分けられます。それぞれの状態の目安と、月々に使えるサービスの上限額をまとめます。
※支給限度基準額は2024年度現在。自己負担は原則1割(所得に応じ2〜3割)。地域区分により金額は異なります。
⚠️ 認定調査で損しないための大切なポイント
要介護認定の結果は、認定調査の内容に大きく左右されます。実態に合った認定を受けるために、家族が知っておくべきポイントをお伝えします。
| よくある落とし穴 | 対策 |
|---|---|
| 本人が「できる」と言い張る | 家族が「普段は●●の介助が必要」と具体的に補足する |
| 調査当日だけ頑張ってしまう | 「普段の状態」を調査員に伝えるよう意識する |
| 認知症の行動症状(BPSD)が伝わらない | 徘徊・興奮・夜間不眠などの頻度・回数をメモして持参 |
| 主治医に状態が十分伝わっていない | 主治医に「日頃困っていること」を事前に相談・伝達する |
💡 ポイント:認定調査は「普段の最も悪い状態」を基準に判断します。「できるかできないか」ではなく、「介助が必要かどうか」という視点で伝えましょう。
🔄 認定結果に納得できないときの対処法
認定結果が実態とかけ離れていると感じる場合、以下の2つの手段があります。
📋 区分変更申請(推奨)
有効期間中でも再申請可能。通常通り約30日で新しい結果が出るため、速やかに対応できます。ケアマネジャーに相談して手続きを進めましょう。
📋 不服申し立て(審査請求)
結果通知の翌日から3カ月以内に都道府県の介護保険審査会へ申請。ただし結果が出るまで数カ月かかることが多く、手続きも煩雑です。
多くのケースでは、区分変更申請の方が時間的にも現実的です。まずはケアマネジャーや地域包括支援センターに相談することをお勧めします。
❓ よくある質問(Q&A)
✅ まとめ
- 要介護認定は介護保険サービスを利用するための必須手続き。申請から結果通知まで原則30日以内。
- 判定は74項目の認定調査(一次判定)→介護認定審査会(二次判定)という2段階で行われる。
- 認定区分は要支援1・2、要介護1〜5の7段階。介護度が高いほど使えるサービス量と施設の選択肢が広がる。
- 調査当日は「普段の最も悪い状態」を家族が具体的に補足説明することが重要。
- 結果に納得できない場合は区分変更申請が現実的な手段。ケアマネジャーへの相談が第一歩。
- 有効期間(初回6カ月)が切れる前に更新申請(満了60日前から)を忘れずに。
要介護認定は複雑に見えますが、仕組みを知っておくだけで手続きがずっとスムーズになります。「まだ元気だから」と思っていても、転倒や急性疾患をきっかけに一気に状態が変わることは珍しくありません。早めに情報収集し、いざというときに備えておくことが大切です。
ご不明な点は、お住まいの地域の地域包括支援センター(65歳以上の方の相談窓口)へ気軽にご相談ください。
📖 参考文献
- 厚生労働省「要介護認定はどのように行われるか」WAM NET掲載資料
- 厚生労働省 老健局「認定調査員テキスト2009(平成27年4月改訂版)」
- 厚生労働省「介護保険制度をめぐる最近の動向について」社会保障審議会介護保険部会(第92回)資料(2022年3月)
- 健康長寿ネット「支給限度額とは」(2025年2月更新)
- ハートページナビ「要介護認定の基準とは?区分早わかり表&申請の流れもわかりやすく解説」(2024年6月)
- プロサポ「区分支給限度基準額をくわしく知りたい方必見!」(2024年度版データ)
あわせて読みたい






コメント