✍️ この記事を書いた人
とっち|理学療法士(回復期リハ病院勤務18年目)
🏥 脳卒中認定理学療法士 / 3学会合同呼吸療法認定士
学会発表・論文投稿経験あり。現場で毎日患者さんの退院支援に関わる中で、「介護保険のお金の話」で困っているご家族を数多く見てきました。このブログでは、専門的な知識をわかりやすく届けることを目標にしています。
📖 現場からのひとこと
ちょっと正直に言うと、18年やってきて今もやっちゃうミスがあって。去年の11月ごろ、要介護2の80代女性が退院間近になったとき、私はリハビリのプランばかり気にしていて、費用のことを後回しにしてたんですね。ご家族との退院前面談で初めて「ところで毎月いくらかかるんですか?」って聞かれて、ちゃんと答えられなかった。娘さんが少し不安そうな顔をされて、「月10万とかになったら正直きつくて…」とおっしゃったんです。あわててケアマネさんに確認したら、その方は1割負担で週2回のデイサービスと週3回の訪問介護を組み合わせても月2万円以内に収まると判明。娘さんに伝えたら「えっ、そんなに少ないんですか」って表情がぱっと変わって。あのとき気づいたんですよね、費用の不安って、リハビリへの意欲にも直結するんだって。金額がわかるだけで、退院に前向きになれる人がいる。それからは私も退院支援の早い段階で費用の話を出すようにしています。
「退院後、介護保険を使うとどれくらいお金がかかるの?」
この質問は、退院前カンファレンスで患者さんのご家族から最も多く聞かれる言葉のひとつです。いざ介護保険サービスを利用しようとしても、1割・2割・3割といった負担割合の違いや、デイサービス・訪問介護・施設入所それぞれの費用がいくらなのか、なかなかイメージしづらいですよね。
この記事では、18年間にわたり回復期リハ病院で退院支援に携わってきた理学療法士の立場から、介護保険の自己負担のしくみ・実際のサービス費用の目安・費用を抑える制度について、具体的な事例を交えてわかりやすく解説します。
📋 この記事でわかること
- 介護保険の自己負担割合(1割・2割・3割)のしくみ
- 要介護度別の支給限度額と費用のイメージ
- デイサービス・訪問介護・施設入所の具体的な費用シミュレーション
- 高額介護サービス費・負担限度額認定など費用軽減制度
💡 そもそも介護保険の「自己負担」ってどういうこと?
介護保険制度では、サービス費用の一定割合を利用者が「自己負担」として支払い、残りを介護保険から給付する仕組みになっています。
たとえば、デイサービスを1回利用して費用が合計10,000円だった場合、1割負担の方なら自己負担は1,000円。9,000円は介護保険から支払われます。
🧮 費用の考え方(基本式)
サービス費用の総額 ×(1割 or 2割 or 3割)= 自己負担額
なお、食費・居住費・日用品費などは原則として全額自己負担となり、介護保険の給付対象外です。ここを混同するご家族が非常に多いので、注意が必要です。

📊 自己負担は1割・2割・3割のどれ?判定のしくみ
自己負担割合は、前年の所得と世帯の状況をもとに、毎年市区町村が判定します。判定結果は「介護保険負担割合証」に記載されており、毎年6〜7月ごろ送付されます(適用期間:8月1日〜翌年7月31日)。
| 負担割合 | 対象者の目安(65歳以上・単身の場合) |
|---|---|
| 1割 | 65歳未満・市民税非課税・生活保護受給者、または所得が低い方 |
| 2割 | 合計所得金額160万円以上かつ年金収入等の合計が280万円以上(単身) |
| 3割 | 合計所得金額220万円以上かつ年金収入等の合計が340万円以上(単身) |
※世帯構成や収入の種類によって異なります。正確な割合は必ず「介護保険負担割合証」で確認してください。
⚠️ 注意:2024年の改正案で「原則2割化」が検討されましたが、後に撤回されました。現時点(2025年)では、従来通り1割・2割・3割の3区分で運用されています。今後の動向は引き続き注視が必要です。
📋 要介護度別の「支給限度額」と自己負担の上限
介護保険では、要介護度ごとに1ヶ月に使えるサービスの上限額(区分支給限度基準額)が定められています。この限度額内であれば1〜3割の自己負担でサービスを利用でき、超えた分は全額自己負担となります。
| 要介護度 | 月の支給限度額(目安) | 1割負担の上限額 | 2割負担の上限額 |
|---|---|---|---|
| 要支援1 | 約50,320円 | 約5,032円 | 約10,064円 |
| 要支援2 | 約105,310円 | 約10,531円 | 約21,062円 |
| 要介護1 | 約167,650円 | 約16,765円 | 約33,530円 |
| 要介護2 | 約197,050円 | 約19,705円 | 約39,410円 |
| 要介護3 | 約270,480円 | 約27,048円 | 約54,096円 |
| 要介護4 | 約309,380円 | 約30,938円 | 約61,876円 |
| 要介護5 | 約362,170円 | 約36,217円 | 約72,434円 |
※1単位=10円(地域によって異なります)で計算した目安。2024年4月現在。実際のサービス費用は地域単価・事業所・加算内容により変わります。
ただし、実際にこの限度額いっぱいまで使う方は多くありません。ケアマネジャーが生活状況や必要性に応じてサービスを選択・組み合わせるため、使う金額は個人差があります。
🧾 具体的なシミュレーション|これだと月いくら?
ここからが本記事のメインです。よくある利用シーンを4つのケースでシミュレーションしてみます。いずれも1割負担・地域単価10円(その他地域)での計算です。
📌 ケース① デイサービスを週2回利用(要介護1・1割負担)
対象者のイメージ:75歳女性。脳卒中後に自宅退院。歩行は一部介助が必要。週2回デイサービスで入浴と体操を行っている。
| 費用の内訳 | 1回あたり | 月8回換算 |
|---|---|---|
| 介護保険適用分(基本料+入浴加算)自己負担1割 | 約700円 | 約5,600円 |
| 食費(全額自己負担) | 約800円 | 約6,400円 |
| 合計 | 約1,500円 | 約12,000円 |
💬 「週2回のデイサービスで月1万2千円ほど」が目安です。リハビリや入浴サービスが使えて、家族の休息にもなるため費用対効果が高いと感じるご家族が多いです。
📌 ケース② デイサービスを週5回利用(要介護3・1割負担)
対象者のイメージ:82歳男性。パーキンソン病。ほぼ毎日デイサービスを利用して日中の生活を支えている。妻が在宅で介護中。
| 費用の内訳 | 1回あたり | 月20回換算 |
|---|---|---|
| 介護保険適用分(基本料+加算)自己負担1割 | 約1,100円 | 約22,000円 |
| 食費(全額自己負担) | 約800円 | 約16,000円 |
| 合計 | 約1,900円 | 約38,000円 |
💬 要介護3で週5日使うと月3.5万〜4万円程度。ただしこのケースは支給限度額に近づくため、他のサービスとのバランスをケアマネジャーと相談することが重要です。
📌 ケース③ 訪問介護を毎日+デイサービス週2回(要介護2・1割負担)
対象者のイメージ:88歳女性。一人暮らし。変形性膝関節症で歩行は歩行器使用。朝の起床介助は毎日必要で、デイは週2回。
| サービス | 回数 | 月の費用(1割) |
|---|---|---|
| 訪問介護(身体介護20分・起床介助) | 月26回 | 約4,000円 |
| デイサービス(食費含む) | 月8回 | 約13,000円 |
| 合計(介護保険分+食費) | 約17,000円 |
💬 一人暮らしの高齢者に多いパターン。月1.5〜2万円程度で日常生活をカバーでき、家族の安心にもつながります。ケアマネジャーとの連携が鍵。
📌 ケース④ 特別養護老人ホーム(特養)に入所(要介護4・1割負担・非課税世帯)
対象者のイメージ:90歳男性。認知症あり、排泄・移乗全介助。在宅での介護が限界となり特養に入所。妻も高齢で一人での介護は困難。
| 費用の種類 | 月額の目安 |
|---|---|
| 介護サービス費(1割) | 約25,000〜28,000円 |
| 居住費(多床室・第2段階・補足給付あり) | 約0〜10,000円 |
| 食費(補足給付あり・第2段階) | 約10,000〜14,700円 |
| 日常生活費(おむつ・理美容等) | 約5,000〜15,000円 |
| 合計(目安) | 約4〜6万円/月 |
💬 「施設入所はお金がかかる」と思われがちですが、非課税世帯で補足給付を受ければ月5万円前後に抑えられることも多いです。実際、施設入所後に「在宅より安くなった」というご家族も少なくありません。
🏥 現場から見えるリアル|「こんな質問が多いんです」
回復期リハ病院で退院支援に関わっていると、費用に関する不安を口にされるご家族は本当に多いです。
先日も、脳梗塞後のリハビリを終えてもうすぐ退院予定のAさん(78歳男性)のご家族が面談に来られました。「施設に入れる費用が払えるか不安で…」と言われていましたが、Aさんは年金のみの非課税世帯。実際に試算してみると、特養の多床室なら月4〜5万円台で入れる可能性があるとわかり、「それなら何とかなるかも」とほっとされていました。
一方、「デイサービスは高い」と思い込んで利用をためらっていたBさん(83歳女性)のケースでは、実際は週2回で月1.5万円未満だとわかり、すぐに申請につながったこともあります。
💡 PT目線のポイント
介護保険の費用は、「思ったより高い」場合も「思ったより安い」場合もあります。正確な金額はケアマネジャーや地域包括支援センターに相談して試算してもらうのが一番です。「まず相談」が大切です。
💰 費用を抑えるための3つの公的制度
介護保険には、費用が高くなった場合に自己負担を一定額に抑えるための制度が複数あります。知っているかどうかで、家計への影響が大きく変わります。
① 高額介護サービス費制度
同じ月に支払った介護保険サービスの自己負担の合計が一定の上限を超えた場合、超えた分が後から払い戻される制度です。
| 所得区分 | 月の上限額(個人) |
|---|---|
| 生活保護・老齢福祉年金受給者(第1段階) | 15,000円 |
| 住民税非課税・年金収入等80万円以下(第2段階) | 24,600円 |
| 住民税非課税世帯(第3段階) | 24,600円 |
| 住民税課税・一般所得(第4段階) | 44,400円 |
| 課税所得145万円以上(現役並み所得) | 44,400〜140,100円 |
※食費・居住費・日用品費はこの制度の対象外です。初回のみ自治体から申請書が送られてきます。
② 負担限度額認定(補足給付)|施設の食費・居住費を軽減
施設入所やショートステイを利用する低所得者が、食費・居住費の自己負担を抑えられる制度です。住民税非課税世帯であること、預貯金等が一定額以下であることなどが条件です。
対象となる主な条件(いずれも必要):
- 本人と世帯全員が住民税非課税
- 配偶者(別世帯含む)も住民税非課税
- 本人の預貯金等が基準額以下(例:単身は500〜2,000万円未満。段階により異なる)
認定を受けると「介護保険負担限度額認定証」が交付され、施設に提示することで食費・居住費が軽減されます。知らずに損をしているケースが非常に多い制度です。
③ 高額医療・高額介護合算制度
1年間(8月〜翌年7月)の医療費と介護費の自己負担を合算し、年間の上限額を超えた分が払い戻される制度です。持病で医療費もかかっている方に特に有効です。
上限額の目安は所得区分によって異なり、非課税世帯では年間31万円、一般世帯では年間56万円となっています。
❓ よくある質問(Q&A)
📝 まとめ
- 介護保険の自己負担は所得に応じて1割・2割・3割の3区分
- 要介護度ごとに月の支給限度額があり、超えた分は全額自己負担
- デイサービス週2回で月1.2〜1.5万円、特養入所で月4〜6万円が目安(1割負担・食費込み)
- 高額介護サービス費・負担限度額認定・高額医療介護合算の3制度を活用することで費用を大幅に軽減できる
- 費用の試算はケアマネジャーや地域包括支援センターへの相談が最善の方法
介護保険の費用は「よくわからない」と後回しにしがちですが、早めに正確な情報を得ることが、ご家族全員の安心につながります。まずは担当のケアマネジャーや市区町村の窓口に、遠慮なく相談してみてください。
📚 参考文献・資料
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定の概要」2024年
- 厚生労働省「令和3年8月利用分から高額介護サービス費の負担限度額が見直されます」
- 厚生労働省「令和6年8月からの補足給付の見直し(リーフレット)」2024年
- ソニー生命「公的介護保険サービスには利用限度額がある」
- 一般財団法人 公益財団法人生命保険文化センター「介護保障ガイド(2024年10月改訂版)」
- 株式会社リハブクラウド「デイサービスの費用はいくら?要介護度別料金表【2025年最新版】」2025年
⚠️ 免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の費用や制度の適用について保証するものではありません。介護保険の費用・制度の詳細はお住まいの市区町村や担当ケアマネジャーにご確認ください。医療・介護に関する判断は、必ず専門家にご相談の上で行ってください。
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