✍️ この記事を書いた人
とっち|理学療法士
回復期リハビリテーション病院 勤務18年目 / 🧠 脳卒中認定理学療法士 / 🫁 3学会合同呼吸療法認定士
学会発表5回・論文投稿2回。病棟では排便管理の問題がリハビリ継続に直結する場面を日々経験している。
ブログ:リハビリと身体のケアラボ(tocchi-fm-1111.com)
📝 はじめに——現場から
正直に言うと、18年前の新人のころ、便秘をリハビリと結びつけて考えたことなんて一度もなかったんです。
あれは入職して4〜5年目の秋ごろ。70代の脳梗塞後の男性患者さんと、毎日歩行練習をしていました。歩行距離は確実に伸びているのに、本人の顔がどこかすっきりしない。「先生、お腹が重くて、歩くのがしんどいんよ」とぼそっと言われたんです。看護記録を確認したら、なんと6日間排便なし。そのうえ腹部膨満が強くて、腸が張りすぎて横隔膜が圧迫され、呼吸も浅くなっていました。
リハビリの評価で呼吸数が18回/分→22回/分に増えていたのに、そこに気づけていなかった。排便ケアに介入してから3日後、その患者さんがトイレから出てきて「すっきりした!今日は歩けそうや」と笑顔で言ったとき、やっと腸とリハビリがつながった気がしました。
「なんかしんどい」の裏に、便秘が隠れていることは珍しくない——これ、教科書には書いてないんですよね。
「3日以上お通じがない」「いきんでも出ない」「お腹が張って不快」——便秘に悩んでいる方は非常に多く、特に高齢者・入院患者さん・身体的な動きが制限されている方に深刻な問題として現れます。
便秘を「ただの不快感」と放置していると、腸内に有害物質が蓄積して免疫力が低下したり、いきみによる血圧上昇が脳血管疾患リスクを高めたりと、全身の健康に悪影響を及ぼすことが知られています。
この記事では、回復期リハビリ病院で18年間、便秘に悩む患者さんのリハビリを支えてきた理学療法士の視点から、便秘の本当の原因と、運動・食事・生活習慣によるアプローチを専門的かつわかりやすく解説します。薬に頼りたくない方・薬を使いながらでも効果を高めたい方、ぜひ最後まで読んでみてください。

📋 この記事の目次
- 便秘とは何か——定義と種類を正しく理解する
- なぜ便秘になるのか?——特にリハビリ患者・高齢者に多い原因
- 現場で目の当たりにした「動けないと腸も動かない」リアル
- 運動によるアプローチ——腸を動かす体の使い方
- 食事によるアプローチ——腸内環境を整える食べ方の工夫
- 日常生活で取り入れやすい改善の工夫10選
- よくある質問(Q&A)
- まとめ
1. 便秘とは何か——定義と種類を正しく理解する
「便秘」という言葉は日常的に使われますが、医学的な定義は少し異なります。日本の最新ガイドライン「便通異常症診療ガイドライン2023(日本消化管学会)」では、以下の6項目のうち2項目以上を6か月以上前から満たし、かつ直近3か月間は症状がある場合を「慢性便秘症」と定義しています[1]。
| 診断基準(Rome IV基準より) | 内容 |
|---|---|
| C1 便形状 | 排便の1/4超の頻度で兎糞状・硬便 |
| C2 過度のいきみ | 排便の1/4超の頻度で強くいきむ |
| C3 残便感 | 排便後も残っている感じがある |
| C4 閉塞感 | 肛門・直腸に塞がった感じがある |
| C5 用手的排便介助 | 摘便・骨盤底の補助などが必要 |
| C6 排便回数 | 週3回未満の排便 |
便秘には大きく以下の種類があります。種類によってアプローチが異なるため、自分がどのタイプかを把握することが対策の第一歩です。
🟢 弛緩性便秘(最も多いタイプ)
大腸の蠕動(ぜんどう)運動が低下し、便の移動が遅くなって硬くなるタイプ。高齢者・運動不足の人・入院中の人に多く、リハビリ患者さんの便秘の大半はこのタイプです。腹筋力の低下・水分不足・食物繊維不足が主な原因です。
🟠 直腸性便秘(排便困難型)
便意を感じても排出できないタイプ。直腸に便が届いても肛門の括約筋や排便動作(前傾姿勢・腹圧)がうまく機能しないことが原因です。脳卒中後の患者さんや、寝たきりでトイレ姿勢が取れない方に多く見られます。
🔴 薬剤性便秘
服用している薬の副作用で便秘になるタイプ。抗コリン薬(パーキンソン病の治療薬など)・オピオイド系鎮痛薬(モルヒネなど)・向精神薬・一部の降圧薬などが腸の蠕動を抑制します。多剤服用(ポリファーマシー)になりやすい高齢の入院患者さんに特に多いです。
🟣 症候性便秘(二次性便秘)
糖尿病・甲状腺機能低下症・パーキンソン病・脊髄損傷など、基礎疾患の症状として起こる便秘。根本的な疾患の管理が重要で、リハビリ患者さんにはこの要素が絡むケースも少なくありません。
⚠️ 注意:最近急に便秘になった・便に血が混じる・体重が急激に減っているなど、器質的疾患(大腸がん・炎症性腸疾患など)のサインが疑われる場合は、自己ケアより先に消化器内科での精査が必要です。本記事は機能的・生活習慣的な便秘の改善を主な対象としています。
2. なぜ便秘になるのか?——特にリハビリ患者・高齢者に多い原因
便秘の原因は単純ではなく、複数の要因が絡み合っています。特にリハビリ対象者や高齢者に多い原因を整理します。
① 不動・臥床による腸蠕動の低下
ウォーキングやジョギングなどの全身運動は、腸に物理的な振動・刺激を与え、蠕動運動を活発にします[2]。逆に、座りっぱなしや寝たきりの状態が続くと腸への刺激が激減し、蠕動運動が著しく低下します。便が腸内に長くとどまるほど水分が吸収されて硬くなり、さらに排出しにくくなる悪循環が生じます。
② 腹筋力・骨盤底筋力の低下
排便には「便を直腸まで送る大腸の蠕動」と「腹圧をかけて便を押し出す腹筋力」の両方が必要です。腹筋が弱まると、十分な腹圧がかけられず、いきんでも出にくい状態になります[3]。特に高齢者・脳卒中後の方・長期臥床後の方では、腹筋群(腹直筋・腹横筋・腹斜筋など)と骨盤底筋の同時低下が起こりやすいです。
③ 自律神経の乱れ(副交感神経の低下)
腸の蠕動は副交感神経の支配を受けており、「リラックス時に腸が動く」という仕組みがあります。ストレス・不安・痛み・入院環境の緊張などで交感神経優位になると腸の動きが抑制されます。また、副交感神経の活動は男性では30代、女性では40代をピークに加齢とともに低下することも知られています[4]。
④ 排便姿勢・排便習慣の問題
病院のポータブルトイレや和式トイレでの排便、あるいは「起き上がれないためベッド上での排便」は、本来の排便に最適な前傾姿勢・足底接地ができず、直腸と肛門の角度(直腸肛門角)が開きにくくなります。また、「便意を感じたら我慢せずトイレに行く」という習慣が崩れると、次第に便意自体を感じにくくなる悪循環が起きます。
⑤ 食事量・水分量の減少
入院・疾患・食欲不振・嚥下機能低下などにより食事量が減ると、便の材料となる食物繊維や水分が不足します。食事量が少なければ大腸への刺激も減り、排便回数が減るのは当然の帰結です。前回の記事(#86リハビリ効果を高める食事)でも解説した「低栄養・摂取量不足」の問題が、腸の動きにも直接影響します。
3. 現場で目の当たりにした「動けないと腸も動かない」リアル
🏥 現場エピソード(とっちの実体験)
「先生、お腹が張って、ご飯も食べたくないんです。」
回復期病棟へ転院してきた70代女性の患者さんが、最初に相談してくださった悩みでした。
脳梗塞後のリハビリ目的で入院されましたが、急性期病院での安静や活動量の低下もあり、入院時には1週間以上排便がありませんでした。腹部の張りや食欲低下も強く、「歩く以前に身体が重たい」と話されていたことを覚えています。
最初は下剤の調整で改善することを期待しましたが、大きな変化はありませんでした。
そこで私は、「便秘は薬だけでは解決しないかもしれない」と考え、生活全体を見直すことにしました。
医師による内服調整に加え、看護師・管理栄養士とも相談しながら、離床時間を少しずつ増やし、歩行練習では腹部を意識した体幹の動きを取り入れました。食前には前かがみの姿勢で座る時間を確保し、食事内容も食物繊維を意識したものへ調整していただきました。
すると約2週間後、ご本人が笑顔で、
「今日は自然に出たんです。」
と教えてくださいました。
その後は毎日、あるいは2日に1回の自然排便がみられるようになり、「お腹が楽になると、ご飯も食べられるし、リハビリも頑張れる」と話されるようになりました。
この症例を通して改めて感じたのは、便秘は腸だけの問題ではないということです。
身体を動かすこと、しっかり食べること、良い姿勢で過ごすこと、生活リズムを整えること。
その一つひとつが重なって初めて、腸の働きも回復していきます。
私は今でも、便秘の患者さんを担当するとき、「何日出ていませんか?」だけではなく、「最近どれくらい動けていますか?」「食事は食べられていますか?」と生活全体を確認するようにしています。
リハビリは歩けるようになるためだけのものではありません。
「食べる」「出す」「眠る」といった当たり前の日常を取り戻すことも、回復期リハビリの大切な役割だと、この患者さんから改めて教えていただきました。
このような経験から、便秘対策には薬(下剤)だけに頼るのではなく、運動・食事・姿勢・生活リズムを同時に整える多角的なアプローチが重要だと確信しています。以下では、具体的な方法を解説します。
4. 運動によるアプローチ——腸を動かす体の使い方
便秘と運動の関係は医学的にも認められており、便通異常症診療ガイドライン2023でも「生活習慣の改善(運動を含む)」が治療の第一ステップとして位置づけられています[1]。
① 有酸素運動——腸を揺らし、蠕動を促す
ウォーキング・水泳・サイクリングなどの有酸素運動は、全身の血流を改善して腸に物理的振動と刺激を与え、蠕動運動を活発にします。有酸素運動は週150〜300分(1日20〜40分×5日程度)が推奨されています[2]。
🚶 ウォーキングを便秘対策に活かすポイント
-
- 食後30〜60分後が特に効果的(胃・結腸反射が起きやすい時間帯)
- 速歩きでなくても、普通歩行でも腸への刺激は十分得られる
- 「毎日10分」から始め、徐々に時間を延ばすのがリハビリ的にも安全
- 歩行が難しい場合は「室内歩行・車椅子駆動・上肢運動」でも代替可能

② 腹筋・体幹トレーニング——腹圧を高めて便を押し出す力を作る
排便時の「いきむ力」の源が腹筋です。腹筋を刺激すると腹部の血行が促進され、腸と密接な自律神経にも作用して排便を促します[3]。激しいトレーニングは必要なく、寝たままできる体操が有効です。

| 体操名 | やり方 | おすすめ対象 |
|---|---|---|
| 膝抱え体操 | 仰向けで両膝を胸に引き寄せ10〜20秒キープ×5回 | ベッド上でも可・全対象者 |
| 骨盤ひねり体操 | 仰向けで両膝を立て、左右に倒す×10回 | 腰痛がない方、臥床中の方 |
| 腰ひねり体操(座位) | 椅子に座り、肩幅に足を開いてゆっくり腰を左右にひねる×10回 | 座れる方・立位困難な方 |
| 足踏み体操 | 椅子に座って膝を交互に持ち上げる×20回 | 腸腰筋の活性化・歩行補助 |
| 腹式深呼吸 | 鼻から吸って腹を膨らませ、口からゆっくり吐く×10回 | 全対象者・副交感神経活性化 |
③ 腹部マッサージ——外から腸を刺激する
仰向けで、人差し指〜薬指の4本指をへその周りにあて、「の」の字を描くように時計回りにゆっくり30回マッサージします。大腸の走行(上行→横行→下行結腸)に沿った方向であるため、腸の内容物の移動を促します[5]。
💡 タイミングのコツ:腹部マッサージは朝起きたとき(ベッドの中)・入浴中・就寝前のリラックスタイムが最も効果的です。食直後・腹痛がある場合・腸疾患がある場合は実施前に医師に確認してください。
④ 排便姿勢の工夫——「前傾+足台」で直腸肛門角を開く
排便に最適な姿勢は、前傾姿勢+足底が床についた状態(いわゆる和式トイレに近い体勢)です。この姿勢により直腸と肛門の角度(直腸肛門角)が開き、便が通りやすくなります。洋式トイレでも、足の下に踏み台(15〜20cm程度)を置くだけで直腸肛門角が改善され、いきみ効率が高まります。病院でポータブルトイレを使う際も、前傾姿勢の声かけが有効です。
5. 食事によるアプローチ——腸内環境を整える食べ方の工夫
① 食物繊維を「2種類」バランスよく摂る
食物繊維には性質の異なる2種類があります。両方をバランスよく摂ることが便秘改善の基本です[6]。
| 種類 | 働き | 多く含む食品 |
|---|---|---|
| 不溶性食物繊維 | 水分を吸収して便のかさを増やし、腸壁を刺激して蠕動を促進 | 玄米・雑穀・ごぼう・きのこ・大豆・ブロッコリー |
| 水溶性食物繊維 | 水に溶けてゲル状になり便を柔らかくし、善玉菌のエサとなり腸内環境を整える | オクラ・わかめ・昆布・りんご・バナナ・もち麦・大麦 |
日本人の食物繊維摂取量の目標値は成人で1日21g以上(男性)・18g以上(女性)ですが(日本人の食事摂取基準2020年版)、実際の平均摂取量は15g前後と不足がちです。もち麦・雑穀米・ごぼうを意識的に取り入れるだけで大幅に補えます。
② 水分補給——便を柔らかく保つ最重要ステップ
水分不足は便を硬くする最大の原因の一つです。腸で水分が過剰に吸収されると便が乾燥して硬くなり、蠕動が起きても排出できない状態になります。目安は1日1.5〜2Lの水分摂取ですが、特に朝起きたときにコップ1杯の水(200ml)を飲むと、睡眠中に消費した水分を補給しながら「胃・結腸反射」(食べ物が胃に入ると腸に排便を促す信号が送られる反射)を刺激でき、朝の排便リズムが作りやすくなります[5]。
💧 水分補給の工夫ポイント
- 朝起きたらまずコップ1杯の水または牛乳(冷たい方が腸を刺激しやすい)
- 食事中・食後・入浴後・運動後のこまめな補給を習慣化
- 高齢者は口渇感が低下しているため「喉が乾く前に飲む」意識が重要
- カフェインの過剰摂取は利尿作用があるため、水・麦茶・ほうじ茶を中心に
- 心不全・腎不全で水分制限がある方は必ず主治医の指示に従う
③ プロバイオティクス・プレバイオティクス——腸内フローラを整える
腸内には無数の腸内細菌(腸内フローラ)が住んでおり、そのバランスが腸の機能に大きく影響します。プロバイオティクス(生きた有益菌)とプレバイオティクス(善玉菌のエサ)を意識した食事が、腸内環境の改善につながります。
🦠 プロバイオティクス食品(善玉菌を補給)
ヨーグルト(ビフィズス菌BB536入りが特におすすめ)・納豆・味噌・キムチ・ぬか漬け・甘酒
🌱 プレバイオティクス食品(善玉菌のエサ)
玉ねぎ・にんにく・アスパラガス・バナナ・きな粉・はちみつ・難消化性デキストリン(食物繊維サプリ)・フラクトオリゴ糖
ガイドライン2023では、プロバイオティクスは代替・補助治療として位置づけられており、エビデンスレベルは高くありませんが、副作用が少なく日常的に取り入れやすい点から継続的な摂取が推奨されています[1]。継続することで2〜4週間後から効果を感じる方が多いとされています。
④ 朝食を抜かない——胃・結腸反射を活用する
「食べ物が胃に入るたびに腸に蠕動を促す信号が送られる」これが胃・結腸反射です。特に空腹状態から食事をとる「朝食」時に最も強く起こります。朝食後にトイレに行くルーティンを作ることが、便意リズムの形成に非常に有効です。「毎日同じ時間に食べて、同じ時間にトイレに行く」という習慣が腸のリズムを整えます。
6. 日常生活で取り入れやすい改善の工夫10選
理論より実践。現場でも患者さんや家族の方によくお伝えしている、無理なく続けられる工夫を10個まとめました。
✅ ①朝起きたらまずコップ1杯の水
胃・結腸反射を引き起こし、朝の自然な便意を促す最もシンプルな習慣。冷水(常温〜やや冷たい程度)が腸を刺激しやすい。
✅ ②朝食後15〜30分は座る時間を作る
食後すぐに横にならず、椅子やベッドの端に座って重力を利用する。腸内容物の下行を助け、便意が来やすくなる。
✅ ③毎日ヨーグルトを食事に加える
ビフィズス菌・乳酸菌を含むヨーグルトを1日100〜200g継続摂取。2〜4週間で腸内環境の変化を感じやすい。プレーンタイプにはちみつ(フラクトオリゴ糖)を加えると相乗効果が期待できる。
✅ ④白米の一部をもち麦・雑穀に置き換える
もち麦は水溶性食物繊維(β-グルカン)が豊富で、ご飯に混ぜるだけで手軽に摂取量を増やせる。味も変わらず続けやすい。
✅ ⑤毎食「副菜」に海藻・きのこ・根菜を入れる
わかめの味噌汁・きのこの炒め物・ごぼうや人参のきんぴらなど、副菜に食物繊維が豊富な食材を意識的に加える。スーパーの惣菜コーナーで探すのも手。
✅ ⑥食後10〜20分のウォーキング
食後に短距離でも歩くと、胃・結腸反射で高まった腸の蠕動をさらに後押しできる。屋外が難しければ室内をゆっくり歩くだけでも効果がある。
✅ ⑦寝る前の「膝抱え体操」+腹部マッサージ
就寝前5分間、仰向けで膝を胸に引き寄せる体操と「の」の字マッサージをセットで行う。副交感神経を優位にして腸を緩め、翌朝の便通を助ける。
✅ ⑧トイレは足台を使って「前傾+足底接地」
洋式トイレに市販の踏み台(高さ15〜20cm)を置くだけで、直腸肛門角が開いて便通がスムーズになる。「スクワッティ・ポッティ」のような専用足台も市販されている。
✅ ⑨便意を感じたらすぐトイレへ——「我慢しない」
便意を我慢し続けると直腸の感受性が鈍くなり、やがて便意自体を感じにくくなる。「ちょっと面倒でもすぐトイレへ」が直腸性便秘の予防にも重要。
✅ ⑩排便日誌をつけて「自分のリズム」を把握する
日付・排便の有無・便の硬さ・食事内容・運動量を簡単にメモする習慣をつけると、「何をするとお通じがよくなるか」が見えてきて対策を立てやすくなる。スマートフォンのメモアプリでも十分。
7. よくある質問(Q&A)
Q1. 下剤(便秘薬)を使いながら運動・食事改善をしてもいいですか?
はい、むしろ推奨です。便通異常症診療ガイドライン2023でも「生活習慣の改善(食事・運動)を行いながら薬物療法を並行する」というアプローチが基本とされています。下剤で排便を助けながら、同時に腸の機能を根本的に改善していく食事・運動を取り入れることで、徐々に薬の量を減らせる可能性があります。ただし、自己判断で薬を中断するのは危険ですので、変化があれば主治医に相談してください。
Q2. 高齢の親が便秘で食欲もない場合、何から始めればよいですか?
便秘と食欲不振は悪循環を起こしやすく(便秘→腹部不快感→食欲低下→食物繊維・水分不足→さらに便秘)、早めの対処が重要です。まず取り組みやすいのは①水分補給の意識化(朝1杯の水)②食後の短い歩行や姿勢保持③ヨーグルトや柔らかいきのこ・海藻の追加です。食欲がない場合は無理に食事量を増やすより、少量でも質の高いものを選ぶ(前回の#86記事参照)ことが先決です。改善がない場合や症状が重い場合は医師への相談が必要です。
8. まとめ
📝 この記事のまとめ
- 便秘には弛緩性・直腸性・薬剤性・症候性と種類があり、タイプに応じた対策が重要
- リハビリ患者・高齢者の便秘の最大の原因は「不動・臥床による腸蠕動の低下」と「腹筋力の低下」
- ガイドライン2023でも「生活習慣改善(食事・運動)」が治療の第一ステップ
- 有酸素運動(特に食後のウォーキング)・腹筋体操・腹部マッサージが腸蠕動を促す
- 排便姿勢は「前傾+足底接地(踏み台)」が直腸肛門角を開いて効果的
- 食物繊維は不溶性・水溶性の2種類をバランスよく摂ることが大切
- 朝の1杯の水+朝食後のトイレ習慣で胃・結腸反射を活用する
- プロバイオティクス(ヨーグルト・発酵食品)の継続摂取で腸内環境を整える
- 便意を我慢しない・排便日誌で自分のリズムを把握するなど習慣づくりも重要
- 薬と生活習慣改善は並行して行うことができ、組み合わせることで根本的な改善につながる
便秘は「ただの不快感」ではなく、リハビリ効果・体力・免疫力・QOL(生活の質)に直結する重要な問題です。「動くこと」「食べること」「リズムをつくること」——この3つが腸の健康を支える柱です。一度にすべてを変えようとせず、まず「朝起きたら水を1杯飲む」から始めてみてください。続けることで確実に腸は応えてくれます。
次回は「#97 カルシウムと骨粗しょう症|効果的な摂取方法」をお届けします。食事から骨を守る具体的な摂取戦略を解説予定です。お楽しみに!
📚 参考文献
- 日本消化管学会編「便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症」南江堂(2023)/ Minds収載(2024年1月)
- むさしの内視鏡・胃腸内科クリニック「便秘解消のための運動」https://www.musashino-clinic.com/constipation/exercise/(2023)
- 健栄製薬「便秘と腹筋の関係」https://www.kenei-pharm.com/ebenpi/column/column_70/(2022)
- オムロン ヘルスケア「高齢期に増加する便秘。腸の老化をくい止めよう」https://www.healthcare.omron.co.jp/resource/column/topics/131.html
- 第一三共ヘルスケア「便秘の予防」くすりと健康の情報局 https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/health/symptom/14_benpi/index3.html
- 金沢消化器内科・内視鏡クリニック「便秘による運動不足と腸内環境の関係」https://naishikyo.or.jp/intestines/constipation-exercise-gut-health/(2025)
- 高野正太「慢性便秘症に対する食事療法,運動療法,理学療法」日本大腸肛門病会誌 72:621-627(2019)
- 健康長寿ネット「便秘」公益財団法人長寿科学振興財団 https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/rounensei/benpi.html
【免責事項】本記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、特定の疾患の診断・治療を目的とするものではありません。便秘の症状・原因は個人によって異なり、器質的疾患(大腸がんなど)が原因の場合は医療機関での検査・治療が必要です。持病をお持ちの方・服薬中の方(特に腎不全・心不全・腸疾患)は、食事・水分摂取・運動の変更前に必ず主治医・管理栄養士にご相談ください。本記事の情報を実践される際は自己責任のもとご判断いただき、体調に異変を感じた場合は速やかに医療機関を受診してください。
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