有酸素運動と筋トレ、どちらが先?正しい順番を理学療法士が解説

セルフケア・リハビリ

有酸素運動と筋トレ、どちらが先?正しい順番を理学療法士が解説

📝 この記事を書いた人:とっち

回復期リハビリテーション病院に勤務する理学療法士(経験18年目)。脳卒中専門理学療法士、3学会合同呼吸療法認定士の資格を保有し、学会発表・論文投稿の経験もあります。臨床現場での経験をもとに、根拠に基づいたリハビリ・健康情報を発信しています。

「筋トレと有酸素運動、どっちを先にやればいいんですか?」——これは私がリハビリ指導や地域のフレイル予防教室で、本当によく聞かれる質問のひとつです。ジムでもよく議論になるテーマですが、実は近年の研究では、この「順番」についての考え方が少し変わってきています。今日は最新のエビデンスをもとに、理学療法士の視点でわかりやすく解説していきます。

🏥 現場でのエピソード

以前担当していた60代の患者さんから、「先生、ウォーキングしてから筋トレした方が脂肪が燃えやすいって聞いたんですけど、本当ですか?」と質問されたことがあります。
その方は毎日30分ほどウォーキングを行った後、自宅でスクワット20回×3セットを続けていました。しかし、「最近、筋トレの時に力が入らない気がする」と感じていたそうです。
詳しくお話を伺うと、ウォーキング後には下肢に疲労感が強く残っており、スクワットのフォームも後半になると崩れていました。実際に確認すると、筋トレ前に比べて動作速度も低下していました。
そこで、「筋力をしっかりつけること」が目的であれば、疲労の少ない状態で筋トレを先に行い、その後に有酸素運動を実施した方が高い負荷をかけやすいことを説明しました。
順番を入れ替えて1か月ほど経過した頃には、「前よりスクワットがやりやすい」「回数を増やせるようになった」と話されるようになりました。
この経験以来、私は運動の順番を質問された際、「どちらが正しいか」ではなく、「何を目的に運動するのか」を最初に確認するようにしています。有酸素運動と筋トレにはそれぞれ役割があり、目的によって最適な順番は変わるのです。

結論:目的によって「先にやるべき運動」は変わる

まず結論からお伝えすると、「絶対にこの順番でなければダメ」という答えはありません。ただし、目的に応じた優先順位を意識することで、トレーニング効果を高めやすくなります。

目的 おすすめの順番 理由
筋力・筋肉量を増やしたい 筋トレ → 有酸素運動 疲労していない状態で筋トレを行い、質を確保する
体力づくり・ウォーミングアップ重視 軽い有酸素 → 筋トレ 体温・血流を上げてケガ予防につながる
健康維持・どちらも軽め どちらでもOK 継続できることが最も重要

なぜ「筋トレ→有酸素」が基本的に推奨されるのか

①フレッシュな状態で筋トレの質を確保できる

先に有酸素運動を行うと、下肢を中心に疲労が蓄積し、その後の筋トレで本来発揮できるはずの力やフォームの質が低下しやすくなります[1]。特にスクワットやレッグプレスなど下半身を使う種目では、疲労の影響を受けやすいことが指摘されています。筋力アップや筋肉量の増加(筋肥大)を目指す場合は、できるだけ疲労していない状態で筋トレを行うことが望ましいとされています。

②「アフターバーン効果」を活かせる

筋トレのような強度の高い運動を行うと、運動後も体がエネルギーを消費し続ける「運動後過剰酸素消費(EPOC)」と呼ばれる現象が起こります[2]。これは通称「アフターバーン効果」とも呼ばれ、筋トレ後に有酸素運動を行うことで、エネルギー消費効率がさらに高まる可能性があると考えられています。

③筋肉のエネルギー源を効率よく使える

筋トレ(無酸素運動)では主に体内の糖質(グリコーゲン)がエネルギー源として使われます。一方、有酸素運動では脂肪酸が主なエネルギー源となります[3]。筋トレで糖質をある程度使った後に有酸素運動を行うことで、脂肪をエネルギーとして使いやすい状態に近づくと考えられています。

🔬 専門職向けコラム:「インターフェレンス効果」って何?

有酸素運動と筋トレを同じセッションで行うと、お互いの効果を打ち消し合う「干渉現象(インターフェレンス効果)」が起こるのではないか、という議論が以前からあります。しかし近年の系統的レビューでは、トレーニングの「順番」自体が筋肥大や最大筋力に与える影響は小さい、あるいはほとんど差がないとする報告が複数示されています[4][5]。一方で、筋線維タイプ別に見ると、特に持久系(ランニングなど)を組み合わせた場合、TypeI線維(遅筋)の肥大がわずかに抑制される可能性も報告されており[6]、研究レベルでは今もなお議論が続いているテーマです。臨床的には「順番にこだわりすぎるより、まずは両方を継続すること」が現実的な指導方針と言えるでしょう。

体力に不安がある方・高齢者の場合の考え方

リハビリの現場や地域のフレイル予防教室で関わる高齢の方々の場合、「順番」よりもまず大切にしたいポイントがあります。

  • ウォーミングアップは必須:いきなり筋トレを始めると、関節や筋肉への負担が大きくなりやすいため、軽いストレッチや足踏みなどで体を温めてから始めましょう。
  • 疲労感を優先のサインに:「今日は脚が重いな」と感じる日は、有酸素運動を軽めにして筋トレを先に行うなど、体の状態に合わせて柔軟に調整することが大切です。
  • 無理に両方を同じ日に行わなくてもよい:曜日を分けて「今日は筋トレの日」「今日は有酸素の日」とするのも、継続のための有効な工夫です。

Q&A:よくある質問

Q1. 順番を間違えたら効果はゼロになりますか?

A. いいえ、ゼロになることはありません。順番による効果の差はあったとしても比較的小さいとされており[5]、最も重要なのは「継続して体を動かす習慣をつけること」です。順番を気にしすぎて運動自体が億劫になってしまうのは本末転倒ですので、まずは取り組みやすい順番から始めて問題ありません。

Q2. 同じ日にやらず、別の日に分けてもいいですか?

A. もちろん問題ありません。曜日を分けて行う方法も研究で広く検討されており、同じ日に行う場合と比べて筋肥大や筋力への影響に大きな差はないとされています[4]。ご自身のスケジュールや体力に合わせて、続けやすい形を選ぶことが何より大切です。

まとめ

  • 筋力・筋肉量アップが目的なら「筋トレ→有酸素運動」が基本
  • 脂肪燃焼効率の面でも筋トレを先に行うメリットがある
  • 「順番」による効果の差は研究上、比較的小さいとされている
  • 最も大切なのは無理なく継続できること
  • 体調や疲労感に合わせて柔軟に調整してOK

運動の順番に悩むよりも、「今日も体を動かせた」という積み重ねの方が、長期的には体にとって何より大きな意味を持ちます。ぜひ無理のない形で、有酸素運動と筋トレを生活に取り入れていってくださいね。

自宅トレーニングにおすすめのアイテム

自宅で有酸素運動と筋トレを組み合わせる際、あると便利なアイテムをご紹介します。

🔗 TheraBand(セラバンド) 赤(レッド)ミディアム 標準サイズ

リハビリ現場でも広く使われている伸縮性のトレーニングバンドです。関節への負担を抑えながら、自宅で下肢・上肢どちらの筋トレにも活用できます。レッド(ミディアム)は初心者から運動習慣がある方まで使いやすい強度で、筋トレ前のウォーミングアップや、筋トレ後の軽い運動としても取り入れやすいアイテムです。

🔗 BARWING(バーウィング) ルームランナー専用マット BW-SRM16

室内で有酸素運動を行う際の振動・音を抑えるトレーニングマットです。ルームランナーやステップ運動の下に敷くことで、階下への音の伝わりや床への傷つきを防ぎながら、天候を気にせず自宅で有酸素運動を継続しやすくなります。マンションなど集合住宅にお住まいの方にもおすすめです。

🔗 créer(クレエ) ステップ台 踏み台昇降 4段階調整

低負担で続けられる静音設計の踏み台昇降台です。高さを4段階に調整できるため、体力や目的に合わせて負荷を変えられます。筋トレ後の軽い有酸素運動として取り入れやすく、テレビを見ながらの「ながら運動」にも向いているため、運動習慣を継続しやすいアイテムです。

⚠️ 免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断・治療方針を示すものではありません。持病がある方、運動時に痛みや不調を感じる方は、運動を始める前に医師や理学療法士などの専門職にご相談ください。

参考文献

[1] ウェルネスクラブ株式会社. ダイエットに最適な筋トレと有酸素運動の順番とは?トレーナーが徹底解説. 2025.

[2] 同上.

[3] element-gym. 有酸素運動×筋トレが最強コンビ!効果的な順番や方法を解説. 2025.

[4] Schumann M, et al. Compatibility of Concurrent Aerobic and Strength Training for Skeletal Muscle Size and Function: An Updated Systematic Review and Meta-Analysis.

[5] The Role of Intra-Session Exercise Sequence in the Interference Effect: A Systematic Review with Meta-Analysis. PMC.

[6] Lundberg TR, et al. The Effects of Concurrent Aerobic and Strength Training on Muscle Fiber Hypertrophy: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Med 2022.

 

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