✍️ この記事を書いた人
とっち|理学療法士
回復期リハビリテーション病院 勤務18年目 / 🧠 脳卒中認定理学療法士 / 🫁 3学会合同呼吸療法認定士
学会発表5回・論文投稿2回の経験を持つ。脳卒中後遺症の患者さんを日々支援するなかで、認知症予防の重要性を強く実感している。
ブログ:リハビリと身体のケアラボ(tocchi-fm-1111.com)
💬 はじめに——現場で感じてきたこと
去年の秋口のことです。外来リハビリで担当していた70代の男性が、ある日こんなことを言ったんですよ。「先生、最近なんか頭がぼーっとする気がして。これ、認知症の始まりですかね」って。冗談めかして笑いながら言うんですけど、目が少し不安そうで。
カルテを確認したら、HbA1c(血糖コントロールの指標)が7.8%と高め、収縮期血圧も月平均で145mmHgをずっと超えていた。食事を聞くと「野菜は面倒だから、だいたいパンと惣菜で済ませてる」とのことで。
正直に言うと、その時の自分は歩行練習やバランス訓練のことで頭がいっぱいで、栄養や血管リスクへの意識が薄かった。「もっと早い段階から食事の話もしておけばよかった」と、今でも少し引っかかっています。18年やってきて、まだこういう反省があるんですよね。
運動だけがリハビリじゃない。脳を守るのも「毎日の食事」から始まっている——この記事で伝えたいのは、そういうことです。
「最近、物忘れが増えてきた気がする」「親が認知症になるのではないか、と不安」——そんな思いを抱えている方は多いのではないでしょうか。
認知症はかつて「加齢による避けられない変化」と考えられていましたが、2024年に世界的医学誌『Lancet』が発表した最新報告では、認知症リスクの約45%はコントロール可能な生活習慣要因によるものであることが示されました[1]。つまり、食事・運動・睡眠などの生活習慣を整えることで、認知症の発症リスクを大きく下げられる時代になっているのです。
この記事では、脳卒中認定理学療法士として18年間、脳や神経の回復を支援してきた経験と、最新のエビデンス(科学的根拠)に基づき、認知症予防に効果的な食事と生活習慣を詳しく解説します。
📋 この記事の目次
- 「認知症は予防できる」——2024年Lancetが示した衝撃の数字
- 脳に効く食事パターン——地中海食・MIND食とは?
- 認知症予防に特に重要な栄養素を深掘り
- 避けたほうがいい食習慣——脳にダメージを与えるもの
- 現場で感じた「食べ方と脳の関係」
- 食事以外の生活習慣——運動・睡眠・社会参加
- 今日から始める認知症予防の実践チェックリスト
- よくある質問(Q&A)
- まとめ
1. 「認知症は予防できる」——2024年Lancetが示した衝撃の数字
2024年8月、英医学誌『The Lancet』の認知症委員会(Lancet Commission on Dementia Prevention, Intervention, and Care)は最新の知見をまとめた報告書を発表しました[1]。そこで示された「14のコントロール可能な認知症リスク因子」が世界中で話題になっています。

| 時期 | リスク因子(2024年版) |
|---|---|
| 幼少〜若年期 | 低い教育水準 |
| 中年期(45〜65歳) | 難聴・高血圧・肥満・過度の飲酒・脳外傷・身体活動不足・糖尿病・喫煙・うつ病・高LDLコレステロール(2024年新追加) |
| 高齢期(65歳以上) | 社会的孤立・身体活動不足・大気汚染・視力低下(2024年新追加) |
重要なのは、これらの多くが食事・運動・生活習慣で改善できる要因である点です。高血圧・高LDLコレステロール・肥満・糖尿病はすべて食事と密接に関係しています。また、喫煙・過度の飲酒・身体活動不足も生活習慣の見直しで変えられます。
💡 ポイント:2024年版Lancetでは「高LDLコレステロール」が新たに加わりました。LDLコレステロールはアルツハイマー病の原因とされるアミロイドβやタウ蛋白質の蓄積にも直接関係すると報告されており、コレステロール管理が認知症予防においても重要であることが示されています。
2. 脳に効く食事パターン——地中海食・MIND食とは?
認知症予防の食事研究で世界的に注目されているのが「地中海食」と「MIND食」です。単一の食品への注目より、食事全体のパターン(組み合わせ)が重要であることが明らかになっています[2]。
① 地中海食(Mediterranean Diet)
イタリア・ギリシャなど地中海沿岸諸国の伝統的な食事スタイル。以下の特徴があります。
- 🐟 魚介類・豆類・野菜・果物・全粒穀物を豊富に摂る
- 🫒 油はオリーブオイルを主に使用(一価不飽和脂肪酸・ポリフェノールが豊富)
- 🥩 赤肉・加工肉・乳製品・砂糖は少量に抑える
- 🍷 アルコールは少量のワインを食事と共に(過剰摂取は逆効果)
アルツハイマー病のリスク低減との関連性が複数の観察研究で確認されており、世界的に最も支持されている食事パターンのひとつです。
② MIND食(Mediterranean-DASH Intervention for Neurodegenerative Delay)
「地中海食」と「DASH食(高血圧予防食)」を組み合わせ、さらに認知症予防のエビデンスが強い食品を重点的に盛り込んで構築された食事法です。特徴的なのが「食べるべき10食品群」と「控えるべき5食品群」に明確に分けて示している点です。
✅ 積極的に食べたい10食品群(MIND食)
- 緑黄色野菜(週6回以上)——特にほうれん草・ケール・小松菜などの葉物野菜
- その他の野菜(毎日1回以上)
- ナッツ類(週5回以上)——くるみ・アーモンドなど
- ベリー類(週2回以上)——ブルーベリー・ストロベリー
- 豆類(週4回以上)——大豆・ひよこ豆・レンズ豆
- 全粒穀物(1日3回以上)——玄米・全粒粉パンなど
- 魚(週1回以上)——青魚が特に推奨
- 鶏肉・七面鳥(週2回以上)
- オリーブオイル(主要な料理用油として)
- ワイン(少量のみ・飲める方だけ)
⛔ 控えたい5食品群(MIND食)
- バター・マーガリン(1日1大さじ未満)
- チーズ(週1回未満)
- 赤肉・加工肉(週4食未満)
- 揚げ物・ファストフード(週1回未満)
- 菓子・お菓子(週5個未満)
⚠️ 注意:2023年NEJMに発表されたランダム化比較試験(RCT)では、MIND食単独による認知機能改善効果は対照群と有意差がなかった報告もあります[3]。一方で多数の観察研究では関連が認められており、「食事パターン全体を整えること」の重要性を否定するものではありません。現時点では「単一の食事法が認知症を完全に予防する」と断言できる段階ではなく、食事・運動・睡眠などの複合的な生活習慣改善が鍵であると考えられています。
③ 日本人向け:久山町研究が示す食事パターン
日本の代表的な大規模疫学研究「久山町研究」(九州大学・福岡県久山町、1961年〜継続中)の知見からも、認知症予防に関わる食習慣が報告されています。認知症リスクが低い食習慣として「大豆・大豆製品、緑黄色野菜、淡色野菜、藻類(海藻)、牛乳・乳製品、果物、芋類、魚の摂取量が多く、米・酒の摂取量が少ない」という多様性のある食習慣が示されています[4]。また国立長寿医療研究センターの研究では、食品摂取の多様性が最も高いグループは最も低いグループに比べて認知機能低下のリスクが44%低かったという結果も報告されています[5]。
共通のメッセージは明快です。「何か特定の食品を食べれば認知症を防げる」というものは存在せず、多様な食品をバランス良く食べることが認知機能の維持に結びついているのです。
3. 認知症予防に特に重要な栄養素を深掘り
① DHA・EPA(オメガ3系多価不飽和脂肪酸)——脳の細胞膜を守る
DHA(ドコサヘキサエン酸)は脳の神経細胞膜の主要構成成分です。DHAが十分に存在することでシナプス(神経細胞間の情報伝達部位)の膜が柔軟に保たれ、情報処理がスムーズになると考えられています。
国立がん研究センターの多目的コホート研究では、中年期の魚介類摂取量が多いほど15年後の認知症リスクが低く、最も多いグループでは最も少ないグループに比べ認知症リスクが61%低下、DHAの摂取が多いグループでは72%のリスク低下が確認されています[6]。さらに、魚を週2皿以上食べるとアルツハイマー病発症リスクが30%低下するというメタアナリシスの結果も報告されています[7]。
🐟 DHA・EPAが豊富な食品:サバ・イワシ・サンマ・サケ・マグロ(特にトロ)・アジ。週2〜3回を目標に青魚を食卓に取り入れましょう。
② 抗酸化物質(ポリフェノール・ビタミンE・C・βカロテン)——脳の「錆び」を防ぐ
脳は体の中でも特に酸化ストレスを受けやすい臓器です。酸化ストレスとは活性酸素による細胞へのダメージのこと。抗酸化物質はこの活性酸素を中和し、脳神経の老化を遅らせる働きがあります。
🫐 ポリフェノール(特にフラボノイド)
ブルーベリー・ストロベリーなどのベリー類、緑茶(カテキン)、大豆(イソフラボン)、赤ワイン(レスベラトロール)に含まれます。MIND食でもベリー類が唯一「週2回以上」と具体的に指定されている重要な食品です。
🥕 βカロテン・ビタミンC・E
緑黄色野菜(ほうれん草・かぼちゃ・にんじん)はβカロテン・ビタミンCが豊富。ナッツ類・植物油はビタミンEの供給源。これらは脂溶性のため、オリーブオイルや良質な油と一緒に摂ると吸収率が上がります。
🫖 緑茶(EGCG)
日本の緑茶に含まれるエピガロカテキンガレート(EGCG)は強力な抗酸化作用を持ち、脳神経保護作用が注目されています。日本人の食習慣の中で、お茶を習慣的に飲むことが認知機能維持に貢献している可能性があります。
③ ビタミンB群(特にB6・B12・葉酸)——ホモシステインを下げる
アミノ酸の一種「ホモシステイン」の血中濃度が高いと、認知機能低下・認知症のリスクが上昇することが知られています。ビタミンB6・B12・葉酸は、ホモシステインを無害な形に代謝する酵素の補助因子(補酵素)として働きます。これらが不足するとホモシステインが体内に蓄積し、脳血管や神経にダメージを与えます。
🥦 ビタミンB群を含む食品
・葉酸:ほうれん草・ブロッコリー・枝豆・レバー・豆類
・B12:貝類(あさり・しじみ)・魚介類・乳製品・卵・レバー
・B6:バナナ・鶏むね肉・マグロ・さつまいも・ナッツ類
④ ビタミンD——脳神経の保護と炎症抑制
ビタミンDは骨・筋肉だけでなく、脳神経の保護にも関与します。脳内にビタミンD受容体が存在し、神経栄養因子の産生や慢性炎症の抑制に働くと考えられています。ビタミンD欠乏は認知機能低下のリスク因子として複数の研究で指摘されており、特に入院中・外出が減った高齢者は不足しやすい状況です。鮭・サンマ・きのこ類(干ししいたけ・まいたけ)・卵黄が主な食品供給源です。
4. 避けたほうがいい食習慣——脳にダメージを与えるもの
🍩 超加工食品・砂糖の過剰摂取
袋菓子・コンビニ総菜・インスタント食品など超加工食品の過剰摂取は、慢性炎症を引き起こし、インスリン抵抗性を高めます。アルツハイマー病は「第3の糖尿病」とも呼ばれることがあり、慢性的な高血糖・インスリン抵抗性が脳に与えるダメージへの注目が高まっています。
🍺 過度の飲酒
Lancet 2024でも「過度の飲酒」はコントロール可能な認知症リスク因子のひとつです。長期的な大量飲酒は脳の萎縮・記憶障害・認知症を引き起こします。「少量の飲酒は脳に良い」という説はかつてありましたが、最新の研究では「飲酒量はゼロに近いほどリスクが低い」とする見解が主流になりつつあります。
🧂 塩分の過剰摂取
塩分過多は高血圧の主要原因であり、Lancet 2024で認知症リスク因子として挙げられている高血圧につながります。脳血管性認知症の予防においても、血圧管理は最重要課題のひとつです。日本人の塩分摂取量は依然多め(平均10g/日前後)で、目標は男性7.5g・女性6.5g未満(厚生労働省・日本人の食事摂取基準2020年版)。
🧈 飽和脂肪酸・トランス脂肪酸の過剰摂取
バター・ラード・動物性脂肪の過剰摂取は、LDLコレステロール(悪玉)を上昇させます。2024年版Lancetで新たに加わった「高LDLコレステロール」は、脳血管障害だけでなくアルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβの蓄積にも関与することが示されています。
5. 現場で感じた「食べ方と脳の関係」
🏥 現場エピソード(とっちの実体験)
「同じような脳梗塞なのに、どうしてここまで違うんだろう。」
回復期病棟で働いていると、そう感じることがあります。
もちろん、脳梗塞では病変の大きさや部位が回復を左右する大きな要因です。しかし、臨床では画像だけでは説明しきれない差を感じることも少なくありません。
特に印象に残っているのは、70代女性の患者さんです。
農業を長年営まれ、自宅で育てた野菜を毎日食べ、魚も週に数回取り入れる生活を続けてこられた方でした。
MRIでは比較的広い範囲の脳梗塞でしたが、入院当初から会話はとても明瞭で、スタッフの名前もすぐに覚え、ご家族とのやり取りも自然でした。
担当医がカンファレンスで、
「もともとの認知予備能(コグニティブリザーブ)が高かったのかもしれませんね。」
と話されたことを今でも覚えています。
一方で、これまで担当した患者さんの中には、小さな脳梗塞であっても認知機能への影響が大きく出る方も少なくありませんでした。
もちろん、これは食生活だけで説明できるものではありません。
教育歴や仕事、運動習慣、社会とのつながり、持病の管理など、多くの要因が重なって認知予備能は形づくられると考えられています。
それでも、この患者さんを担当してから私は、「脳卒中は発症してからのリハビリだけではなく、発症する前の生活も大切なのだ」と考えるようになりました。
リハビリは失った機能を回復させるためのものですが、その土台となる身体や脳は、何十年という生活習慣の積み重ねによってつくられています。
この症例は、「今日の食事や運動が、10年後、20年後の自分を支えているのかもしれない」と、改めて考えるきっかけになりました。
6. 食事以外の生活習慣——運動・睡眠・社会参加
食事だけでなく、以下の生活習慣が認知症予防において同様に重要です。複数の要素を組み合わせることで相乗効果が得られる可能性があります[8]。
🏃 有酸素運動——BDNFを増やす最強の習慣
ウォーキング・水泳・サイクリングなどの有酸素運動は、脳の神経栄養因子「BDNF(脳由来神経栄養因子)」の分泌を促進します。BDNFは「脳の肥料」とも呼ばれ、海馬(記憶の中枢)の神経新生(新しい神経細胞の生成)を助けます。推奨は週150分以上の中等度有酸素運動(少し息が上がる程度のウォーキングで1日30分×5日)。
なお、Lancet 2024では「身体活動不足」が中年期・高齢期双方の認知症リスク因子として挙げられており、運動は食事と並んで最重要の予防習慣です。
😴 質の良い睡眠——脳のゴミを洗い流す
睡眠中に脳内では「グリンパティックシステム」という洗浄機構が活発に働き、アルツハイマー病の原因と考えられるアミロイドβなどの老廃物が除去されます。慢性的な睡眠不足・睡眠障害は、このシステムの機能を低下させ、アミロイドβの蓄積を促進します。7〜8時間の睡眠確保と、規則正しい睡眠リズムの維持が認知症予防の観点からも推奨されます。
👥 社会参加・知的活動——コグニティブリザーブを高める
「コグニティブリザーブ(認知的予備力)」とは、脳のダメージに対する抵抗力・代償能力のことです。豊かな社会活動・知的刺激・学習によってこの予備力が高まると考えられています。Lancet 2024でも「社会的孤立」が高齢期のリスク因子として挙げられています。地域活動・趣味・家族との交流・読書・パズルなどの知的活動の継続が助けになります。国立長寿医療研究センターの国内初の介入研究では、総合的な対策(運動・栄養・脳トレ・社会交流)を組み合わせた群で認知機能が41%向上したという報告もあります[8]。
🩺 血圧・血糖・コレステロールの管理
Lancet 2024の14因子のうち、高血圧・糖尿病・高LDLコレステロールはすべて中年期のリスク因子として明示されています。これらは自覚症状が乏しいため「サイレントキラー」とも呼ばれますが、適切に管理することで認知症リスクを下げられます。定期的な健康診断の受診と、数値が悪ければ食事・運動・必要に応じた薬物療法での管理が重要です。
7. 今日から始める認知症予防の実践チェックリスト
理論を知っても続けられなければ意味がありません。「全部やらなければ」と思わず、まず自分ができそうなものから1〜2個選んで始めましょう。
🧠 認知症予防・今日からできる行動チェックリスト
【食事】
- ☐ 週2〜3回、青魚(サバ・イワシ・サンマ)を食べる
- ☐ 毎日、緑黄色野菜(ほうれん草・ブロッコリー・にんじんなど)を食べる
- ☐ 大豆製品(豆腐・納豆・豆乳)を毎日1品取り入れる
- ☐ おやつにナッツ(くるみ・アーモンド)を取り入れてみる
- ☐ 揚げ物・菓子類・加工肉を「週3回以内」に減らす
- ☐ 料理油をオリーブオイルに切り替える(または一部使う)
- ☐ 食事の多様性を意識する(毎食「何種類食べたか」を数えてみる)
- ☐ 塩分を控えめにする(減塩醤油・出汁で旨味を出す)
【生活習慣】
- ☐ 毎日30分以上のウォーキングを習慣にする
- ☐ 7〜8時間の睡眠を確保し、就寝・起床時刻を一定にする
- ☐ 地域活動・趣味・友人との交流など社会的なつながりを保つ
- ☐ 読書・パズル・楽器・手芸など知的活動を週数回取り入れる
- ☐ 定期健診で血圧・血糖・コレステロール値を確認する
- ☐ 禁煙・節酒(大量飲酒をやめる)に取り組む
8. よくある質問(Q&A)
Q1. 認知症予防に効くサプリメントはありますか?DHAサプリは飲んだほうがいい?
DHAやビタミンB群、ビタミンDなど、認知症予防との関連が示唆されている栄養素はありますが、現時点では「このサプリメントを飲めば認知症を予防できる」と証明されたものはありません。まず食事からの摂取を第一に考え、食事だけでは不足が懸念される場合(外出が少ない・魚が苦手など)の補助として活用するのが現実的です。DHAサプリ(EPA・DHA含有のフィッシュオイル)は食事から十分に摂れない方には補助になりえますが、「サプリを飲むから食事は気にしない」という考え方は本末転倒です。また、過剰摂取による副作用(血液を固まりにくくするなど)のリスクもあるため、医師・薬剤師への相談をおすすめします。
Q2. 何歳から始めれば認知症予防になりますか?もう遅いでしょうか?
アルツハイマー病は発症の20年以上前からアミロイドβが脳内に蓄積し始めると考えられており、予防は早く始めるほど効果的です。Lancet 2024でも「幼少期から中年期・高齢期」と一生を通じたアプローチが推奨されています。一方で、「もう遅い」ということはありません。高齢になってからでも、食事・運動・社会参加の改善は脳の健康維持に貢献します。国内の研究でも、60〜70代からの介入で認知機能が改善したという報告があります。「今日が一番若い日」——始めるのに遅すぎることはありません。
9. まとめ
📝 この記事のまとめ
- 2024年Lancetの最新報告で「認知症リスクの約45%はコントロール可能」と示された
- 食事パターンとして地中海食・MIND食・久山町研究の食習慣が参考になる
- 最も重要な食事のキーワードは「多様性」——特定の食品より食品の種類を増やすことが鍵
- DHA・EPA(青魚)は認知症リスク低下との関連が最も強い食品成分のひとつ
- 抗酸化物質(ベリー類・緑黄色野菜・緑茶)、ビタミンB群、ビタミンDも重要
- 高LDLコレステロール・高血圧・糖尿病の管理が食事面での認知症予防の土台
- 運動・睡眠・社会参加を組み合わせた多面的アプローチが最も効果的
- 何歳からでも遅くない——「今日が一番若い日」という意識で始めることが大切
認知症は「なってから治す」から「ならないために備える」時代になっています。今日の食事・運動・睡眠の小さな積み重ねが、20年後・30年後の脳の健康を守ることにつながっています。難しく考えず、まず1つだけ、できることから始めてみてください。
次回は栄養シリーズの続き、「#93 嚥下障害(摂食嚥下障害)とは?食事形態の工夫」を予定しています。
📚 シリーズ関連記事
📚 参考文献
- Livingston G, Huntley J, Liu KY, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission. Lancet. 2024;404(10452):572-628. doi: 10.1016/S0140-6736(24)01296-0
- スポーツ栄養Web(SNDJ)「食事と運動で脳の老化と認知機能低下をどこまで抑制できるか?ナラティブレビュー」https://sndj-web.jp/news/002352.php
- Barnes LL, et al. “Trial of the MIND Diet for Prevention of Cognitive Decline in Older Persons.” N Engl J Med. 2023;389(7):602-611. doi: 10.1056/NEJMoa2302368
- 日本神経学会・日本認知症学会ほか「認知症予防に関する民間サービスの開発・展開にあたっての提言」久山町研究の知見を含む(2022)https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/ninchisho_wg/pdf/2022_002_05_00.pdf
- 国立長寿医療研究センター「食事と認知機能(4)」NILS-LSAにおける食品摂取多様性と認知機能低下の関連 https://www.ncgg.go.jp/ri/advice/26.html
- 国立がん研究センター 多目的コホート研究「魚介類・n-3系多価不飽和脂肪酸摂取と軽度認知障害・認知症との関連」https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/8650.html
- 日本脂質栄養学会 オメガ委員会「認知症の発症予防・進行抑制に魚(DHA・EPA)食は有効か?」魚週2皿以上でAD発症リスク30%低下のメタアナリシス. https://jsln.umin.jp/committee/omega52.html
- Oki Y, et al. “Synergistic association of long-chain polyunsaturated fatty acids and cognitive training on cognitive function in older adults.” Alzheimers Dement. 2024; 20: 6972-6983. / 国立長寿医療研究センター 認知症予防推進センター 介入研究の報告.
- 国立長寿医療研究センター「日本人高齢者において脳体積の維持に多価不飽和脂肪酸(DHA・EPA・ARA)の摂取が関連することを初めて報告」https://www.ncgg.go.jp/ri/report/20220824.html
- 小原知之, 二宮利治「久山町研究」日本生物学的精神医学会誌 34巻1号, J-STAGE, 2023.
【免責事項】本記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、特定の疾患の診断・治療を目的とするものではありません。記事内の食品・サプリメント・生活習慣に関する情報は、個人の状態によって効果が異なり、すべての方に同様の効果が保証されるものではありません。認知機能の低下が気になる方、慢性疾患(高血圧・糖尿病・腎疾患など)をお持ちの方は、食事・運動・サプリメントの変更前に必ず主治医・管理栄養士にご相談ください。本記事の情報を実践される際は自己責任のもとご判断いただき、体調に異変を感じた場合は速やかに医療機関を受診してください。
あわせて読みたい





コメント