✍️ この記事を書いた人
とっち|理学療法士
回復期リハビリテーション病院 勤務18年目 / 🧠 脳卒中認定理学療法士 / 🫁 3学会合同呼吸療法認定士
学会発表5回・論文投稿2回の経験を持つ。病棟での睡眠指導・生活リズム改善支援にも長年携わる。
ブログ:リハビリと身体のケアラボ(tocchi-fm-1111.com)
リハビリを頑張っているのに、なかなか回復が進まない——そういう患者さんに関わるたびに、真っ先に確認するようにしていることがあります。食事と、睡眠です。
ちょっと驚く数字があって、一晩まともに眠れなかっただけで筋肉の合成スピードが約18%落ちるという研究データがあるんですよね。18%って、感覚的にはたいした数字じゃないように聞こえるかもしれないんですけど、毎日のリハビリ効果が2割近く無駄になる可能性があるってことで。これ、論文で初めて見たとき「そんなに変わるのか」と正直けっこう衝撃でした。
18年間、回復期病棟で働いてきて思うのは、リハビリと睡眠はセットで考えないと片手落ちになるということ。「昼間に頑張る」だけじゃなくて、「夜にちゃんと回収できているか」がすごく大事なんです。
この記事では、そのあたりを現場目線でできるだけわかりやすく解説しています。
「リハビリを頑張っているのに、疲れがなかなか抜けない」「毎日運動しているのに筋力がなかなかつかない」——そう感じたことはありませんか?
もしかすると、その原因は睡眠の質・量の不足かもしれません。筋肉は運動中に作られるのではなく、睡眠中に修復・合成されることをご存じでしょうか。どれだけ一生懸命リハビリをしても、夜の睡眠が不十分なら、筋肉の材料は揃っているのに「工場が動いていない」状態と同じです。
この記事では、回復期リハ病院で18年間、多くの患者さんの回復を支えてきた理学療法士の視点から、睡眠とリハビリ回復の深い関係を科学的なエビデンスをもとにわかりやすく解説します。睡眠の質を高めることが、リハビリ効果の最大化につながります。
📋 この記事の目次
- 筋肉はいつ作られるのか?——睡眠と筋合成の基本メカニズム
- 睡眠不足が筋肉・リハビリ回復に与える具体的なダメージ
- 高齢者・回復期患者が陥りやすい「睡眠の落とし穴」
- 現場エピソード——睡眠が変わったら歩行が変わった患者さん
- 厚労省「睡眠ガイド2023」から学ぶ推奨睡眠の考え方
- リハビリ回復を高める「睡眠の質改善」7つの実践法
- 睡眠とリハビリを両立させる栄養戦略
- よくある質問(Q&A)
- まとめ
1. 筋肉はいつ作られるのか?——睡眠と筋合成の基本メカニズム

リハビリで筋肉に負荷をかけると、筋繊維に微細な損傷(マイクロダメージ)が生じます。この損傷が修復・再建される過程で筋肉は太く・強くなります(筋肥大)。そして、その修復のほとんどが行われるのが睡眠中です。
🔬 睡眠中に起こる筋肉修復のプロセス
- 成長ホルモン(GH)の大量分泌:入眠後の最初の深いノンレム睡眠(徐波睡眠)で最も多く分泌。筋タンパク質の合成を直接促進し、細胞修復を加速する
- テストステロンの維持:睡眠中に分泌が保たれ、筋肉の発達・維持を支える。睡眠が6時間未満になると15〜20%低下するという報告がある
- コルチゾール(ストレスホルモン)の抑制:十分な睡眠で過剰分泌を防ぎ、筋肉の過剰な分解(カタボリズム)を抑える
- サテライト細胞の活性化:筋肉の幹細胞が損傷部位に集まり、新しい筋繊維を形成する
成長ホルモンは「入眠後3時間の深い睡眠(ノンレム睡眠第3相)」に特に多く分泌されます[1]。かつて「夜22時〜2時がゴールデンタイム」と言われていましたが、現在の研究では就寝時刻よりも「入眠後の深い眠りが確保されているかどうか」が重要とされています。夜勤など生活リズムが異なる方でも、深い睡眠が確保できれば成長ホルモンは分泌されます。
2. 睡眠不足が筋肉・リハビリ回復に与える具体的なダメージ
睡眠不足がリハビリに与える悪影響は、近年の研究で数値として明らかになっています。
📊 注目の研究データ(Lamon et al., 2021 / Physiological Reports)
オーストラリア・ディーキン大学らによるランダム化クロスオーバー試験では、健康な若年成人13名が1晩の完全睡眠剥奪を経験すると、筋タンパク質合成速度が通常睡眠と比較して約18%低下したことが示されました(CON: 0.072%/h → DEP: 0.059%/h, p=0.040)。同時に、テストステロンの低下(-24%)とコルチゾールの上昇(+21%)が観察され、ホルモン環境が「分解優位」に傾くことも確認されています[2]。
この「筋合成18%低下」という数値は決して小さくありません。毎日のリハビリ効果が2割近く無駄になる可能性を示しています。さらに、複数日の睡眠不足(例:5時間睡眠を数日継続)では、筋タンパク質合成の低下がさらに進行し、高強度の運動を加えても完全には回復しなかったという報告もあります[3]。
| 睡眠不足が引き起こす問題 | リハビリへの影響 |
|---|---|
| 筋タンパク質合成の低下(約18%) | 筋力・筋量の増加が鈍化する |
| 成長ホルモン・テストステロンの低下 | 筋肉の修復・合成が進まない |
| コルチゾール(ストレスホルモン)の上昇 | 筋肉の分解(カタボリズム)が促進される |
| 炎症性サイトカインの増加 | 組織修復が遅れ、痛みが増強しやすくなる |
| 集中力・反応速度の低下 | リハビリの質(運動学習効果)が低下する |
| 骨密度の低下(5時間以下継続時) | 骨折リスクが上昇し転倒予防効果が減弱する |
※1日平均睡眠時間が7時間の人と比較して5時間以下では、股関節・大腿骨・脊椎の骨密度が低くなるという研究もある
🏥 18年目だから気づいた話——「よく眠れてます」の落とし穴
たしか3〜4年前の冬の話です。年末が近づいたころ、60代後半の脳梗塞後の男性患者さんを担当していました。回復は順調で、担当しはじめて3週間ほどで「先生、最近は調子がいいですよ。夜もよく眠れてますし」とにこやかにおっしゃっていました。
でも、歩行のふらつきが一向に改善しない。バランス訓練の結果も伸び悩む。おかしいな、と思いながらカルテを見直すと、その方の夜間の記録に「頻回覚醒あり、23時・1時・3時・5時に離床確認」と書かれていました。4回も起きている。なのにご本人は「よく眠れている」とおっしゃっていた。
聞いてみると「夜中に目が覚めても、またすぐ寝られるから大丈夫だと思っていた」とのこと。それまでも夜中に何度か起きることが普通になっていたため、それが「普通の睡眠」だと思い込んでいたようです。正直、私も最初の面談で「眠れてますか?」と聞いてOKをもらった段階で安心してしまっていて、そこから深く掘り下げていなかった。これは完全に私の確認不足でした。
その後、泌尿器科の先生に夜間頻尿の相談をつなぎ、日中の活動量を意識的に増やす取り組みを始めました。2週間ほどで夜中に起きる回数が1〜2回に減り、翌朝の覚醒時のふらつきが目に見えて改善し始めたんです。リハビリの内容は変えていないのに、です。
「眠れていますか?」という問いへの「はい」は、意外と当てにならない——それを痛感した経験です。睡眠の質は、自分では意外と気づきにくいものなのだと思います。
3. 高齢者・回復期患者が陥りやすい「睡眠の落とし穴」
リハビリを受けている高齢者は特に、睡眠に関する問題を複数抱えやすい状況にあります。「ちゃんと寝ている」と思っていても、質・量ともに不十分なケースが多いのが現実です。
⚠️ 落とし穴①「早寝早起きで十分寝ている」と思いやすい
高齢になると睡眠リズムが前進(早い時間帯にシフト)します。加齢に伴い深い睡眠(徐波睡眠)が減少し、浅い睡眠・中途覚醒が増えます。総睡眠時間は確保できていても、成長ホルモン分泌に重要な「深い睡眠」の割合が減っているケースが多いです。
⚠️ 落とし穴②「ベッドにいる時間=睡眠時間」ではない
回復期病棟では、安静・疼痛・夜間のケアなどでベッドにいる時間が長くなりがちですが、実際に眠れている時間は少ないことがあります。また、日中の臥床時間が長いほど夜間の睡眠の質が下がる(昼夜逆転・生活リズムの乱れ)悪循環に陥りやすくなります。
⚠️ 落とし穴③ 疼痛・頻尿・薬の影響で眠れない
疾患・術後の痛み、頻尿(夜間排尿)、一部の降圧薬・利尿薬・ステロイドなどが睡眠の質を低下させます。これらは自己努力だけでは改善しにくいため、医師・薬剤師への相談が重要です。
⚠️ 落とし穴④ 「眠れない=寝なくていい」ではない
不眠を「年齢のせい」と諦め、夜中にスマートフォンを長時間使うケースがあります。スマートフォン・テレビのブルーライトは体内時計を狂わせ、さらに睡眠の質を悪化させます。入院中の方では、スタッフに相談して睡眠環境を整えてもらうことも重要です。
4. 現場エピソード——睡眠が変わったら歩行が変わった患者さん
🏥 現場エピソード(とっちの実体験)
「リハビリは頑張っているのに、どうして良くならないんだろう。」
回復期病棟で担当した70代女性の患者さんを前に、私が感じていた率直な疑問です。
大腿骨骨折の手術後、リハビリには毎日とても前向きに取り組まれていました。歩行練習も筋力トレーニングも順調で、「この調子ならもっと良くなる」と思っていました。
ところが、ある時期から筋力の改善が止まり、ご本人も「疲れが全然取れないんです」と話されるようになりました。
最初は運動量が足りないのか、それとも年齢の影響なのかと考えました。
しかし、何か違和感がありました。
生活の様子を改めて確認すると、夜間は股関節の痛みで何度も目が覚め、そのたびにスマートフォンを見ながら眠れなくなっていることが分かりました。
そこで看護師・薬剤師と相談し、就寝前に痛み止めが効くよう内服時間を調整しました。さらに夜間のスマートフォン使用を控え、昼間はできるだけ起きて過ごすよう生活リズムも一緒に見直しました。
リハビリの内容は、ほとんど変えていません。
変えたのは、「夜の過ごし方」だけでした。
約2週間後、ご本人が笑顔で
「最近はぐっすり眠れるようになりました。」
と話してくださいました。
その頃から、止まっていた筋力や歩行速度も少しずつ改善し始めました。
もちろん、回復にはリハビリや時間の経過など、さまざまな要因が影響しています。それでも、この症例を通して私は「運動を頑張ること」と同じくらい、「しっかり眠れること」が回復には欠かせないと改めて感じました。
以前の私は、リハビリの時間だけを見ていたかもしれません。
しかし今は、「夜は眠れていますか?」という一言も、リハビリ評価の大切な項目になっています。
患者さんの回復は、リハビリ室だけで起こるものではありません。
夜の睡眠もまた、身体を回復させる大切なリハビリの時間なのだと、この患者さんから教えていただきました。
5. 厚労省「睡眠ガイド2023」から学ぶ推奨睡眠の考え方

2024年2月、厚生労働省は「健康づくりのための睡眠ガイド2023」を約10年ぶりに改訂・公表しました[4]。同ガイドでは対象者別(成人・高齢者・こども)の推奨事項が示されており、リハビリを受ける方にも大変参考になります。
| 対象 | 睡眠時間の目安 | 主な推奨事項 |
|---|---|---|
| 成人(18〜64歳) | 6時間以上を目安に | 睡眠不足を感じた場合は短時間昼寝(15〜20分)も有効。就寝・起床時刻を規則正しく保つ |
| 高齢者(65歳以上) | 床上時間8時間以上は避ける | 過度な床上安静は逆効果。日中の活動を維持し夜間の睡眠の質を確保することを優先する |
💡 ポイント:「高齢者は長く寝ればいい」は誤解です。ガイドでは高齢者の「床上時間が長すぎること」が問題として指摘されています。長時間ベッドで過ごすことは、むしろ夜間の睡眠の質を低下させ、サルコペニア(筋肉量の低下)を促進するリスクがあります。
6. リハビリ回復を高める「睡眠の質改善」7つの実践法
現場での指導経験と最新エビデンスをもとに、リハビリと睡眠を両立させるための実践的な方法をまとめます。
✅ 実践1|毎日同じ時刻に起きる
睡眠の質改善で最も効果的なのは「起床時刻を毎日一定にすること」です(就寝時刻よりも優先)。体内時計(サーカディアンリズム)が整うと、自然と眠気が適切な時間帯に来るようになります。まず「毎朝7時に起きる」など、起床時刻を固定することから始めましょう。
✅ 実践2|起床後に朝日を浴びる
朝日を浴びることで体内時計がリセットされます。また、メラトニン(睡眠を促すホルモン)は朝の光を浴びてから約15〜16時間後に分泌されます。起床後30分以内に窓際や屋外で2,500〜10,000ルクス程度の光を2〜5分浴びるだけで効果があります。入院中の方はカーテンを開けるだけでも差があります。
✅ 実践3|昼寝は「15〜20分・14時前まで」に限る
短い昼寝は疲労回復と認知機能の向上に有効ですが、30分以上の昼寝や夕方の昼寝は夜間の睡眠の質を大幅に低下させます。高齢者では特にこの「長すぎる昼寝」が昼夜逆転の原因になりやすく、現場でも繰り返し指導しています。アラームをかけて15〜20分に留めましょう。
✅ 実践4|就寝1〜2時間前に軽い運動・入浴
深部体温(体の内部の温度)は睡眠前に下がることで眠気が促されます。就寝1〜2時間前の38〜40℃の入浴(15〜20分)は、入浴後に体温が下がるタイミングと就寝タイミングが合い、入眠を助けます。リハビリでの軽い運動も同様に有効ですが、激しい運動は交感神経を刺激するため就寝直前は避けましょう。
✅ 実践5|就寝1時間前はスマホ・テレビをオフに
スマートフォン・タブレット・テレビのブルーライトは、メラトニンの分泌を抑制し眠気を遅らせます。また、SNSや動画のコンテンツ自体が脳を覚醒させます。就寝1時間前からはスクリーンをオフにし、読書・音楽・軽いストレッチなどリラックスできる活動に切り替えましょう。
✅ 実践6|寝室環境を整える(温度・光・音)
厚労省「睡眠ガイド2023」でも睡眠環境として「光・温度・音」の3要素が重要とされています[4]。理想の寝室環境の目安は、室温16〜26℃(夏は26℃前後・冬は16〜19℃)、湿度50〜60%、光は暗め(就寝中は3ルクス以下が理想)、音は静かなもの(40dB以下)です。特に高齢者は室温管理が重要で、暑すぎると中途覚醒が増えます。
✅ 実践7|カフェイン・アルコールの取り方を見直す
カフェイン(コーヒー・緑茶・エナジードリンクなど)の覚醒効果は摂取後5〜7時間持続します。就寝6時間前以降のカフェイン摂取は睡眠の質を低下させるという研究があります(夕食後のコーヒーは特に注意)。アルコールは一時的に眠気を誘いますが、就寝後の深い睡眠を妨げ、中途覚醒・早朝覚醒を増やします。「眠れないからお酒を飲む」は逆効果です。
7. 睡眠とリハビリを両立させる栄養戦略
前回の記事(#86 リハビリ効果を高める食事)でも触れたように、栄養と回復は不可分です。睡眠の質を高める観点からも、食事の内容・タイミングが重要です。
就寝前のタンパク質摂取——夜間の筋分解を防ぐ
就寝前にカゼインタンパク質(牛乳・ヨーグルト・カッテージチーズなど)を摂取すると、消化が緩やかなため夜間を通じてアミノ酸が筋肉へ供給され、睡眠中の筋分解を抑制できる可能性が研究で示されています[5]。目安は就寝30〜60分前に20〜40gのタンパク質。例:牛乳コップ1杯(約7g)+ヨーグルト100g(約4g)など。
睡眠の質を高める栄養素
🍫 トリプトファン——メラトニンの原料
必須アミノ酸のトリプトファンは、脳内でセロトニン(幸福ホルモン)を経てメラトニン(睡眠ホルモン)に変換されます。鶏肉・豆腐・バナナ・牛乳・チーズ・くるみに豊富。夕食に意識的に取り入れましょう。
🥜 マグネシウム——神経の興奮を鎮める
マグネシウムはGABA受容体に作用して神経の興奮を抑え、自然な眠気を促す働きがあります。現代の食生活で不足しがちなミネラルで、睡眠の質との関連が研究されています。アーモンド・ほうれん草・そば・ひじき・豆腐に多く含まれます。
☀️ ビタミンD——睡眠の質改善との関連
前回記事(#86)でも取り上げたビタミンDは、メラトニン産生に関わり、睡眠の質改善との関連が指摘されています。骨・筋肉・睡眠の3つをまとめてケアできる重要な栄養素です。鮭・サンマ・きのこ類に豊富。日光浴(15〜30分/日)でも合成できます。
⚠️ 注意:就寝直前の大量の食事・カフェイン・アルコールは睡眠の質を低下させます。夕食は就寝2〜3時間前までに済ませ、就寝前の補食(タンパク質)は少量に留めましょう。
8. よくある質問(Q&A)
Q1. 「8時間寝るのがいい」と聞きますが、本当ですか?
睡眠の必要量は個人差があり、「8時間が絶対に必要」とは言えません。厚労省「睡眠ガイド2023」では成人に対して「6時間以上を目安に」とされていますが、7〜9時間が推奨されている国際的なガイドラインもあります。重要なのは時間よりも「翌日に眠気や疲れが残らないか」という睡眠休養感(寝た後の質的な満足感)です。高齢者では加齢により必要睡眠時間が若干減少することがありますが、睡眠不足と混同しないことが重要です。
Q2. 睡眠サプリ(GABA・グリシン・テアニンなど)は使っていいですか?
GABA・グリシン・L-テアニンなどの機能性表示食品は、一定の臨床試験で「睡眠の質向上」「寝つきの改善」などの機能が確認されています。有効量の目安はGABA 100mg以上、テアニン 200mg以上、グリシン 3,000mg以上とされています[6]。後述するナイトプラスやDr.ネムのような市販の機能性表示食品も、こうした有効量を参考に商品設計されています。ただし、これらはあくまで補助的な手段であり、生活習慣(光・温度・起床時刻など)の改善が基本です。また、重篤な不眠症や薬を服用中の方は医師への相談を優先してください。睡眠薬と異なり依存性はほとんどありませんが、効果には個人差があります。
9. まとめ
📝 この記事のまとめ
- 筋肉はリハビリ中ではなく、睡眠中の成長ホルモン分泌によって修復・合成される
- 1晩の睡眠剥奪で筋タンパク質合成が約18%低下するというエビデンスがある(Lamon et al., 2021)
- 睡眠不足はテストステロン低下・コルチゾール上昇により「筋分解優位」の状態を招く
- 高齢者・回復期患者は「長すぎる昼寝」「ベッド上での過ごしすぎ」「夜間のスマホ使用」で睡眠の質が低下しやすい
- 厚労省「睡眠ガイド2023」は成人に6時間以上、高齢者に床上時間8時間以上は避けることを推奨
- 起床時刻の固定・朝日を浴びる・昼寝は15〜20分まで・入浴のタイミング・ブルーライト回避が効果的
- トリプトファン・マグネシウム・ビタミンD・就寝前のカゼインタンパクが睡眠の質とリハビリ回復を支える
- 「動く(リハビリ)→食べる(栄養)→眠る(回復)」の3サイクルを意識することが回復の加速につながる
リハビリを頑張ることも大切ですが、「夜、しっかり眠ること」もリハビリと同じくらい重要なトレーニングです。運動・栄養・睡眠の3つが揃って初めて、身体の回復力は最大限に発揮されます。
次回は栄養・生活習慣シリーズの続き、「#92 認知症予防に効果的な食事と生活習慣」を予定しています。睡眠が認知症予防にも深く関わることも取り上げますので、ぜひご覧ください!
📚 参考文献
- Born J, Muth S, Fehm HL. “The significance of sleep onset and slow wave sleep for nocturnal release of growth hormone (GH) and cortisol.” Psychoneuroendocrinology. 1988;13(3):233-243. doi: 10.1016/0306-4530(88)90021-2
- Lamon S, Morabito A, Arentson-Lantz E, et al. “The effect of acute sleep deprivation on skeletal muscle protein synthesis and the hormonal environment.” Physiol Rep. 2021;9(1):e14660. doi: 10.14814/phy2.14660. PMID: 33400856
- Erlacher D, Vorster A. “Sleep and muscle recovery – Current concepts and empirical evidence.” Current Issues in Sport Science (CISS). 2023;8(2):058. doi: 10.36950/2023.2ciss058
- 厚生労働省 健康づくりのための睡眠指針の改訂に関する検討会「健康づくりのための睡眠ガイド2023」令和6年(2024年)2月(令和6年9月18日一部修正). https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/suimin/index.html
- Snijders T, Trommelen J, Kouw IWK, Holwerda AM, Verdijk LB, van Loon LJC. “The Impact of Pre-sleep Protein Ingestion on the Skeletal Muscle Adaptive Response to Exercise in Humans: An Update.” Front Nutr. 2019;6:17. doi: 10.3389/fnut.2019.00017. PMID: 30895177
- Yamadera W, Inagawa K, Chiba S, Bannai M, Takahashi M, Nakayama K. “Glycine ingestion improves subjective sleep quality in human volunteers, correlating with polysomnographic changes.” Sleep and Biological Rhythms. 2007;5(2):126-131. doi: 10.1111/j.1479-8425.2007.00262.x
- Dattilo M, Antunes HK, Medeiros A, et al. “Sleep and muscle recovery: endocrinological and molecular basis for a new and promising hypothesis.” Med Hypotheses. 2011;77(2):220-222. doi: 10.1016/j.mehy.2011.04.017
- Shapiro CM, Bortz R, Mitchell D, Bartel P, Jooste P. “Slow-wave sleep: A recovery period after exercise.” Science. 1981;214(4526):1253-1254. doi: 10.1126/science.7302594
【免責事項】本記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、特定の疾患の診断・治療を目的とするものではありません。睡眠障害・不眠症・精神疾患の診断や治療については、必ず医師・医療専門職にご相談ください。睡眠薬等の薬物療法を行っている方は、本記事のサプリメント情報等を参考にされる前に必ず担当医にご確認ください。本記事の情報を実践される際は自己責任のもとご判断いただき、体調に異変を感じた場合は速やかに医療機関を受診してください。
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