福祉用具のレンタルと購入の違いを徹底解説|杖・歩行器・車椅子の選び方

回復期リハビリの仕事

✍️ この記事を書いた人

とっち|理学療法士・回復期リハビリテーション病院勤務18年目
🏥 脳卒中認定理学療法士 / 3学会合同呼吸療法認定士
📝 学会発表・論文投稿経験あり
「リハビリと身体のケアラボ」運営(tocchi-fm-1111.com)

🏥 これ、意外とみんな知らないんですよね

たしか梅雨明けすぐの7月だったと思います。退院カンファレンスで「杖は病院のを使ってたんですが、退院後はどうしたらいいですか?」と家族から聞かれて、正直ちょっと焦りました。18年目になってもこういう質問って来るんですよ。

そのとき担当していた患者さんは70代の男性で、脳梗塞後の軽度片麻痺。歩行速度は0.6m/秒くらいで、多点杖でなんとか安定してきた段階でした。「これ、いくらかかりますか?」って聞いてくれたんですが、奥さんの表情がちょっと不安そうで。

で、レンタルと購入の話をしたら「え、借りられるんですか?」って2人同時に言ったんです。そこで気づいたんですよ、制度のことって退院前に伝えたつもりでも、全然届いてないことがある、って。

それから退院前に必ず「用具の話」を早めにする、というのを自分のルールにしました。知識を持ってから選ぶのと、知らないまま選ぶのでは、スタートラインがまるで違うので。

「退院後に杖が必要になったけど、レンタルがいいの?買ったほうがいいの?」
「車椅子ってどこで借りればいいの?どの種類を選べばいいの?」

家族やご本人が福祉用具を初めて使うとき、こんな疑問が浮かぶ方はとても多いです。私が勤務する回復期リハビリテーション病院でも、退院前の面談で「どこで借りればいいですか?」「購入とどっちが得ですか?」という質問をよく受けます。

この記事では、福祉用具のレンタルと購入の仕組みの違いから、杖・歩行器・車椅子それぞれの選び方まで、理学療法士の視点でわかりやすく解説します。2024年度の介護保険制度改定で変わった新しいルールも含め、最新情報をお届けします。

📋 目次

  1. 福祉用具とは?介護保険でどう使える?
  2. レンタルと購入の基本的な違い
  3. 【2024年改定】選択制になった4つの品目
  4. レンタルが向いているケース・購入が向いているケース
  5. 杖の種類と選び方
  6. 歩行器・歩行車の種類と選び方
  7. 車椅子の種類と選び方
  8. 福祉用具を利用するまでの流れ
  9. Q&A
  10. まとめ

1. 福祉用具とは?介護保険でどう使える?

福祉用具とは、心身の機能が低下した高齢者や障害のある方が、自立した日常生活を送るために使う道具・機器の総称です。杖や車椅子などの移動補助具から、介護ベッド、床ずれ防止マット、排泄補助用具まで幅広い品目があります。

介護保険では、要支援1〜2・要介護1〜5の認定を受けた方が居宅サービスの一つとして福祉用具を利用できます。自己負担は所得に応じて1〜3割です。

⚠️ 介護保険で利用できる福祉用具の大原則

  • 福祉用具は原則「レンタル(貸与)」が基本
  • 衛生的に再利用が難しいもの(腰掛便座・入浴用品など)は「特定福祉用具販売(購入)」が対象
  • 2024年4月から、一部の品目でレンタルか購入かを利用者が「選択」できるようになった

2. レンタルと購入の基本的な違い

まずレンタルと購入の違いを整理しましょう。

項目 🔄 レンタル(貸与) 🛒 購入(販売)
自己負担 月額レンタル料の1〜3割 購入費の1〜3割(上限額あり)
変更・返却 不要になれば返却できる 返却不可・自己所有
メンテナンス 業者が対応(修理・交換) 自己管理(費用は自己負担)
状態変化への対応 身体状況に合わせ変更しやすい 自分に合わせたカスタマイズが可能
モニタリング 専門相談員が半年に1回訪問確認 購入後のサポートは限定的
長期利用時のコスト 長期になるほど総額が上がる 長期使用なら結果的に安くなる場合も

💡 PTからのひとこと:身体の回復途中(リハビリ中・退院直後など)はレンタルがベスト。回復が進むと必要な用具が変わる可能性が高いためです。逆に長期的に安定した状態で同じ用具を使い続けるなら、購入のほうが経済的になるケースがあります。

3. 【2024年改定】選択制になった4つの品目

2024年4月の介護保険制度改定で、比較的低価格で購入後のメンテナンスが少ない4品目について、レンタルと購入のどちらかを利用者が選べるようになりました。

🦯

単点杖

(T字杖・多点杖・ロフストランドクラッチ等)
※松葉杖は除く

🚶

歩行器(固定式・交互式)

車輪・キャスター付きの歩行車は除く

📐

固定用スロープ

可搬型スロープは除く

🦾

多点杖

3点・4点杖など脚が複数に分かれた杖

※ 選択制の対象外(変わらずレンタルのみ):車椅子、介護ベッド、手すり(工事なし)、スロープ(可搬型)など多くの品目はこれまでどおりレンタルが原則です。

4. レンタルが向いているケース・購入が向いているケース

🔄 レンタルが向いているケース

  • 退院直後・リハビリ中で身体状態が変化しやすい
  • 状態が改善し用具が不要になる可能性がある
  • 故障時の修理・交換を業者に任せたい
  • 定期的に専門家のモニタリングを受けたい
  • 試しに使って合うか確かめたい
  • 利用期間が比較的短い(目安:1〜2年以内)

🛒 購入が向いているケース

  • 長期間(目安:2〜3年以上)同じ用具を使う見込みがある
  • 身体状態が安定していて変化が少ない
  • 自分専用に細かくカスタマイズしたい
  • 所有感・モチベーション維持につながる
  • レンタル累計額が購入額を超えそうな場合
  • T字杖など比較的安価で壊れにくい用具

5. 杖の種類と選び方

5-1. 杖の主な種類

🦯 T字杖(一本杖)

グリップがT字型の最もスタンダードな杖。軽量で持ち運びやすい。

✅ 向いている方:軽度のバランス不良、変形性膝関節症、腰痛など。歩行能力が比較的保たれている方。
❌ 注意点:支持面が狭いため重度のバランス障害には不向き。
📝 介護保険:T字杖は対象外(自費購入)。多点杖・ロフストランドクラッチは2024年からレンタル/購入選択可。

🔱 多点杖(3点・4点杖)

先端が3〜4本に分かれ接地面積が広い。T字杖よりも安定性が高い。

✅ 向いている方:脳卒中後の片麻痺、重度のバランス障害。立位訓練中の方にも。
❌ 注意点:重量がある・狭い場所では使いにくいことがある。
📝 介護保険:レンタル または 購入(選択可・2024年〜)

💪 ロフストランドクラッチ(肘支持型杖)

前腕を支えるカフがあり、上腕ごと体重を支える。腕全体で体重を分散できる。

✅ 向いている方:握力が低下している方、脊髄損傷・神経筋疾患の方など。
📝 介護保険:レンタル または 購入(選択可・2024年〜)

🏥 松葉杖

脇に挟んで使用。上半身の力で体重を全部支える。

✅ 向いている方:骨折・術後で一時的に足に体重をかけられない方。
❌ 注意点:握力・筋力が必要。高齢者には体力面でハードルが高いことも。
📝 介護保険:レンタルのみ(選択制の対象外)

5-2. 杖の長さの合わせ方

杖の長さは身体に合っていないと、腰痛・肩こりの原因になったり転倒リスクが上がったりします。一般的な目安は以下の通りです。

📏 杖の長さの目安

  • 方法①:まっすぐ立って、杖のグリップを握ったとき肘が30〜40度曲がる高さ
  • 方法②:身長 ÷ 2 + 3cm(おおよその目安)
  • 靴を履いた状態で合わせることが重要
  • 杖先ゴムが摩耗しているとスリップリスクが上がるため定期的に確認

6. 歩行器・歩行車の種類と選び方

6-1. 歩行器の主な種類

種類 特徴 向いている方 介護保険
固定式歩行器 4本足、持ち上げて前に進む。安定性◎ 足腰の筋力低下、バランス不良が中程度 レンタル/購入選択可(2024年〜)
交互式歩行器 左右交互に前に出せる。歩行動作に近い 片麻痺・軽度の筋力低下 レンタル/購入選択可(2024年〜)
歩行車(キャスター付き) 車輪付きで押しながら歩く。持ち上げ不要 手を持ち上げる力が弱い方、長距離移動 レンタルのみ(選択制の対象外)
シルバーカー 買い物カート型。座ることもできる 屋外の買い物・外出時の休憩用 介護保険外(自費購入)

⚠️ シルバーカーは介護保険対象外です。「押して歩く歩行補助」というイメージがありますが、転倒時に支えとして使うには安定性が低く、リハビリの専門家の立場では安易な選択に注意が必要です。歩行器との違いをケアマネや理学療法士に相談することをおすすめします。

7. 車椅子の種類と選び方

7-1. 車椅子の主な3タイプ

🏃 自走式(自走用標準形)

後輪が大きく(22〜24インチ)、後輪の外側にハンドリムが付いており、利用者自身が手で操作して動かせます。介助者が後ろから押すことも可能。

✅ 向いている方:上肢機能・認知機能が保たれており、自分で操作できる方。脳卒中後の軽〜中等度障害、下肢骨折後など。

❌ デメリット:小回りがきかない。重量がある。

👐 介助式(介助用)

後輪が小さく(6〜16インチ)コンパクト。ハンドリムがなく、介助者が後ろから押して移動します。折りたたみやすく、車のトランクにも積みやすい。

✅ 向いている方:自分で操作できない方、外出時に介助者が常についている方。重度の麻痺・認知症など。

❌ デメリット:介助者がいないと動けない。段差に弱い面がある。

⚡ 電動車椅子

電動モーターで動く車椅子。ジョイスティック(操作レバー)や顎で操作するものなど様々なタイプがある。介護保険のレンタル対象(原則:要介護2以上)。

✅ 向いている方:自走は難しいが操作能力がある方。脊髄損傷・進行性神経疾患など。広い屋外・施設内の移動に適する。

❌ デメリット:重量がある(30kg前後が多い)。充電が必要。操作訓練が必要。

7-2. 車椅子の選び方チェックポイント

✅ 車椅子を選ぶときに確認すること

  • 🏠 使用場所:屋内中心か屋外中心か。段差や坂の有無。
  • 🙋 自走できるか:本人の上肢機能・認知機能の程度。
  • 👨‍👩‍👧 介助者の有無・体力:毎回誰かが押すのか、1人で乗降するのか。
  • 📐 座幅・座面高:体格に合った寸法を選ぶ(合わないと褥瘡リスク)。
  • 🚗 移動手段:車での外出が多い場合はコンパクト・軽量タイプを。
  • 💰 長期利用の見通し:リハビリ中は変更の可能性があるためレンタル推奨。

7-3. 要介護度と車椅子の関係

介護保険で車椅子をレンタルする場合、原則として要介護2以上が給付対象です。要支援1・2や要介護1の方は原則対象外ですが、疾病や状態によって市区町村が例外給付を認めるケースもあります。まずはケアマネージャーに相談しましょう。

8. 福祉用具を利用するまでの流れ

STEP 1
要介護(要支援)認定を受ける
市区町村の窓口に申請→訪問調査→一次・二次判定
STEP 2
ケアマネージャーと相談
必要な福祉用具の種類・目的をケアプランに盛り込む
STEP 3
福祉用具専門相談員に相談・選定
レンタル事業者が自宅を訪問し、身体状況・住環境に合った用具を提案
STEP 4
レンタル/購入の選択・契約
選択制対象品目はどちらかを選択。専門相談員から十分な説明を受けた上で決定
STEP 5
利用開始・定期モニタリング
レンタルの場合、専門相談員が半年に1回以上訪問しサイズや状態を確認

🏥 現場からのエピソード

半年ぶりにお会いしたとき、患者さんはT字杖一本で玄関まで迎えに来てくださいました。

「先生、この杖だけで散歩できるようになりました。」

その姿を見て、退院当初のことを思い出しました。

担当していたのは、脳卒中後に左片麻痺が残った70代の男性です。退院時は多点杖で歩くことはできましたが、ふらつきが目立ち、転倒の危険も少なくありませんでした。

ご本人は「杖だけで頑張りたい」と希望されていましたが、私は安全を優先し、まずは交互式歩行器をレンタルすることを提案しました。

「歩行器に戻るのは悔しいな。」

そう話されていましたが、「これはゴールではなく、次のステップへ進むための道具です」とお伝えすると、納得して使い始めてくださいました。

退院後も訪問リハビリを続けながら歩行能力は少しずつ改善し、約3か月後には多点杖へ変更。さらに半年後にはT字杖だけで安定して歩けるようになりました。

レンタルだったからこそ、その時々の身体機能に合わせて福祉用具を柔軟に変更できたのです。

一方で、別の患者さんでは事情が異なりました。

慢性期で身体機能が安定しており、多点杖を長期間使用することが見込まれたため、ご家族と一緒にレンタルと購入、それぞれの費用や今後の見通しを比較しました。その結果、「長く使うなら購入した方が安心ですね」と判断され、

9. よくある質問(Q&A)

❓ Q. 要介護認定を受けていなくても福祉用具を使えますか?

A. 介護保険のレンタル・購入補助は、要支援1以上の認定が必要です。認定を受けていない場合でも、自費での購入・レンタルは可能です。また、40歳以上で特定疾病(脳卒中後遺症・関節リウマチなど16疾病)がある場合は要介護認定の申請ができます。まずはお住まいの地域包括支援センターに相談してみてください。

❓ Q. 杖は福祉用具の「購入」でも介護保険が使えますか?

A. 2024年4月以降、多点杖・ロフストランドクラッチなどは介護保険を使って購入(1〜3割負担)できるようになりました。ただし、最も一般的なT字杖は介護保険の対象外で、全額自費購入となります。T字杖は比較的安価なので、自費購入でも経済的負担は少ない品目です。

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10. まとめ

✅ この記事のポイント

  • 介護保険の福祉用具は原則レンタル(貸与)が基本
  • 2024年4月から、固定式歩行器・単点杖・多点杖・固定用スロープでレンタルか購入かを選べる制度が始まった
  • 身体状況が変化しやすいリハビリ中・退院直後はレンタル推奨。状態が安定し長期使用が確定したら購入の検討も
  • 杖はT字杖(介護保険外)・多点杖・ロフストランドクラッチ(選択可)・松葉杖(レンタルのみ)で用途が異なる
  • 車椅子は自走式・介助式・電動の3タイプ。本人の能力・使用場所・介助者の有無で選ぶ
  • 用具の選定はケアマネージャー・福祉用具専門相談員・理学療法士と相談しながら行うことが重要

福祉用具は「とりあえず安いもの」「とりあえず似たもの」ではなく、その方の身体状況・生活環境・将来の変化の見通しをきちんと踏まえて選ぶことが大切です。

迷ったときは一人で抱え込まず、ケアマネージャーや福祉用具専門相談員、また通院中の医療機関の理学療法士・作業療法士にどんどん相談してください。私たち専門家は、そのためにいます。

📚 参考文献・参考資料

  1. 厚生労働省「令和6年度介護保険制度改定における福祉用具貸与・販売種目の選択制導入について」(2024年)
  2. 厚生労働省「福祉用具貸与・販売種目のあり方検討会(第8回)資料」(2023年)
  3. ダスキンヘルスレント「介護用車椅子の種類とは?選び方や利用にあたってのポイントを紹介」(2026年1月更新)
  4. ヤマシタ「2024年度介護保険制度改定|福祉用具(介護用品)4種目がレンタルか購入か選べるように変更」(2026年3月)
  5. LIFULL介護 tayorini「福祉用具はレンタルすべき?購入すべき?多点杖など一部で選択可能に」(2024年4月更新)
  6. アロン化成「”福祉用具”の選択制導入〜2024年度介護保険制度改定を解説〜」(2024年)
  7. ダスキンヘルスレント「介護保険で購入できる福祉用具とは?選択制を含む対象品目や申請手順について」(2024年10月)
  8. 介護のハタラクナカマ「車椅子の種類|自走式・介助式・電動・リクライニング・モジュラーの違いと選び方」(2026年5月)

⚠️ 免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的として作成されており、医療・介護上の診断・アドバイスを行うものではありません。福祉用具の選定・介護保険の利用に関しては、主治医・担当ケアマネージャー・福祉用具専門相談員・理学療法士等の専門家にご相談ください。制度の内容は改定により変更されることがあります。最新情報は各市区町村の担当窓口にご確認ください。

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理学療法士 18年目
とっち

回復期リハビリテーション病院勤務18年目の理学療法士。
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