肥満と運動療法|理学療法士が教える安全に痩せるための運動

セルフケア・リハビリ

👤 この記事を書いた人

とっち|理学療法士(回復期リハ病院勤務18年目)/脳卒中認定理学療法士/3学会合同呼吸療法認定士
学会発表・論文投稿経験あり。「リハビリと身体のケアラボ」運営。エビデンスに基づいた情報をわかりやすく発信しています。

📝 18年目のPTが正直に思うこと

去年の秋ごろかな、うちの後輩が「先輩、1か月で5kg落としました!」って報告してきたんです。顔もシュッとして、明らかに体型が変わってたし、正直ちょっとすごいなと思いました。

でも半年後に声をかけてみたら……「また戻っちゃいました、むしろ増えてるかも」って、どこか申し訳なさそうな顔で言うんですよね。聞いたら、毎日1時間ウォーキングして、ご飯もかなり減らしてたらしくて。最初の1か月はよく落ちたけど、食事を元に戻したとたん一気にリバウンドしたと。

これ、初めての話じゃないんです。同じパターンを何人もで見てきました。食事制限+有酸素運動の組み合わせは確かに短期間で体重は落ちる。でも筋肉量も一緒に落ちているから、食事が戻ったときに基礎代謝が追いつかなくて、以前よりむしろ太りやすい体になってしまっているんです。

理学療法士として毎日、筋肉量と身体機能の関係を見続けている立場からすると、正直に言うと「体重を落とすこと」より「どんな体をつくるか」のほうがずっと大事だと思っています。

短期間での急激な減量はリバウンドのリスクを高めることが、多くの研究で示されています。

この記事では、理学療法士の視点から「安全に・長続きする・リバウンドしにくい」痩せ方について、わかりやすく解説します。

📋 この記事の内容

  1. 日本の肥満の現状
  2. 「早く痩せたい」が危ない理由
  3. リバウンドのメカニズムを知ろう
  4. 理学療法士がすすめる「安全に痩せる」運動の原則
  5. 有酸素運動のやり方・強度・頻度
  6. レジスタンストレーニング(筋トレ)の取り入れ方
  7. 食事との組み合わせで相乗効果を出す
  8. 運動を始める前のチェックポイント
  9. 自宅でできる!基本のトレーニングプログラム
  10. Q&A
  11. まとめ

🔍 日本の肥満の現状

厚生労働省の令和6年(2024年)国民健康・栄養調査によると、20歳以上の肥満者(BMI25以上)の割合は男性32.4%、女性19.3%にのぼります。男性は3人に1人が肥満という計算です。[1]

年代別にみると、男性は50歳代が最も多く38.3%、次いで40歳代が35.8%。女性は70歳以上が22.8%と最も多くなっています。[1]

また、同調査では運動習慣のある人は男性36.2%、女性28.6%にとどまり、特に男性30歳代・女性20歳代で最も低い結果が出ています。「運動しなければ」と思っていても、なかなか続けられていない方が多いのが実情です。[2]

💡 BMI(Body Mass Index)とは?
体重(kg)÷身長(m)² で計算する肥満度の指標。
18.5未満 → やせ 18.5〜25未満 → 普通 25以上 → 肥満

⚠️ 「早く痩せたい」が危ない理由

「食事を減らして、毎日ウォーキングすれば痩せる」——それ自体は間違いじゃないんです。実際、体重は落ちる。でも問題は、そのやり方だと脂肪と一緒に筋肉も落ちてしまうことなんですよね。

回復期のリハビリ病院で18年働いていると、入院中に体重が落ちた患者さんを退院後に外来で見ることがあるんですが、体重より筋肉量の低下のほうがよっぽど深刻だったりします。体重という数字だけに目がいってしまうと、本当に大事なことを見落としてしまう。ダイエットでも、それは同じだと思っています。

原因はだいたい同じで、「食事を極端に減らす+有酸素運動をがんばる」という組み合わせです。確かに短期間で体重は落ちる。でも筋肉量が一緒に減るので、半年もすると以前より基礎代謝が低下した体になってしまっている。そこで食事が元に戻ると、一気にリバウンドしてしまうんです。

「とにかく体重を落とす」ではなく「どんな体になるか」を意識することが本当に大事だと実感しています。

🔄 リバウンドのメカニズムを知ろう

なぜリバウンドが起きるのか。仕組みを理解すると、正しいダイエットの方向性が見えてきます。

① 筋肉量の低下 → 基礎代謝の低下

食事制限だけでダイエットをすると、脂肪だけでなく筋肉も一緒に減ってしまいます。筋肉はエネルギーを多く消費する組織であり、筋肉量が減ると基礎代謝も低下します。基礎代謝とは、何もしなくても消費されるエネルギーのことです。[3]

体重が減少していても、その過程で起きる代謝適応(Metabolic Adaptation)により、身体は消費エネルギーを減らして体重の低下に抵抗しようとします。これが、「食べる量を減らしているのに体重が落ちなくなる」原因のひとつです。[3]

② ホルモンバランスの乱れ

減量後には食欲を促進するホルモン(グレリンなど)が増加し、満腹感を伝えるホルモン(レプチンなど)が低下することが報告されています。この変化は体重が戻った後も長期間持続するため、「意志の力」だけでリバウンドを防ぐのは難しい構造になっています。[3]

③ ウエイトサイクリングの危険性

ダイエットとリバウンドを繰り返すことを「ウエイトサイクリング」といいます。システマティックレビューでは、介入終了後40〜48週(約10か月)以内に体重がほぼ元に戻る人も一定数存在することが示されており、維持のための継続的なサポートが重要であるとされています。[4]

❌ やりがちなNG例
食事を一気に減らす → 有酸素運動を毎日がんばる → 体重は落ちる → でも筋肉量も激減 → 食事が戻ったとたんにリバウンド → ダイエット前より太りやすい体に……

🏃 理学療法士がすすめる「安全に痩せる」運動の原則

肥満の運動療法として推奨されているのは、有酸素運動とレジスタンス運動(筋トレ)の組み合わせです。[5]

それぞれに異なる役割があります。

種類 主な効果 代表例
有酸素運動 脂肪燃焼・心肺機能向上・インスリン感受性の改善 ウォーキング・水中歩行・サイクリング・エアロビクス
レジスタンス運動 筋肉量の増大・基礎代謝の維持・リバウンド予防 スクワット・チューブトレーニング・ダンベル・自重トレ

有酸素運動で脂肪を燃やしながら、筋トレで筋肉量を守る・増やす。この組み合わせが、リバウンドしにくい体をつくる最も効果的な方法です。

🚶 有酸素運動のやり方・強度・頻度

推奨される強度は「ちょっときつい」くらい

肥満の運動療法で一般的に推奨されるのは中等度(3METs前後)の有酸素運動です。心拍数の目安は、50歳未満なら100〜120拍/分、50歳以上なら100拍/分未満が目安とされています。
心拍数が測りにくい場合は「となりの人と会話はできるけど歌は歌えない」程度の「ややきつい」感覚が中等度の目安です。[6]

推奨される頻度・時間

  • 運動時間:1回20分以上継続して実施
  • 頻度:週150〜300分の中強度有酸素運動(WHO身体活動ガイドライン2020)[6]
  • 具体例:ウォーキング1回20〜30分を週5回、または1日2回15〜20分を週4〜5回

✅ 膝・腰への負担が気になる方へ
肥満の方は膝や腰の関節に体重の負荷がかかりやすく、ウォーキングでも痛みが出ることがあります。水中歩行や自転車(固定式エルゴメーター)は関節への負担が少ないのでおすすめです。[5]

💪 レジスタンストレーニング(筋トレ)の取り入れ方

レジスタンストレーニングとは、筋肉に負荷をかけて筋力・筋肉量を高める運動のことです。自重(体重を使った運動)・ダンベル・チューブなどを用いて行います。

「筋トレは体重が増えそう」と敬遠される方もいますが、筋肉は脂肪より密度が高いため、見た目はスリムになりながら体重の数字がゆっくり変わるだけです。体脂肪率と筋肉量を合わせてみると、確実に「引き締まった体」に近づいています。

筋トレの推奨頻度

  • 週2〜3回(同じ筋肉群は48時間以上あけて休ませる)
  • 1種目8〜15回を2〜3セット
  • 「もう2〜3回できそう」くらいで止める強度からスタート

体重支持力を高めることが大切

肥満の方は、自分の体重を支える筋力(「体重支持力」)が弱くなりやすく、それが膝や腰などの関節障害を引き起こすことがあります。
有酸素運動だけでなく、膝周りや太ももの筋力を高めるレジスタンストレーニングを取り入れることで、関節への負担を軽減しながら運動を続けやすい体になります。[5]

🥗 食事との組み合わせで相乗効果を出す

「ダイエット=食べない」は禁物です。特に筋肉を守りながら痩せるためには、たんぱく質の摂取が重要です。

食事のポイント

  • たんぱく質をしっかりとる:体重1kgあたり1.2〜1.6gが目安(例:体重60kgなら72〜96g/日)。肉・魚・卵・大豆製品を毎食に
  • 極端なカロリー制限は避ける:1日の摂取カロリーを500kcal程度減らすことで、1か月に約2kgペースの減量が適切とされています
  • 野菜・食物繊維を先に食べる:血糖値の急上昇を抑え、脂肪の蓄積を防ぐ
  • ジュース・アルコールに注意:液体カロリーは気づきにくく、糖質・脂質の過剰摂取につながりやすい

💡 「少しの食事への意識+レジスタンストレーニング」が長期的には最強
短期的な体重減少を狙うより、食事を「やめる」のではなく「選ぶ」ようにして、筋肉量を維持しながらゆっくり変化させる方が、1年後・3年後の自分の体には確実につながります。

🩺 運動を始める前のチェックポイント

肥満の方が運動療法を開始するにあたっては、まずメディカルチェックを行うことが推奨されています。[5] 特に以下の方は、医療機関に相談してから始めましょう。

  • 高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病がある方
  • 心疾患(狭心症・不整脈など)の既往がある方
  • 膝・腰・股関節に痛みや障害がある方
  • 睡眠時無呼吸症候群の疑いがある方
  • BMIが35以上(高度肥満)の方

⚠️ 運動中止の目安
胸痛・動悸・強い息切れ・めまい・ふらつきが出た場合は、すぐに運動を中止して医療機関を受診してください。

🏠 自宅でできる!基本のトレーニングプログラム

以下は、関節への負担を考慮しながら筋肉量を維持・増加させるためのプログラム例です。初心者の方でも取り組みやすい内容にしています。

🔵 ウォームアップ(5分)

  • その場足踏み:2分
  • 肩まわし・腰の回旋:各1分
  • 足首・膝の屈伸:2分

🟢 レジスタンストレーニング(15〜20分) 週2〜3回

種目 回数・セット数 ポイント
椅子スクワット 10〜15回 × 2セット 椅子から立ち上がる動作をゆっくりと。膝がつま先より前に出すぎないように注意
壁押し腕立て 10〜15回 × 2セット 壁に向かって立ち、両手をついて肘の曲げ伸ばし。床の腕立てが難しい方向け
ヒップリフト 10〜15回 × 2セット 仰向けで膝を曲げ、お尻を持ち上げる。お腹・お尻・太もも裏のトレーニング
チューブロウイング 10〜15回 × 2セット チューブを柱などに固定して引く。背中・肩まわりの筋力トレーニング
かかと上げ(カーフレイズ) 15〜20回 × 2セット 立ってかかとを上げ下げ。ふくらはぎを鍛え、下肢の血流を促進

🔴 有酸素運動(20〜30分) 週3〜5回

  • ウォーキング(「ちょっとはやい」と感じるペース)
  • 水中歩行(膝・腰に痛みがある方におすすめ)
  • 固定式自転車(室内でできて関節にやさしい)

✅ 週のスケジュール例
月:ウォーキング30分 火:筋トレ20分 水:ウォーキング30分 木:休み 金:筋トレ20分 土:ウォーキング30分 日:休みorストレッチ

❓ Q&A

Q. 体重計と体組成計、どちらを使えばいいですか?

A. ダイエット・運動療法の効果を確認するには、体組成計を強くおすすめします。体重の数字だけを見ていると、筋肉が増えて体脂肪が減っていても「体重が変わらない」と誤解してモチベーションが下がることがあります。体脂肪率・筋肉量・基礎代謝量も合わせて把握することで、運動と食事の成果を正確に評価できます。毎朝同じ時間帯に測定すると変化が見えやすくなります。

Q. 筋トレをすると体重が増えるって本当ですか?

A. 一時的に筋肉量が増えることで体重が増えることはありますが、筋肉は脂肪よりも密度が高いため見た目は引き締まります。また、筋肉量が増えると基礎代謝が上がり、中長期的には脂肪が落ちやすい体になります。体重の数字よりも、体脂肪率や見た目の変化を優先して評価することが大切です。

📝 まとめ

  • 肥満の方は男性32.4%・女性19.3%(令和6年調査)と依然として多い
  • 食事制限だけの急激なダイエットは筋肉量の低下→基礎代謝低下→リバウンドの悪循環を生む
  • 肥満の運動療法は有酸素運動+レジスタンストレーニングの組み合わせが推奨されている
  • 有酸素運動は週150〜300分、筋トレは週2〜3回が目安(WHO身体活動ガイドライン2020)
  • 食事はたんぱく質をしっかりとりながら、500kcal程度の緩やかな制限にとどめる
  • 体重の数字だけでなく、体脂肪率・筋肉量の変化も確認することが大切
  • 生活習慣病・関節疾患がある方は、運動開始前に医師への相談を

「少しの食事への意識」と「レジスタンストレーニング」の継続は、効果がすぐに見えにくいかもしれません。でも、1年後・3年後の体の変化は、急激なダイエットを繰り返した場合と大きく変わってきます。

焦らず、体と対話しながら、長期的な視点で取り組んでみてください。あなたの身体は必ず応えてくれます。

📚 参考文献

  1. 厚生労働省「令和6年国民健康・栄養調査結果の概要」2025年
  2. 厚生労働省「令和5年国民健康・栄養調査結果の概要」2024年
  3. Martínez-Gómez MG, Roberts BM. Metabolic Adaptations to Weight Loss: A Brief Review. J Strength Cond Res. 2022;36(10):2970-2981. doi:10.1519/JSC.0000000000003991
  4. Colombo CM, et al. Understanding weight regain after a nutritional weight loss intervention: Systematic review and meta-analysis. Clin Nutr ESPEN. 2022;49:463-472.
  5. 日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン2022」2022年12月(2023年4月全文公開)
  6. World Health Organization. WHO guidelines on physical activity and sedentary behaviour. Geneva: WHO; 2020.

⚠️ 免責事項:本記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、医療行為・診断・治療の代替となるものではありません。症状や疾患がある方、薬を服用中の方は、必ず医師・医療専門家にご相談のうえ運動を開始してください。本記事の情報を参考にされる場合は、ご自身の責任においてご活用ください。

この記事を書いた人
理学療法士 18年目
とっち

回復期リハビリテーション病院勤務18年目の理学療法士。
・脳卒中認定理学療法士
・3学会合同呼吸療法認定士
査読付き論文投稿・学会発表経験を活かし、エビデンスに基づいた医療情報を一般の方にもわかりやすく発信しています。

「リハビリと身体のケアラボ」では、身体の痛み・リハビリ・介護保険・健康づくりをわかりやすく解説。より専門的な臨床・エビデンスの深掘りはnoteで発信しています。

▶ note(専門職の方向け):https://note.com/kind_badger1535

とっちをフォローする
セルフケア・リハビリ身体の仕組みと健康

コメント